「足かせ」はめられ吊し上げショー…北朝鮮20代女性コンビの受難
Netflixで配信され、世界的に人気を博した韓国ドラマ「涙の女王」。
結婚生活の危機を迎えていたデパート業界の女王と田舎出身の夫。そんなふたりの間に、奇跡のように再び愛が芽生え始めて...。(Netflixの紹介文より)
この人気ドラマを見ていたというだけの理由で、北朝鮮の首都・平壌の突撃隊(半強制の建設ボランティア)の女性隊員2人が逮捕され、吊し上げにかけられた。詳細を現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
(参考記事:「見てはいけない」ボロボロにされた女子大生に北朝鮮国民も衝撃)
平壌市安全部(警視庁)は今月初め、「柳京建設管理局連隊で発生した思想問題」という題名を掲げて大思想闘争会議を開催した。つまりは「吊し上げ大会」だ。
ターゲットとなったのは、柳京建設管理局連隊に所属する20代の女性隊員2人だ。彼女らは同じ中学校出身で、突撃隊に動員された後も、ずっと仲良しだった。2人の趣味は韓国ドラマや映画をこっそり見ることで、彼女らは「涙の女王」を見て、現場で談笑していた。
ところが、その様子を別の女性隊員に見られ、青年同盟に密告された。青年同盟は、この件を大問題だとみなして事件化することにした。そして、2人は先月中旬、逮捕された。
平壌市安全部は、半月かけて2人を別々に取り調べ、その内容をベースにして吊し上げのターゲットにした。そして、大思想闘争会議で思想的に問題があると指摘された2人は、その場で足かせをはめられ、安全部の予審(起訴前の証拠固めの段階)にかけられている。
一方で、安全部は、柳京建設管理局連隊の青年同盟の書記への批判書も公開した。
「彼は司法機関の方針指示を正しく認識せず、2人が見た映像物のタイトルを突撃隊で公に言及して問題を大きくしたことで批判を受けた」(情報筋)
ただ単に違法な映像を見たと批判するだけでいいのに、書紀は「涙の女王」を見たなどとタイトルを話してしまった。これが別の問題を引き起こしてしまった。
「(安全部は)他の突撃隊員の好奇心を誘発した青年同盟の書紀を情けない者だと叱責した」(情報筋)
韓ドラのタイトルに言及してしまったことで、逆に若者の韓ドラへの好奇心を高めてしまったということだ。
金正恩総書記は先月、韓流取り締まりに関する新たな指示を下した。そこには次のような内容がある。
「新たな事件を公開裁判、思想闘争などを通じて知らしめれば、むしろ住民が少しの話から(どんな内容かを)推理して、思想的に動揺してしまう。特に若者は、新たに取り締まられた歌、ダンス、映画、図書、雑誌、図画のタイトルを知ることで、むしろ関心を高める」
題名や内容に言及するとむしろ好奇心を高めてしまうため、韓流取り締まりの事案をクラス分けして管理し、内容を秘密にせよということだ。上述の青年同盟の書紀は、この金正恩氏の指示に従っていなかったことから叱責を受けた。
しかし、人々の韓流に対する欲求はとどまることを知らず、極刑をもってしても抑え込めない。タイトル、内容を秘密にしても、今までの事例を考えると、どこからか漏れてしまうことだろう。