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国会で審議中の2022年度第2次補正予算案で、大量の基金造成の「なぜ」

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
第2次補正予算案で計上された基金が多い経済産業省と文部科学省

11月29日に、2022年度第2次補正予算案が衆議院で可決し、審議の場は参議院に移された。

第2次補正予算案には、複数年度にわたり支出できる基金への予算措置が、これまでになく多く盛り込まれたことが明らかになった。

財務省が11月21日に国会に提出した資料によると、2022年度第2次補正予算案で基金を新設したり、積み増ししたりする支出が計50基金、8兆9013億円に及ぶ。この金額は、1つの予算案において過去最大の規模であるという。

2次補正、半導体など50基金に8.9兆円 使途監視欠かせず(日本経済新聞)

第2次補正予算案の基金、過去最高の8.9兆円 無駄の温床と批判も(朝日新聞)

今般の第2次補正予算では、経済産業省所管のものとして、ガソリンなどの価格抑制のために石油元売り会社等に配る補助金事業として燃料油価格激変緩和対策のために、追加して3兆0272億円を積み増しする。他にも、中小企業の賃上げに向けて業態転換を促すために設けられた事業再構築促進基金に、追加して5800億円を積み増しする。

他にも、文部科学省所管のものとして、理工系やデジタル分野への学部転換を行う大学や高専を継続的に支援するための基金を創設し、3002億円を投じる。

これら基金への支出は、2022年度の補正予算として計上されていながらも、2022年度末までに使い切ることを想定しておらず、2023年度以降にも補助対象先へ支出できるようにしている。

予算としては2022年度のものなのに、それが効力を失う2023年度以降にも支出がなぜできるのか。

それは、国の会計から支出するのは2022年度中だが、それを受け取った基金は、国会の議決を要する会計の外にある独立行政法人などの組織によって運営されているからである。国からの支出を受け取った後の基金の運営は、(所管省庁が関与するとはいえ)国の会計とは独立して運営される組織が担い、そこでその先の支出の意思決定がなされる。それは、2023年度以降になってもよいということになっている。

当然ながら浮かぶ疑問は、そんな形で年度を越えて支出が認められるなら、国会の議決は形骸化することになりはしないか、ということである。前掲の新聞記事でも言及があるように、このような基金の運営だと、国会の監視の目が行き届きにくくなる。

それなのに、なぜ、これほどまでに巨額の基金を新増設することにしたのだろうか。

一つの理由としては、第2次補正予算が12月中に成立したとしても、2022年度は残り4か月足らずで、計上された予算額を2022年度中に執行しきれないからである。

でも、2022年度末までに執行しきれなければ、2023年度に繰り越すという手立ては別途ありえる。だから、基金という形を取らなくても、2022年度補正予算として計上しながらも2023年度に繰り越せばよいわけで、必ずしも基金を作る必要はない。

それでもなお、繰越ではなく、基金としたのには、もう一つの理由がある。それは、基金は

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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