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再結集したサンウルブズファンの声。ラグビー日本代表戦で、チームもファンも存在感

多羅正崇スポーツジャーナリスト
4季在籍した「ミスターサンウルブズ」エドワード・カークが日本代表戦の主将を務めた(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

サンウルブズのために駆けつけるファンがいる。

6月12日(土)、静岡で開催されたラグビー日本代表戦の相手として限定復活したサンウルブズ。

試合は17-32で敗れたが、前半を14-3とリードして折り返すなど、欧州遠征を控えた日本代表の相手として遜色ない奮闘を見せた。

サンウルブズは日本初のプロラグビーチームとして2016年から5季にわたり南半球最高峰スーパーラグビーに参戦し、通算成績は9勝1分58敗だった。

東京・秩父宮で開催されたホームゲームは毎年平均1万人以上の観客を集め、スクラム時の遠吠えなど、独自の応援文化も生まれた。

20年をもってリーグ脱退となり活動は終了したが、根強いファンがおり復活を望む声は多い。

いま、サンウルブズファンは何を思うのか?

静岡・エコパスタジアムで開催された日本代表戦は、そんなサンウルブズファンの生の声を聞く絶好機。ファン4組にサンウルブズへの思いを訊いた。

国内開催のホームゲームを全試合を観戦した岸本さん。オオカミ軍団サンウルブズにちなんだ“ウルフポーズ”で撮影に応じてくれた。(写真:筆者撮影)
国内開催のホームゲームを全試合を観戦した岸本さん。オオカミ軍団サンウルブズにちなんだ“ウルフポーズ”で撮影に応じてくれた。(写真:筆者撮影)

岸本さんは2016年から国内開催の全試合を観戦したという筋金入りのサンウルブズファンだ。

1試合限りの限定復活となったこの日を待ちわびていたという。

(岸本さん)またサンウルブズのジャージを着られると思っていなかったので、今日は絶対にこのジャージを着てこようと思って来ました。

私は16年からのファンで、スーパーラグビーが目の前で見れるということで応援を始めました。

オーストラリアのフォースはスーパーラグビーから脱退しても、名前を残して活動しましたが、あんな風にしてほしいと思ったりもします。

また是非スーパーラグビーに入れてほしいです。

ラグビー選手全員を応援しているという冨塚さん(左) (写真:筆者撮影)
ラグビー選手全員を応援しているという冨塚さん(左) (写真:筆者撮影)

冨塚さんは2019年ワールドカップでラグビー熱が再燃し、サンウルブズの応援も始めたという。

「ラグビーは何でも応援する」という冨塚さんは、強敵に立ち向かうサンウルブズに力をもらっていたという。

(冨塚さん)サンウルブズは日本を背負って、強いチームに立ち向かっていくところが魅力でしたね。

僕は何でも応援します。ラグビーをやってる選手はすごく立派だと思いますし、カテゴリーは関係ないです。

ラグビーを観ると元気をもらえるというか、心と身体を使って戦う姿を見ていると、「我々も負けてられない」という気持ちになりますね。

サンウルブズは海外のチームと定期的に試合ができたチームで、そこで選手の皆さん力をつけ、日本代表に上っていけるところもあったと思います。

ですので、復活というか、そういうチームがあってもいいのではと思います。

一日限りの復活に駆けつけたサンウルブズファン三人組。(左)チエさん(中)サトミさん(右)ヒロコさん
一日限りの復活に駆けつけたサンウルブズファン三人組。(左)チエさん(中)サトミさん(右)ヒロコさん

ひときわ華やかだった女性三人組は、熱狂的なサンウルブズファンであると同時に、スーパーラグビーのファンでもあった。

チエさん(写真左)は成人式に日本選手権を観に行ったというコアファン。2015年のワールドカップでラグビー熱が再燃したという。

(チエさん)サンウルブズ、復活してほしいです。外国の強い選手が日本でプレーする試合を見たいです。

(ヒロコさん)日本でスーパーラグビーが見たいです。

(サトミさん)サンウルブズがスーパーラグビーに参戦できたことで、すごく面白いラグビーが見れた。あと、スーパーラグビーに新しいチームで参戦して、誰でもイチから一緒に応援できた。それが楽しかったんです。

