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ひとり旅を充実させる「温泉宿の選び方」5つ。小さな宿を狙う、ぼっち飯問題と向き合う……

高橋一喜温泉ライター/編集者

2度の連休がある9月に入れば、いよいよ行楽シーズン。ひとり旅を計画している人も多いのではないだろうか。

ひとりでの温泉旅(ソロ温泉)に出かける際、多くの人にとって悩ましいのが「宿選び」かもしれない。特にひとり旅に慣れてない人は、数ある温泉宿の中からどこを選べばよいか悩むようだ。

ひと口に「温泉宿」といっても、その特徴は異なる。また、昔ながらの湯治宿からラグジュアリーな高級旅館まで、料金もピンキリである。

そこで今回は、ひとり旅を充実させる「温泉宿の選び方」を5つのポイントから考えてみたい。

①「温泉の質」を見極める

温泉が目的のひとり旅において、源泉の質はきわめて重要である。温泉三昧を楽しむなら、その質によって満足度が大きく左右されるからだ。

具体的にいえば、湯の鮮度が高い温泉が好ましい。つまり、循環ろ過によって個性を失った温泉ではなく、源泉かけ流しでいきいきとした湯を堪能したい。ストレスなく温泉でリラックスできるかどうかは、入浴がメインとなるソロ温泉にいては決して軽視できない。

宿泊候補となる旅館の温泉の質は、実際に入浴した人のブログやSNSをチェックすると、ある程度把握できるはずだ。

②「静かな温泉地」を選ぶ

温泉旅行の目的はそれぞれだが、筆者は忙しない日常から距離を置き、非日常の時間を得られることがソロ温泉の醍醐味と考える。仕事はもちろん、SNSや人間関係を一時的に断ち、ひたすら温泉でゆっくりすることにより、心身のリフレッシュを図るのだ。いわば「空白の時間」を体験するための旅である。

にぎやかな環境を好む人には人気温泉地を選ぶのが正解かもしれないが、筆者のように「空白の時間」を味わいたい人には、観光客が多い有名温泉地はあまり向かない。まわりに人が多いと、非日常感にどっぷりつかることが難しくなる。また、楽しそうに過ごしている人たちに囲まれていると、孤独を感じてしまう恐れもある。その点、ひなびた風情の静かな温泉地なら、温泉や自分とゆっくり向き合う時間を確保できる。

③「小規模の宿」を選ぶ

②と同じ理由で、家族やグループ客でにぎわう大型旅館・ホテルはソロ温泉には向かない。もちろん大型旅館ならではの気軽さや快適さもあるが、静かなひとり時間を求めるなら、規模が大きすぎない宿のほうが向いている。したがって、観光客は少ないけれど、昔ながらの湯治場の雰囲気を残す温泉宿、あるいは部屋数の少ない中・小規模の温泉宿がソロ温泉にはおすすめだ。

④「居心地の良さ」に敏感になる

これについては判断が難しい。居心地のよさは、人によって印象が異なるし、実際に宿泊してみないとわからない部分が多い。

いわゆるハイクラスに分類される人気高級宿で、温泉の質や環境、設備、料理も申し分ない場合でも、どこかフワフワと落ち着かない気分になる人もいる。反対に、1泊2食付きで1万円を切る小さな宿に、田舎の実家に帰ってきたような居心地の良さを感じる人もいる。逆もしかりだ。

居心地のよさは、人それぞれの好みが大きく影響するので正解はない。高いお金を払ったからといって、必ずしも高い満足度を得られるとはかぎらない。

大切なのは、自分にとって、どんな傾向の宿が心地よく感じられるか、を把握することだ。自分の好みの傾向がつかめれば、ソロ温泉の宿を探すときに、ぐっと選択肢を絞りやすくなる。

あとは、実際に足を運び、「居心地のよさ」を確認するほかない。お気に入りの温泉が見つかったら、定宿にしてもいいだろう。思いつきでふらっとソロ温泉に出かけたくなったとき、定宿があると心強い。

⑤「ぼっち飯問題」に向き合う

ひとり旅を躊躇する人の意見としてよく聞かれるのが「ひとりで食事をとるのはさびしい」という、ぼっち飯問題である。ひとりで食べることに慣れていないと、まわりの目が気になってしまうし、おいしい料理に出合ったときの感動を分かち合う相手がいないことに寂しさを覚える人も多いだろう。

いちばん気まずいのは、大広間などに宿泊客が一堂に会して食事をとるスタイル。意外とまわりの人は気にしていないものだが、本人は孤独を覚えるシチュエーションだ。孤独や恥ずかしさが先に立つと、どんなにおいしい料理でも味気なく感じてしまうものだ。

だが、近年ではひとり客に配慮してくれる宿も増えている。部屋まで食事を運んでくれたり、客室以外の個室を用意してくれたりすることも。広間や食堂での食事だとしても、まわりの目が気にならない席や衝立などの目隠しを用意してくれる宿もある。

あとは本人の慣れの問題が大きいが、初心者のうちは事前に食事の提供方法を確認しておくとよいだろう。宿泊プランやホームページに明示されていなければ、宿に問い合わせてもよいだろう。

どうしてもひとりでの食事を避けたい、あまり料理は重視していない、という人であれば、素泊まりで予約して外で食事を調達するという技もある。いずれにしても、自分自身が食事で不快な思いをしないよう、できるかぎりの対策を講じることが大事になる。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3900超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『スーパーJチャンネル』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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