北の核実験は「米国のせいだ」とロシアが主張する理由
4回目の核実験を強行した北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議に、時間がかかっている。6日に核実験が行われた当初、これまで北朝鮮に甘かった中国も「今度こそは本気で怒っている」とするニュースが報じられ、国連安保理がすぐにも過去最強の制裁決議を下すかのような空気がただよった。
しかし今回も、中国は強すぎる制裁には消極的なようだ。
一方、安保理常任理事国のうち、北朝鮮のもうひとつの友好国であるロシアは、より分かりやすく制裁強化への「反対」の意を明らかにしている。
ロシア国立の最高学術機関、科学アカデミーのアジア・朝鮮半島の専門家たちが、相次いで制裁強化への懸念を表明。これを、プーチン政権の強い統制下にあるロシア国営通信スプートニクが報じているのだ。
その論調はざっくり言って、「北朝鮮が核開発を行うのは、米国が対話に応じてやらないからだ」というものだ。
(参考記事:ロシアの専門家ら、対北制裁の強化に懸念表明…政府の立場を代弁か)
なかでも東洋学研究所朝鮮研究室のアレクサンドル・ヴォロンツォフ室長は、北朝鮮に核開発を止めさせるためには、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に移行させなければならないと述べている。これは、北朝鮮の主張そのものだ。
(参考記事:対北制裁「経済窒息には反対」…ロシア科学アカデミー幹部)
(参考記事:「朝米平和協定が問題解決の唯一の活路」北朝鮮メディアが主張)
ロシアからこうした声が出てくるのは、決して珍しいことではない。科学アカデミーの専門家たちとスプートニクは、折に触れて北朝鮮擁護の論陣を張ってきた。背景にあるのは言うまでもなく、ウクライナ紛争である。
米国との対決姿勢を強めるプーチン政権は、金正恩政権が倒れ、ロシアと国境を接する新たな親米国家が誕生するのを嫌っているのだ。
(参考記事:プーチン氏の超強硬姿勢、拉致問題など北朝鮮情勢に影響必至)
では、中国はどうか。基本的には、ロシアと同じ立場だろう。
核実験後、米軍はB-52戦略爆撃機を朝鮮半島上空に飛ばし、北朝鮮を威嚇したが、同じことは南沙諸島の空域で中国に対しても行われている。また、日本の防衛費は中国を意識し、過去最大の5兆円超にふくらんでいる。
このような状況下で、日米韓と中露の利害が容易に一致すると考える方に無理があるのだ。むしろ、北朝鮮はこうした状況に乗じていると考えるべきだろう。
それにしても不思議なのは、新聞やテレビのニュースを見ていても、こうした関係国間の利害のズレがほとんど指摘されていないことだ。