鉄道利用客の迷惑行為ランキング、最上位は「座席の座り方」(2020年公開版)
日本民営鉄道協会は2020年12月、駅と電車内(鉄道)のマナーに関するアンケート(※)の結果を発表した。その内容から電車利用時における迷惑行為の実情を確認する。
駅や電車は多人数が同時に参加・利用する公共の場でもある。当然道徳、倫理の類を守らないと、多数の人が迷惑をこうむることになる。今件ではそのような「鉄道施設内などにおける迷惑行為」について尋ねている。
列挙されている事例のうち、自分が特に迷惑だと思う内容のものを3つまで挙げてもらい、その回答数を集計した結果が次のグラフ。最上位には「座席の座り方」がついた。4割近くの人が「迷惑だ」と感じている。
「座席の座り方」は具体的には足を大きく広げたり、姿勢を崩したり、あぐらをかくなどして、座席の設計時に想定したよりはるかに大きなスペースを取り、他の人の着席を邪魔するような行為が当てはまる。さらにはお年寄りや身体の不自由な方、妊婦の方などに席を譲らない行為や、子供が靴を履いたまま座席に立つ行為も含まれる。
第2位は「騒々しい会話・はしゃぎまわりなど」。2019年では第5位に留まっていた項目だが、2020年では第2位にまで跳ね上がった。やはり新型コロナウイルス流行による、飛沫感染リスクを鑑み迷惑だと考える人が多かったのだろう。
第3位は「乗降時のマナー」。詳しくは後述するが、具体的には「扉付近から動かない(乗降を妨げる、奥に詰めないなど)」がもっとも多く、「乗降時のマナー」のうち53.2%を占めている。自分が出入りしやすいようにとの考えからだろうが、他の人の乗降には大変迷惑な行為に他ならない。「ドア際族」とでも表現すべきか。
第4位は「周囲に配慮せず咳やくしゃみをする」。2019年では第6位だったのが第4位にまで順位を上げているが、これも「騒々しい会話・はしゃぎまわりなど」同様に新型コロナウイルス流行に絡んだ結果だと思われる。
今回の調査結果に関して、回答者の男女別に見ると、いくつかの違いが確認できる。
男性も女性も第1位と第2位の顔ぶれは変わらない。しかし第1位の項目における女性の値は男性をはるかに上回るものとなっており、男性以上に女性が座席の座り方に関して迷惑を感じている、さらには実際に迷惑行為を受けているであろうことが想像できる。
逆に第2位の「騒々しい会話・はしゃぎまわりなど」は男性の方が高い値を示しているが、これは通勤時間帯における混雑時に利用する人が、女性よりも男性の方が多く、必然的にこのような状況に遭遇するからだろうか。他方、「周囲に配慮せず咳やくしゃみをする」は男性が同率第4位で23.6%なのに対し女性は第3位で29.0%となっており、新型コロナウイルスに関するリスクへの懸念は女性の方が強いことを想起させる。
迷惑行為のうち上位の「座席の座り方」「乗降時のマナー」に関して、細分化をした上でもっとも迷惑を覚える行動を示してもらった結果が次のグラフ。
「座席の座り方」のトップは「座席を詰めて座らない」で5割強。具体的には間を広く取ったり、荷物を置いたり、足を広げる行為などを指す。本人は悪気は無い、あるいは自分の権利だとしてむしろ正当な行為であるとの認識すら持っているのかもしれないが、多くの人は迷惑だと思っていることに違いはない。一方で男性に多い行為として「座りながら足を伸ばす・組む」も2割強となっている。
「乗降時のマナー」では5割強が「扉付近から動かない」。車両に乗り込んだら奥の方まで行けばよいのだが、混雑時には降車駅で降りられなくなるのではとの不安があり、扉付近のポジションを維持してしまう。その気持ちは理解できるが、乗降車する人には邪魔以外の何ものでもないのもまた事実ではある。
なお今回の調査では新型コロナウイルスの流行を受け、「新型コロナウイルス流行で電車利用時に気になること」との設問が用意されている。
トップは「マスク未着用者」、次いで「周囲の人の会話」「隣の人との距離」「車内換気」が続く。「車内換気」はともかく、上位3項目はすべて利用客自身の問題。状況が状況なだけに、十分以上に注意をしてほしいものだ。
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※駅と電車内のマナーに関するアンケート
正式名は「駅と電車内の迷惑行為ランキング」。2020年10月1日から11月30日にかけて日本民営鉄道協会公式サイト上で行われたもので、有効回答数は1908人。男女比、年齢階層別構成比は非公開。協会サイトへアクセスをした人による結果であり、いくぶんなりとも鉄道に興味関心を持つ人による結果であることに留意が必要となる。
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