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松任谷由実の昭和の名曲が中華圏で人気の理由、日本のカルチャーの浸透を“リバイバルタレント”が解説

田辺ユウキ芸能ライター
“中国語版「冷たい雨」”を歌った、中西悠綺/写真:筆者撮影

1979年に松任谷由実がリリースした楽曲「冷たい雨」(作詞・作曲:荒井由実)。失恋した女性の気持ちを、雨降る街の情景などをまじえながら描いた同曲。それを1999年、中国語でカバーしたのが香港出身のカレン・モクだ(タイトルは「雙城故事」)。

カレン・モクといえば、1995年公開の香港映画『天使の涙』(ウォン・カーウァイ監督)で殺し屋と別れた金髪女性を演じ、そんな彼女の個性的なビジュアルをとらえたポスターデザインが話題となった。1996年にはファッションブランド「タケオキクチ」のデザイナー・菊池武夫による短編プロモーション作品『wkw/tk/1996@7'55''hk.net』で浅野忠信と共演し、こちらもカルチャーに敏感な若者たちの心をつかんだ。

香港出身のスターが歌った“中国語版「冷たい雨」”をカバー

このカレン・モクが歌った“中国語版「冷たい雨」”の「雙城故事」のリバイバルにチャレンジし、10月23日より配信リリースするのが、歌手、女優として活動する中西悠綺。中西は4月にも、テレサ・テンの名曲「時の流れに身をまかせ」(1986年)、「つぐない」(1971年)を中国語でカバーして発表。いずれもTimeless Treasures feat.中西悠綺名義でのリリースとなる。

台湾への語学留学や北京の大学への在学経験を持つ中西によると、松任谷の存在は「中華圏でもヒットアーティストがカバーするなど、国境を超えて親しまれています」とのこと。

また、カレン・モクによる“中国語版「冷たい雨」”については「松任谷さんの原曲が、1990年代の中華圏の感覚にアレンジされているんです。台湾の通りの名前に置き換えられたり、“あなたと飲んだコーヒーは、パリの太陽の下の雰囲気よりもいい”みたいな歌詞の内容になっていたり。ただ松任谷さんの楽曲は、そうやって単語やニュアンスがアレンジされていても、歌本来がまとっている世界観、ストーリー性が損なわれない。そこが長く、広く愛聴されている理由ではないでしょうか」と解説する。

台湾のカラオケランキングには米津玄師、宇多田ヒカルが上位に

中西悠綺は中華圏で日本のカルチャーがますます浸透していると話す/写真:筆者撮影
中西悠綺は中華圏で日本のカルチャーがますます浸透していると話す/写真:筆者撮影

ちなみに昨今、日本の昭和の名曲がアジアを中心に流行。韓国の音楽プロデューサー/DJのナイト・テンポが1980年代の日本のシティポップを世界のクラブシーンに持ち込んで火をつけたのは、音楽界の大きなトピックスとなった。中西は、「昭和、平成、令和の日本のヒットソングは中華圏でも人気を集めています」と話を加える。

「中華圏のSNSでも、日本の音楽を使った動画投稿が目立ちます。台湾のカラオケランキングでは、米津玄師さんの『Lemon』(2020年)、宇多田ヒカルさんの『First Love』(1999年)が上位に入っています」

さらに中西は「音楽はもちろんのこと、日本のアニメも中華圏で大ヒットしています。日本語を話せる中華圏の方に会うと、アニメを見て言葉を覚えたという声をよく聞きます。たとえば中国で映画『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年)が大ヒットしたのは記憶に新しいですよね。中華圏の方が日本を旅行する際、『THE FIRST SLAM DUNK』の場面のモデルになった場所を“聖地巡り”するそうです」と、中国における日本のカルチャー事情を語ってくれた。

そんな中西も2024年、中国発のショートドラマ配信アプリ「TopShort」用に作られたドラマ『派遣雑務は社長様?!』で主演をつとめた。ドラマ自体は中国制作だが、台詞などは日本語で、出演者も日本人がそろった作品だ。日本を拠点にしている中西だが、今後も中華圏での活動を積極的におこなう予定。

「まさにカレン・モクさんのように、グローバルに活動できる歌手、女優を目指しています。昨今はTikTokなどで縦型のショートドラマが人気を集めています。私もそういったショートドラマにたくさん出て『ショートドラマの女王』になりたいです」と意気込みを口にしてくれた。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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