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厚底じゃない!ナイキの新作ランニングシューズは、5K/10Kに特化。ポイントは軽量性と接地感

和田悟志フリーランスライター
アッパーに5K /10Kと記してある(写真提供/Nike)

ランニング習慣の三日坊主を防ぐカギは“ストリーク”にあり!?

 箱根駅伝の熱狂も冷めやらない1月上旬、1本の記事がどうしても気になって、クリップしてあった。それは、COURRiER Japonの『市民ランナーの間で話題の「ストリーク」って? 大切なのは「毎日続けること」まずは1日10分のランニングを2週間から』 という記事。

 その記事では、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が“近年、市民ランナーの間で「ストリーク」の人気が高まっている”と報じているとあった。

 一部を引用すると、

“ランニングにおける「ストリーク」とは、1日1マイル(1.6km)以上のランニングを毎日続けることを指す。走る距離も場所もペースもその人次第。1日1マイル(1.6km)以上であれば、10分でも1時間以上でも構わない。その日その時の体調に合わせて、好きなペースで走れば良い。”

 とある。

 なるほど。思わぬ気づきがあった。

 私もランニングをしているが、繁忙期になると、どうしても走れない日々が続くのが悩みだった。せっかく走るなら、1回で“30分以上”もしくは“5km以上”は走らないと、と欲張ってしまうからだ。

 でも、“1日10分でいい”と考えることができれば、三日坊主になりがちな私でも無理なく継続することができそうだ。

 その記事を読んでから10日後に、再び“ストリーク”というワードが、ランニング界隈を賑わすことになるとは、その時は思いもしなかった。

 1月19日、ナイキからNike ZoomX Streakfly(ナイキ ズームエックス ストリークフライ)という新シューズが発表されたのだ。シューズのアッパーのヒール部分には「5K/10K」とある。その通りに、まさに5kmや10kmといった短い距離の、ロードでの使用を想定したシューズだ。

5K/10Kを想定した超軽量レーシングシューズ

 ナイキのロードのレーシングシューズといえば、カーボンプレートを搭載した厚底シューズの“ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%”や“ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 2”がお馴染みだ。これらのシューズは、マラソンやハーフマラソンなど長い距離から、もちろん5kmや10kmの短い距離のレースにも対応できるシューズだ。

 だが、アスリートの声に耳を傾けると、5kmや10kmの短い距離を走るときに、「もっと接地感が欲しい」「履いた感覚がないようなシューズが欲しい」「短い距離ではそこまでクッション性はいらない」などといった意見もあったという。

 そこで、誕生したのがナイキ ズームエックス ストリークフライというシューズ。

 2年以上かけて、試作品を重ね、世界中の多くのアスリートにフィードバックをもらいつつ、製品化にこぎつけた。日本の実業団や大学の選手にもテストしてもらったという。

写真提供/Nike
写真提供/Nike

 最大の特徴はというと、プレートが中足部のみに搭載されていることだろう。アルファフライやヴェイパーフライは、カーボンファイバー製プレートが前足部にまで搭載されているが、ストリークフライはそうはしなかった。

 これにより、抜群の反発力を持つミッドソール素材のズームXフォームの高機能を最大に生かすことができ、アスリートが求める「接地感」をしっかりと感じられるようになった。

 また、圧倒的に軽量であることも大きな特徴だ。

メンズ28.0cm(USサイズの10)で185g、ウィメンズ25cm(USサイズの8)で155gとなっている

 ちなみに、ソールの厚みは、サイズによって異なるが、25mmより少し厚いぐらい。世界陸連(WA)の規定で40mm以下のため、ロードレースでは使用できる(25mmは超えるため、トラックの公認レースでは使用不可となる)。

 開発に携わったナイキ ランニングフットウェアのプロダクトマネージャーのエリオット・ヒース氏は、プロランナーとして活動した経歴があり、スタンフォード大学時代には米国アイビーリーグ選抜として2012年の出雲駅伝に出場した実績もある。

(※青山学院大が大学三大駅伝で初優勝を果たしたこの大会で、エリオット氏は、1区4位と好走。大迫傑や小椋裕介、井上大仁、村山紘太といった錚々たる選手に先着している)。

 エリオット氏は、自身の体験やアスリートの声を踏まえて、このシューズの用途について次のように話した。

「出雲駅伝のように短い距離のレースに向いていると思います。ストリークフライの性能を十分生かしてもらえると思う。また、レーシングだけじゃなくて、1kmや2kmのインターバルなどいろいろなトレーニングに履いてほしいと思います」

 確かに、ここぞという時にのみ、アルファフライやヴェイパーフライを履くという選手は多く、そういった点でもスピード練習などに適した1足と言えるかもしれない。5kmや10kmのレースに特化したシューズと聞くと、使用できる場面が限られているかと思ったが、案外、汎用性のあるシューズのようだ。

 アウトソールのデザインも、多くのランナーのデータをとったジェネラティブデザインとなっており、フォアフット(前足部接地)からヒールストライク(踵部接地)まで、あらゆる走法に対応している。つまりは、トップランナーだけのシューズというわけではない。

写真:KEI108/イメージマート

 昨今のコロナ禍におけるレース事情を見ると、我々一般ランナーが参加できるフルマラソンやハーフマラソンが中止に追い込まれることが多い。規模が大きいレースほど、リスク回避の観点から開催するのが難しいようだ。そんなタイミングで登場したストリークフライというシューズが、ランニング文化に与える影響もあるのではないだろうか。強引な妄想ではあるが、ファンランナーの1人として、小規模かつ気軽に参加できる5kmや10kmの草レースが増えないものだろうかと願ってしまう。

楽しみなシューズが続々と登場

 昨年は、アシックスの厚底レーシングシューズ、メタスピードシリーズが評判を集めたが、ニューイヤー駅伝や箱根駅伝ではアップデートしたプロトタイプを履いた選手もいた。また、ミズノの厚底シューズもお目見え。帝京大の遠藤大地が箱根ラストランで真っ白なシューズを履いていたのが目立った。明大の加藤大誠は日本未発売のプーマのシューズで箱根路を走っており、こちらも全貌が気になるところだ。

 ナイキのストリークフライだけでなく、今年も、楽しみなシューズが続々と登場しそうだ。

アップデートされたアシックスのメタスピードシリーズを履く細谷恭平選手(左)と土井大輔選手
アップデートされたアシックスのメタスピードシリーズを履く細谷恭平選手(左)と土井大輔選手写真:築田純/アフロスポーツ

フリーランスライター

1980年生まれ、福島県出身。 大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。 その後、出版社勤務を経てフリーランスに。 陸上競技(主に大学駅伝やマラソン)やDOスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆。大学駅伝の監督の書籍や『青トレ』などトレーニング本の構成も担当している。

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