10年間・1%の住宅ローン減税が終わりそう。「即入居可」なら、まだ間に合うか?
政府は2022年度税制改正で、「住宅ローン減税」の税率を見直す方向を打ち出している。現在、1年間の減税額が「ローン残高の1%まで」となっているのを、0.7%程度まで下げる見通し。合わせて、期間を現在の10年間から延長することも検討されている。
それについては、すでに「住宅ローン減税見直しで、期待が高まる「期間の延長」。16年が理想といえる理由」という記事でお伝えしたとおりだ。
税制改正大綱で住宅ローン減税の税率を下げることが決まれば、現在の「10年間にわたり、1%まで」が適用されるのは、今年末、12月31日まで、となる。
と、ここで問題になるのは、「12月31日までにどうすれば10年間・1%の対象になるのか」ということ。つまり、12月31日までに契約すればよいのか、それとも入居が条件になるのか、ということである。
新築マンションや建売住宅を購入する場合、「12月31日までに売買契約を結べばよい」と考えられがち。しかし、それは誤りで、正しくは「12月31日までに入居する」が条件になる。
12月に住宅購入の契約書に判を押しても、建物に引っ越しできるのが年明け以降になれば「10年間・1%」の住宅ローン減税は受けることができない。まもなく決まる新しい税率と期間が適用されてしまうのだ。
契約日を基準にするのは、特例だった
「契約日」ではなく、「入居日」を基準とするのは、30年以上続く住宅ローン控除の基本原則というべきもの。ところが、近年「期限までに契約すれば、入居が先になってもいいですよ」という特例が出た。
特例が出たのは、消費税の影響だ。
住宅のように金額が大きな買い物は、消費税の税率が上がったときの影響が大きい。消費税が2%上がれば、2000万円の建物で40万円の負担増。3000万円ならば60万円負担が増える。
そこで、消費税が上がるときは、そのたびに駆け込み需要が生じた。消費税が上がる日までに入居(建物引き渡し)が可能になる物件を買おうという動きが出たわけだ。
これは、結果的に突貫工事を増やし、手抜きが出るのではないのか、という不安を生じさせた。
そこで、消費税に関しては、入居日ではなく、契約日の税率を適用する方法が生まれた。
この考え方は、消費税率が上がったことによる住宅ローン減税の特別枠にも適用された。
消費税が8%から10%に引き上げられた2019年から2021年11月30日の契約分まで、住宅ローン減税は10年から13年に延長され、延長された3年分で消費税が上がった分を還付する方策がとられたのである。
消費税に絡んだ住宅ローン減税は、特別に「入居日」ではなく、「契約日」を基準にしたわけだ。
その結果、今年は期限を「入居日」とするケースと「契約日」にするケースが混在するややこしい年になった。
つまり、11月30日までに契約すれば、入居が来年以降になっても「1%・10年間に3年がプラスされた住宅ローン減税」の対象。しかし、12月1日以降は、12月31日までに入居しなければ、「1%・10年間の住宅ローン減税」は受けられないわけだ。
「ちょっと、何言っているんだか分からない」と言われそうだ。
簡単に言うと、11月30日までに契約を結ばず、これから家を買おうとする人や建設する人などが「10年間・1%の住宅ローン減税を受けたい」と思ったら、今月31日までに入居しなければならない、ということである。
今から、マイホーム購入に動いても……
2021年12月時点の住宅ローン減税は、「ローン残高の1%までで、毎年40万円まで。最長10年」。マンションや建売住宅を購入する場合、今からその適用を受けることは現実的に可能なのだろうか。
すでに建物ができあがっているマンション、建売住宅には「即入居可」と明示されているものがある。すぐに引っ越して生活を始められますよ、という意味だ。
それなら12月末までの入居も可能で、「10年間・1%」の住宅ローン減税を受けることもできそう、と思えてしまう。
ところが、実際はそうもいかないのだ。
スーパーマーケットで食料品を買う場合、お金を渡せば、すぐに品物が手に入る。しかし、住宅の場合、登記を行ってはじめて自分の家になり、その手続きに時間がかかる。家を渡す前に最終整備をする時間、それをチェックする時間も必要になるし、住宅ローンを契約するのにも時間がかかる。
たとえ代金をすべて現金で渡しても、「はい、どうぞ」と家の鍵が渡されるわけではないのだ。
結論から申し上げると、「即入居可」と書かれていても、実際に入居するまでには相応の時間がかかる。
「最短で、1ヶ月程度」
これが、新築住宅を買って、最も早く入居できるまでの目安だ。それでも、通常、新築住宅は契約から入居まで1年以上かかるのが普通なので、だいぶ早い。だから、「即入居可」と表示しているわけだ。
通常より早いのだが、1ヶ月はかかる。
となると、今日12月6日から家探しをしたのでは、現実的に12月末までの入居はむずかしい。つまり、「10年間・1%」の住宅ローン減税はもう利用できない、というのが結論だ。
かくなる上は、まもなく決まる税制改正大綱で、住宅ローン減税の減税額は少なくなっても、期間が大きく延長されることを期待したい。
毎年最大40万円が28万円に下がったとしても、期間が15年になれば総額で420万円になる。現状の「40万円を10年間で、最大400万円」より、20万円多くなる。
総額での減額はない、としても、「乗り遅れた」という悔しさは残りそうだ。
この悔しさを少しでも減らす税制改正を期待したいものである。