「2週間以内」に朝鮮半島で4度目の南北首脳会談が実現するか
物別れに終わったベトナム・ハノイでの米朝首脳会談から3か月以上、朝鮮半島情勢は膠着状態にあるが、ここにきて、何かが動きそうな気配がしてならない。
その一、ノルウェー訪問中の文在寅大統領が昨日(12日)、オスロ大でのフォーラムでの演説後、4度目の南北首脳会談について問われた際、「会うかどうかや、会う時期について決定するのは金正恩委員長の選択である」と断りながらも「トランプ大統領の6月末の訪韓前に金委員長と会うのが望ましい」との考えを示したことだ。
トランプ大統領は今月28~29日に大阪で開催されるG20以後に訪韓することになっているので、金委員長の決断次第では今後2週間以内に板門店でワンポイントの南北首脳会談が開かれる可能性もゼロではない。
その二、金委員長からトランプ大統領宛に「親書」が伝達されたことをトランプ大統領が公表したことだ。
トランプ大統領は11日、「素晴らしい内容の親書だった。予想してなかった。良いことが起きるだろう」と述べ、昨日も「親書に何が書いてあるか、ここで明かすことはできないが、いつかはわかるだろう。100年後にわかるかもしれないし、あるいは2週間後かもしれない」と語っていた。
「2週間後かもしれない」とは、実に意味深長な言葉だ。ちなみに、韓国の国家情報院は否定しているが、米国滞在中の徐薫国家情報院長が親書の伝達者ではないかと囁かれている。
その三、トランプ大統領は「状況が進展した時に会いたい」と3度目の米朝首脳会談前の実務協議の必要性を示唆していたが、実務交渉を取り仕切る国務省のスポークスマンが昨日「北朝鮮と実務交渉を続けたいし、その準備もできている」と発言し、「一年前のシンガポールでの約束に向けてどのように進展させるかを北朝鮮側と論議するつもりだ」と北朝鮮に交渉再開を呼びかけていることだ。
その四、米側の交渉責任者であるビーガン対北政策特別代表が6月上旬にシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で「我々は米朝の持続的な交渉を通じて両国の隔たりを縮めることができると確信している。米朝が昨年のシンガポール首脳会談で約束した全ての目標に向けて追加的進展をもたらすことができるものと確信している」と、交渉進展に前向きな発言をしていることである。
その五、そのビーガン特別代表と韓国の李度勲朝鮮半島平和交渉本部長との会談が今月19日にニューヨークで予定されていることだ。
李度勲本部長はトランプ大統領が金委員長から親書を貰ったことを明らかにしたその日に予定されていた外交部主催のセミナー出席をドタキャンして、文大統領が訪れているスウェーデンに急遽飛んで行った。
その六、北朝鮮が10日に死去した故金大中元大統領の夫人、李姫鎬さんの葬儀に弔問団を派遣せず、金与正党宣伝扇動部第1副部長を南北軍事境界線にある板門店に派遣し、北朝鮮側施設「統一閣」で鄭義溶国家安保室長に金委員長の弔意と花輪を伝達したことだ。
2009年8月に金大中大統領が死去した際には金己男党書記(当時)や金養建党統一戦線部長(当時)ら党最高幹部らで構成された弔問団を派遣していたことや、2011年12月に金正日総書記が死去した際に李姫鎬さん自らが弔問のため訪朝していたことなどを考慮すれば礼節上、弔問団を派遣してしかるべきだが、仮に文大統領が求めるトランプ大統領訪韓前の南北首脳会談を真剣に考慮しているならば、あえて特使としての性格を帯びた弔問団を派遣する必要はないのかもしれない。
金与正第1副部長と鄭義溶国家安保室長の面会は約15分と短時間だったが、与正氏は席上「民族の和解と協力に尽くした李姫鎬氏の遺志を継ぎ、北南間の協力継続を願う」と述べたとのことだが、「北南間の協力継続を願う」が北朝鮮側の誓いならば、韓国との対話に前向きの証と言えなくもない。
対北強硬派のボルトン大統領補佐官は一昨日(11日)、ワシントンで米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が開いたシンポジウムで3度目の米朝首脳会談の可能性について「米朝対話の扉は開いている。金正恩委員長が鍵を握っている。我々は準備が出来ていて、彼らの日程に合わせる」と述べていたが、南北首脳会談も、米朝首脳会談も結局のところ、すべては金委員長の決断次第のようだ。