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FRBの早期利下げ観測は後退、やはり年末か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 FRBのジェファーソン副議長は20日、このところ複数のインフレ指標で鎮静化が示されていることは喜ばしいが、インフレ率が2%回帰への持続可能な軌道に戻ったかを判断するには時期尚早だと述べた。

 バー副議長(金融規制担当)も20日、年初来数カ月間の米国のインフレ指標は「期待外れ」で、FRBが金融政策を緩和するためには必要な証拠が不足していると述べた。

 アトランタ地区連銀のボスティック総裁は20日、インフレ率が目標の2%に戻る軌道に乗っているとFRBが確信するにはしばらく時間がかかると述べた。

 このようにFRB高官から相次いで、今後の利下げの可能性について慎重な姿勢をみせていた。これは個別の意見ではあるが、市場が期待先行となってしまいがちな「利下げ」について、FRBが過度な期待は禁物であることを示したといえる。  

 21日にはFRBのウォラー理事が、追加利上げはおそらく必要ないと信じていると述べた。物価の軟化が今後3~5か月間続けば、年末の利下げ実施も検討できるだろうと。私もFRBの利下げは年末かとみているが、米大統領選挙と重なるのでそれによる影響も考慮する必要がある。

 ECBについては6月9日の定例理事会において、利下げが議論されることもすでにアナウンスしている。ただし、その後は慎重となる可能性も出てきた。

 イングランド銀行も6月からの利下げが意識されているが、こちらはやや不透明感も出てきている。

 欧州の中央銀行が利下げを実施して、米国も追随というったシナリオを市場は描いていた可能性もあるが、いずれにしてもそれは今後の物価指標の動向次第となりそうである。

 少なくともFRBが7月に利下げする可能性は以前に比べて低下してきたと思われる。これを受けて円安が進み、ドル円は156円台に上昇してきている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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