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新型「Ninja 1000」が電子制御化され、より快適で安全なスーパースポーツツアラーへと進化

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
KAWASAKI Ninja1000

カワサキは海外向けモデルのスポーツツアラー「Ninja 1000 (Z1000SX)」の最新モデルをインターモト2016において発表した。

Ninja1000(北米・アジアでの名称/欧州ではZ1000SX)は「ツーリングもできるスーパースポーツ」として2011年に登場。2014モデルではマイナーチェンジにより、トラクションコントロールやリモートプリロード調節式のリアショックを採用するなどの変更が加えられた。

今回の新型は2014年以来3年ぶりのフルモデルチェンジとなる。

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アグレッシブにフルモデルチェンジ

一見すると従来とあまり変わらない気もするが、実はオールニューのボディワークを採用。LEDヘッドランプとの組み合わせにより、さらにシャープさを増したアグレッシブなデザインとなり、よりZX-10Rのイメージに近い感じだ。

水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ1,043ccエンジンは従来型をベースにセッティングを見直され、一層パワフルかつスムーズな出力特性を得ることで、コントロール性と快適性も高められている。スペック的にも最高出力142psと従来モデル(日本向け仕様)より5ps高い数値が与えられている。

また、継続してアシスト&スリッパークラッチを標準で装備。クラッチ機構に2種類のカムを設けることで、クラッチレバーの操作力を軽減するとともに、急なシフトダウン時などは過度なエンジンブレーキを適度に逃がすことで、リアタイヤのホッピングやスリップを低減する仕組みであり、ロングツーリングでの快適性や安全性にも寄与するものだ。

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一層進化した電子制御

電子制御も一層進化した。ライダーの好みや走行状況によって、フルパワーとローパワーの2モードから任意に出力特性を選択できるパワーモード機能を搭載。

また、新たにボッシュ製IMU(慣性計測装置)の解析データを活用したカワサキ独自のエンジン&シャーシの総合マネージメントパッケージ、KCMF(カワサキ・コーナリング・マネジメント・ファンクション)を搭載し、コーナリング中のマシンの挙動をモニタリングすることで、エンジンパワーやブレーキ効力を常に最適な状態にコントロールする。

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その他、選択可能な3種類のモードを備えたKTRC(トラクション制御、ウイリー制御)とKIBS (ピッチング制御、旋回中のブレーキ制御)を組み合わせることで、スポーツライディングから滑りやすい路面での走行まで様々な状況におけるライディングをサポートしてくれる。

ちなみにKIBSとはカワサキ独自のスーパースポーツ用ブレーキマネージメントシステムのこと。

例えば、旋回中にブレーキをかけると車体は起き上がる挙動をみせるが、KIBSはこの挙動を抑える高度な油圧制御も行うもの。これにより、最小限の介入で効果的かつ安定したブレーキングが可能になっている。コーナリングABSの進化版といったところか。

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スーパースポーツ由来の「走りのポテンシャル」

新型Ninja1000の電子デバイスは、スーパースポーツZX-10R由来ということで、走りのポテンシャルも大いに期待できそうだ。

車体面では従来モデルを踏襲する高剛性のアルミニウムフレームを採用し、マスの集中化を高い次元で実現し、シャープな旋回性能と安定感のあるハンドリングを両立。

サスペンションも従来どおりフロントに倒立タイプ、リアにはホリゾンタルバックリンクサスペンションを備え、快適な乗り心地と路面追従性を確保。

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ブレーキにはラジアルポンプマスターシリンダーとラジアルマウントのモノブロックキャリパー、ペタルディスク、そしてABSを組み合わせるなど、スポーツモデルとしての強力な制動性能とツアラーとしての万全の安全性を両立している。

シートもライダー側とタンデム側とも快適性を向上した。ライダー側は座面を大きくし、サポート性を高めることで長時間のライディングでの快適性を高めつつ、タンデムシートもクッションの厚みを増すと同時に前端部を上げてパッセンジャーが前に滑りにくい形状とするなど、エルゴノミクスを追及。

それでいてシート高は815mmと従来よりも5mmほど下げられている。

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充実のユーティリティ

ユーティリティもさらに充実。純正パニアケースを簡単に装着できるグラブバーを標準装備とし、パニアケースを外した状態でもグラブバーがデザインとして自然に溶けこむ形状とした。

加えてツーリングでの利便性を高める豊富なアクセサリー群も用意。GIVI製のパニアケース(容量28リットル)&トップケース(容量47リットル)、ローシート、グリップヒーター、DC電源ソケット、その他各種スライダーなど、高い質感とマッチングの良さは純正ならではだ。

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デュアルヘッドランプもLED化され、大幅な光量アップに加え照射範囲を前方、側方ともに1.5倍程度まで拡げるなど夜間の安全性も高められている。

また、メーターパネルも新設計となり、大径アナログタコメーターを中心にワーニングランプと多機能液晶パネルを左右に振り分けた現代的なデザインとなっている。

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“スーパースポーツツアラー”に進化を遂げた“Ninja1000”

ツーリングからスポーツ走行まで、オールマイティに優れた性能が評価され日本でも人気の高いNinja1000。

最新型ではエンジンが熟成され、スーパーバイクで鍛えられた電子制御テクノロジーを本格投入。外装もよりスタイリッシュになり、カウル類やシートも見直されて快適性も向上、パニアケースの機能向上など利便性も高められた。

まさに全方位的に進化を遂げた“スーパースポーツツアラー”の登場である。

日本での販売・価格は未定とのことだが、いずれ近いうちに明らかになるはずだ。

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出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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