ガンホー・パズドラの「色弱向けオプション」は“おまけ”か“デザイン”か?
■パズドラの戦略的社会貢献?
ガンホー・オンライン・エンターテイメントが、スマートフォン向けの人気ゲーム「パズル& ドラゴンズ(パズドラ)」について、近日中に予定しているアップデートで、色覚障がい者向けのオプションを搭載することが話題になっていました。
「ガンホー、『パズドラ』に色弱向けオプションを近日実装」というまとめでは、
という意見もありました。当事者としては、ありがたいのは間違いないでしょう。僕も色弱なのかわかりませんが、ゲームなどは見にくい色があるので、純粋に嬉しいです。本当に、気付いて実行する所がすごいですね。
■色弱向けのゲームという存在
スマートフォンゲーム人口って、日本に何千万人いるんでしょうね。
と思っていたら、2012年で1000万人くらい。順調に推移したとして、2013年は1300〜1500万人くらいですかね。そう考えると、色弱者300万人以上って、全体の20%以上じゃないですか?まぁ、色弱の方が全員ゲームをするわけではないので、ゲーム人口全体の数%になるのでしょう。
「色が見にくいから買わない」という人は少ないのかもしれませんが、ユーザーの満足感は大きく変わると予想されます。
また、スマートフォンなどのゲームはすでにレッドオーシャン領域。ペルソナはしっかり考えるとしても、顧客ターゲット市場は広い方がいいですよね。まだまだユニバーサルデ・ザインを考慮したゲームは少ないと思いますので、今年あたりは市場の総取り(?)が可能かもしれませんね。
そもそも、いわゆるUX(ユーザー・エクスペリエンス)を考えた時に、ハンディのある方々を考慮しないというのも、視野が狭いなと思うのです。それは、どこもやっていないのでしょうがない部分があります。
「御社のCSRコンテンツが未熟であるたった1つの理由(と、飛躍的に成長させるシンプルなコツ)」という記事でも書きましたが、“万人ウケ”するコミュニケーションやマーケティングは存在しません。だからこそ、こういった領域の企業活動は通常の顧客とのコミュニケーションとは別枠でする必要があるのかもしれません。
ただ今回のパズドラの事例が先行事例としてできたので、今後のゲーム業界の動向に注目していきます。
■ユニバーサル・デザインとは何か
ユニバーサル・デザインとは、文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(デザイン)のこと。
考え方としては、「ノーマライゼーション」(障害を持っていても健常者と均等に当たり前に生活できるような社会の実現)、「アクセシビリティ、バリアフリー」(社会的弱者が、社会生活に参加する上で生活の支障となる物理的な障害や、精神的な障壁を取り除くための施策、若しくは具体的に障害を取り除いた事物および状態を指す語)にも近い考え方です。
「社会貢献のためにユニバーサル・デザインを採用します」というより、「色弱の方でも楽しめます」という価値を作る事が重要です。ただの社会貢献は企業に利益をもたらしにくいのですが、今回のガンホーの取り組みは、実際ウェブで「色弱だけど買います」というコメントもあるわけですし、新規顧客獲得にもつながるアクションです
「CSRが戦略的マーケティングのカギになるのか?「コトラー8つの成長戦略」」という記事でも書きましたが、世界のマーケティングの権威でも、その“社会貢献的なマーケティング”は企業活動において重要度が増してきていると言っています。
ガンホー自体のCSR(企業の社会的責任)活動は皆無なようですが、こういった取り組みはCSRコンテンツとして素晴らしいものだと思うのです。ご本人たちはこれがCSR活動だと認識できないのでしょうね。きちんとコンテンツ化できれば、テック系に強いNPO関係者などがここぞとばかりに絶讃するでしょうに。
拙著『この数字で世界経済のことが10倍わかる--経済のモノサシと社会のモノサシ』でも書いたのですが、通常の企業活動にも社会的側面は必ずあり、企業はそれに気付く必要があります。
ゲーム業界の経営戦略として「色弱なユーザーも楽しめる」という、積極的なポジショニング戦略を取る所は出てくるのでしょうか。ゲーム業界はあまり詳しくないので、詳しい人がいらっしゃいましたら、知識の共有としてコメントをいただけると幸いです。