(ヒロコさん)私はサンウルブズから入ったので、本当にガチのラグビーを見られた。サンウルブズの試合は「さすがスーパーラグビー!」という感じでした。

(チエさん)サンウルブズは年々強くなっていって、それがワールドカップに繋がったということをヒシヒシと感じるんですよね。ぜひ継続してほしいなと思います。

(サトミさん)今までのように、ある時期だけ契約してスーパーラグビーに参加する、というサンウルブズも見てみたいです。

(チエさん)以前は海外のすごい選手たちが気安く写真を撮ってくれたりした。サンウルブズがなかったら、私たちが近づくこともできない選手たちに、こちらがよくしてもらってすごく楽しかった。

(ヒロコさん)ダミアン・マッケンジー(NZ代表SO/FB)と写真を撮ったりね。

(サトミさん)だから楽しかったよね。

22年には国内で新リーグが開幕する予定だ。

新リーグがラグビー強豪校の出身でもない、トップリーグ企業の関係者でもないラグビーファンを、どれだけ惹きつけられるか。彼女たちのような目の肥えたファンを楽しませられるのか。新リーグのチャレンジは要注目であり、大きな期待を寄せずにはいられない。

選手のサインが入ったサンウルブズグッズを持ったファンの北久保さん。(写真:筆者撮影)
選手のサインが入ったサンウルブズグッズを持ったファンの北久保さん。(写真:筆者撮影)

サンウルブズを応援する北久保さんも、今後のチーム存続を希望する一人だ。

(北久保さん)サンウルブズというブランドは活かした方が良いのではと思います。

「サンウルブズ」というネームバリューは、スーパーラグビーで5年やってきたからこその財産。だからファンはこうやってユニフォームを着て、静岡までやって来ています。これを是非残してほしい。

2年前は福岡拠点で新リーグに参加する、という噂がありましたよね。

新リーグでは九州拠点の1部チームがなくなりそうなのだから(※)、サンウルブズが新リーグに入って上を目指しても全然良いのではと思います。

(※)2021年に福岡拠点のコカ・コーラが廃部となった。

ファン再結集の舞台となった静岡・エコパスタジアム(写真:筆者撮影)
ファン再結集の舞台となった静岡・エコパスタジアム(写真:筆者撮影)

サンウルブズは、日本代表戦に出場した選手からも愛されていた。

今回の再編成では、4季在籍の元共同主将、FLエドワード・カークや3季在籍したFL布巻峻介らが中心となり、短期間でチームになるための「コネクション」「対応力」といった文化を再現した。

この日多彩なキックで活躍し、サンウルブズには19年に途中参加(5試合出場)したSO山沢拓也(パナソニック)は「良い文化は今も変わらず残っていた」と語った。

(山沢)2019年の途中からサンウルブズでプレーしましたが、周りの選手がサポートしてくれてチームに早く馴染むことができました。良い文化は今も変わらず残っていて、短い期間でしたが仲を深めることができました。

サンウルブズらしさを知る指導者、選手がいれば、長い中断があっても「サンウルブズらしさ」は再現できる。それが今回証明された。

また、日本代表戦で途中出場からトライを決めたWTB竹山晃暉(パナソニック)は、若手選手のチャレンジの場としてのサンウルブズの価値を認めていた。

(竹山)日本代表はすごいプレッシャーもあったと思います。これから若い選手がたくさん出てくる中で、サンウルブズのようなチャレンジができるチームがあれば、代表に繋がる取り組みになるのでは、と試合をして感じました。

サンウルブズは終わっていない。むしろサンウルブズが秘めた可能性を感じざるを得ない日本代表戦になった。

スポーツジャーナリスト

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める

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