「すぐやる技術」……【2分】でできることは「すぐやる」
わかっちゃいるけれど、なかなかできない。すぐにやればいいのに、先延ばしにしてしまうようなことはありませんか。仕事上においても、日常生活においても、今すぐやっておけば気持ちが楽になるのに、ついつい先延ばしにしてしまうことってありますよね。私はよくあります。手帳やスマホでタスク管理していても、その管理自体を怠ってしまうこともあります。
仕事を「先送り」せず、すぐやる習慣を身に着ける考え方で、先延ばしをするデメリット、そして「すぐやる」ための考え方を書きました。しかし、頭ではわかっていてもなかなか克服できないことがあります。そこで私がいつも使っている技術を紹介します。それが「スケールテクニック」です。
「スケールテクニック」とは、感覚でとらえている物事を数値化することを言います。「その作業にどのくらいの時間がかかるか」を客観的に見積もり、定量表現するのです。
たとえば、上司から「お客様のアポイント」をとってくれと言われたとします。「わかりました」と答えたものの、なかなかやれません。電話しようとしても、そのお客様の電話番号を調べているうちに他のメールを見たり、引き出しの整理をしたり、午前中にやりかけた資料作成の続きをしたりします。そのうちに「急ぎの仕事があるんだけど、手伝ってくれないか」と同僚に言われて手伝っているうちに、夜遅くまでかかってしまった。そうこうしているうちに翌日となり、一週間が経過し、一ヶ月が経過したりする。そのような状態で放置しておき、上司に指摘されたらどうするでしょう。
「そういえば、お客様のアポイントってどうなった?」
「あ、申し訳ありません。まだできていないのですぐにやります」
「まだできていない? ずいぶん前の話だったろう」
「ここ2週間ぐらい、なかなか時間がとれなくて……。でも、今からすぐにやります」
このように言われて、「なかなか時間がとれなかったのならしょうがないな」などと思うほど上司はバカではありません。間違いなく「そんなの言い訳だ。アポイントぐらい、すぐにとれるだろう」と瞬間的に思います。それを口に出して表現するかどうかは、その上司次第です。相手が新人ならともかく、先延ばしの習慣を克服できない部下に、もう慣れてしまっています。ですからあきれた様子で、「だったらすぐにアポイントとってくれよ」とため息混じりに言うのですが、部下は上司の気持ちを察することができません。「わかりました、すぐにやります」部下はそう言うだけです。そしてこう思うでしょう。
「今回は怒られなかった。ぎりぎりセーフだったということか」
上司が指摘してこなかったのはもう諦めているからです。にもかかわらず、「これぐらい先延ばししても大丈夫なら、次に同じようなことがあっても許されるな」と勘違いします。
こうなると部下はどんどん怠惰になっていきます。上司から「諦められている」のに、上司から「許されている」と思い込むからです。周囲から寄せられるはずの「信頼」という財産はいつまで経っても蓄積されません。すぐやればいいことなのに、常に先延ばしをしているだけで、その人の価値(バリュー)がゼロに近づいていくのです。とても残念なことですね。
だからこそ、感覚でとらえていた事柄を数値化する習慣を身につけましょう。最初のうちはうまく時間を見積もることができなくても、あきらめないでください。間違えてもいいから、とにかくアウトプットします。
「この資料を作成するには、2時間ぐらいはかかるかな」
「靴を磨くのに、20分はかかる気がする」
「机の上を整理するのに30分はかかるだろうか」
「味噌汁を作るのに、15分はかかるに違いない」
どんなことでも、数値的な時間でとらえるのです。そして実際に計測して学習していきます。
「こういった資料を作成するには、4時間はかかるんだ」
「靴を磨くなんて、5分で終わるじゃないか」
「机の上の整理整頓だけだったら10分で終わった」
「豆腐とわかめの味噌汁だったら7分程度だった」
このように、仮説を立てて検証していく習慣をつけていきます。「分からないからやらない」「誰かに正しい答えを聞いてからじゃないとできない」と言っていたら、いつまでも精度は上がりません。トレーニングを繰り返すことで、「スケールテクニック」の精度は高まります。感覚を数値化すれば行動に対する心理ハードルが低くなります。つまり従来の「感覚」が修正されていくのです。
さらに、ベストセラー『Getting Things Done』に
「2分でやれることは今すぐやる」
と書いてあるように、スケールテクニックをして「2分」程度の作業であれば、その作業をいつやるか決める前に、その場で「すぐやる」のです。この「2分」の感覚を身につけておくと、非常に便利です。タスク管理が収斂されていきます。
「手帳に明日の予定を書こう――。2分以内で終わりそうだ」
「内線をかけて、大島さんに仕事の依頼をしたい――。2分以内で終わりそうだ」
「お客様を訪問する前に提案資料をざっと確認しておこう――。2分以内で終わりそうだ」
「LINEを使って、妻に『いつも愛してる』と書こう――。2分以内で終わりそうだ」
「5分」や「10分」ならともかく、「2分」であれば、研ぎ澄まされた感覚――超集中状態「ゾーン」に入ることができていきます。(※超集中状態「ゾーン」に入る方法)ひとたび「ゾーン」に入ってしまえば、時間間隔はゆがみ、物理的な時間である「2分」が「2分」ではなくなり、感情のコントロールをしながらタスク処理ができるようになります。
1時間や2時間かかる作業でも、その作業をいくつかの「2分間」で処理できるタスクに分解することで、先送りの習慣から抜け出すことができるでしょう。
さらに――。
「息抜き」についても考えてみたいと思います。仕事の最中、たまに息抜きをしたくなるときがありますよね。その息抜きの時間もスケールテクニックしてみるのもいいでしょう。その息抜きが「2分」以上かかるのであれば、先送りという選択をするのです。
「AKB48の新曲の動画をユーチューブでチェックしたい――。2分以上かかりそうだ。後にしようか」
「フェイスブックの友達がどんな記事をアップしているか見てみたい――。2分以上かかりそうだ。後にしようか」
「サッカー、アジアカップの結果をネットで調べたい――。2分以内で終わりそうだから、別にいいか」
……このような感じです。「2分」の時間感覚を身につけると、どんな作業を「すぐやる」のか、そして「先送りする」のかの判断基準が身についてきます。
人間が持っている「感覚」は意外と曖昧なものですから、どんな小さなことでもスケールテクニックを使えば「それほど時間がかからない」と学習できていくことでしょう。ついつい先延ばしをしてしまう人は、ぜひ「スケールテクニック」を試してみてください。そして「2分」以内で終わりそうな作業なら、その場で「すぐやる」癖をつけてみましょう。