生成AIがもたらすクリエイターとの確執 #専門家のまとめ
生成AIの技術進化は目覚ましく、人間が創造した作品とほぼ見分けが付かないコンテンツがほぼ自動的に作成可能になりつつあります。生成AIは大量の既存著作物から学習することで新たな作品を生み出していることから、他者の著作権を侵害している可能性があり、規制派による訴訟や意見表明の事例が見られます。
ココがポイント
▼Midjourneyなどの画像生成AIが著作権を侵害しているとして米イラストレーターが訴訟提起しています
・画像生成AI企業を訴えたアーティスト集団の主張、米連邦地裁で一部認められる (アスキー)
▼検索に連動してAIによるサマリーを提供するタイプのサービスが著作権侵害にあたると主張しています
・新聞協会、AIは「著作権侵害」 検索連動型、記事の利用承諾要請 (共同通信)
▼有名楽曲と類似する楽曲が生成されたことを証拠の一つにSunoなどの音楽生成AIサービスを著作権侵害で提訴しています
・レコード大手が米AI企業を提訴 音楽生成、著作権侵害 (共同通信)
▼生成AIによる絵柄の摸倣について問題提起されています
・人気漫画家 生成AIに絵柄を無断学習される“なりすまし横行”に苦言「削除困難ギリギリ現行法を回避する」(リアルサウンド)
エキスパートの補足・見解
生成AIが他人の著作権を侵害するか否かは学習段階と生成段階に分けて考える必要があります。米国ではフェアユースに該当するか、日本では著作権法の権利制限規定に該当するかを主な論点として著作権侵害が判断されることになりますが、少なくとも現時点では、学習段階において、公開された既存著作物を利用するだけでは著作権侵害とは言えず、生成段階で既存著作物に類似する著作物が生成された場合に著作権侵害になり得るのではというのが基本的考え方です。
なお、生成AIがもたらす課題としては直接的な著作権侵害だけではなく、ディープフェイク等による偽情報問題、漫画家の絵柄や声優の声質の摸倣、クリエイターの雇用機会減少などもあります。これらは、必ずしも著作権の問題とは言えないケースもありますが、今までになかった、生成AIがもたらす新たな課題として、権利者、利用者、一般消費者、テクノロジ提供者等の全利害関係者のコンセンサスのもとで解決していくべきものです。