【富田林市】70年に渡って寺内町を見続けた町の本屋さん。芦田書店は本を通じてのたいせつな交流の場です
イベントやお買い物など、いろんな用事で寺内町に行ったときに、たびたび前を通って気になる本屋さんがありました。
それは、近鉄富田林駅から歩いてすぐのところにある芦田書店さん。寺内町の生き字引とも言えるこの本屋さんに、いろいろお話を聞かせていただきました。
芦田書店さんは、富田林駅から徒歩1分の場所にあります。駅南口(寺内町側)の出口から観光案内所であるきらめきファクトリーの横に続く道を歩くと、そこにすぐにあります。
こちらが芦田書店さんです。まず最初に開業した年についてお聞きすると、なんと創業70年とか!現在の店主、芦田さんのお父さんの代から続いている老舗です。
入口には週刊誌や漫画雑誌などいろんな本がありますね。店内にはミニ図書館といってもいいくらい、硬軟とりまぜていろんなジャンルの本が並べられています。
今回の取材中も何人もの客さんが来られていて、注文していた本を引き取っていたり、どの本がいいか相談されていました。
入ってすぐのコーナーに、おすすめ本が置いてありました。いろんなジャンルの本や雑誌がありますね。
しかし芦田書店さんの魅力はこちらのコーナーではないでしょうか?郷土の本が数多くあり、中には大手書店では扱わないような地元富田林や南河内地域の作家が書いた本を置いてあります。
特に寺内町の旧杉山家住宅で生まれ育った石上露子(いそのかみつゆこ)に関する書籍が多くあるのが目を引きます。
店主さんのお父さんが70年前、古本屋を創業したことから、芦田書店さんはスタートしました。
お父さんは古本屋を始めた当時は、石上露子も健在で、交流があったそうです。
お父さんは晩年は本を書きたいとの思いがあったそうですが、その夢がかなうことなく亡くなられました。それは店主さんが高校3年生の時です。
店主さんは若くしてお父さんを亡くしたことで、短大に通いながら自分の将来を見つめなおすことになりました。
店主さんのお父さんが取次店(出版社と一般書店の間をつなぐ、卸売問屋のようなもの)から仕入れができる手続きを終えた後に亡くなられたこともあり、1967(昭和42)年に短大を卒業した20歳で跡を継ぐことにしたそうです。
そのときに、古本ではなく新刊を扱う今の形に変えたとか。
やがて富田林市内に団地が出来るようになると、出版社の営業担当者さんと共に、新しい団地を回って営業をしていったそうです。「昔は今と違って百科事典や児童文学がよく売れました」と店主さんが懐かしそうに言われたのが印象的でした。
「昔の駅前や寺内町は、いろんな通りに商店街があって、とてもにぎやかだった」と店主さん。当時、寺内町にも何軒も本屋さんがあったとか。
こうして芦田書店さんは富田林駅前で本屋さんを続けてこられたのですが、10年位前から街づくりの活動にも携わられています。
車社会になってから富田林の町の様相が変わり、この界隈がどんどん静かになっていきました。その一方で江戸時代の雰囲気を残す寺内町の存在があり、何とか保存して素敵な街にしたいと考えたのです。
こうして店主さんは、他の有志の皆さんと共に富田林の街づくり協議会に参加しました。寺内町の空き家に新しいお店が入ってもらえる活動を協議会の仲間たちと実施。その結果、寺内町には30軒以上も若い人の店が増えました。
「それまで寺内町で頑張っていた人は高齢化しているから」と店主さん。いま寺内町には雨の日でも人が並ぶような人気店がいくつもありますが、それこそ店主さんを含めた有志さんたちの努力の結晶なのでしょうね。
最後に店主さんに将来の事を聞いてみました。
「本屋をやっているからまだまだ元気。出来る範囲で続けたいです」
また「外部から面白い人がどんどん富田林寺内町に来てくれました。これからもそういったお店が増えて、みんなそれで食べていけるようになったらいいなあとも思います」と言われていました。
「本の配達が書店商売の原点」と考えている店主さん。現在もお手伝いの方と共に、喫茶店や学校など、毎月50軒ほどの配達をこなしています。
必要な本が発行されたらそれを毎回確実に届けてくれるというサービスは、お客側にはとても便利でうれしいこと。
芦田書店さんは、意外なことにコミック系も充実していて、画像のように人気のマンガがシリーズまとめて置いていることもポイントが高そうです。
芦田書店さんでは本以外にも、店の一角で日用品のこだわり品も販売。また保護猫活動も熱心にされています。
今回の取材のときにも常連のお客さまの出入りがとても多く、お買い物だけでなく世間話に花を咲かせていました。
本屋さんであるだけでなく、人々の交流の場所としてもずっと根強い人気のある芦田書店さん。
本を読む人が少なくなっているのに加え、購買形態もネットが大勢を占める時代となったので廃業する個人書店が少なくないのが現状ですが、やはり芦田書店さんのような心のよりどころとなる場所は、町にとって不可欠な存在ではないでしょうか。
町の本屋さんとして町のその変遷を見続け、町を良くするために活動してきたこと。それが「生き字引」と言われるまでお店を続けてこられた理由ではないか。芦田書店さんの店主さんの話を聞きながらそう感じました。
芦田書店
住所:大阪府富田林市本町14-13
アクセス:近鉄富田林駅から徒歩2分
※記事へのご感想等ございましたら、「奥河内から情報発信」ページのプロフィール欄にSNSへのリンクがありますので、そちらからお願いします。