Yahoo!ニュース

すごいタイブレークを見た! 近江を倒した彦根東が、延長15回で涙

森本栄浩毎日放送アナウンサー
史上まれに見る死闘は延長15回タイブレークで彦根総合が彦根東を破った(筆者撮影)

 まずは、25日の滋賀大会準々決勝、マイネットスタジアム皇子山のスコアボードをご覧いただきたい。

2-2で突入したタイブレークは、彦根勢同士仲良く?同じ数字を並べたが、15回2死から彦根総合が3点を入れた(筆者撮影)
2-2で突入したタイブレークは、彦根勢同士仲良く?同じ数字を並べたが、15回2死から彦根総合が3点を入れた(筆者撮影)

 2-2で延長に突入し、13回からタイブレークに入った。12回まで2-2が、最終スコア10-9。いかに激しい攻防だったかを物語っている。

近江を倒した彦根東が土壇場で追いつく

 前日、今春センバツ準優勝で、2年連続夏の甲子園4強の近江を倒した彦根東が、土壇場で追いつく。試合は、初の甲子園出場を狙う彦根総合が9回まで1点をリードしていたが、近江戦で終盤の逆転劇を演じていた彦根東は、9回2死からその本領を発揮した。9回途中、先発左腕・野下陽祐(2年)を救援した彦根総合の速球派・勝田新一朗(2年)から、彦根東の6番・谷口瑠都(2年)が同点打を放つと、そのまま試合は延長にもつれ込み、淡々と経過していった。

13回に彦根東一挙4点も追いつかれる

 12回裏の2死満塁を切り抜けた彦根東は、13回、再登板して疲れの見える野下を攻め、犠飛とスクイズ、4番・田中大貴(2年)の適時二塁打で一気に4点を奪う。これで勝負あったかと思われたが、彦根総合も7番・森田櫂(2年)の満塁走者一掃打と、彦根東のエース・山田幹太(2年=主将)の暴投で追いついた。14回は彦根東がバントの送球間に走者が本塁を陥れる好走塁で1点をもぎ取るも、彦根総合は相手の内外野の連係ミスで追いつき、ついに14回でも決着はつかなかった。

15回、2点を追う彦根総合は2死から逆転サヨナラ

 15回に入ると、200球を超えた野下に疲労の色が濃くなり、自らのバント処理の失策と2番・松崎真詞(2年)の適時打で2点を奪った彦根東が、またも突き放した。

15回2死満塁から彦根総合の田代が逆転サヨナラ打を放つ。宮崎監督は「チームで一番、スイングする選手。手もマメだらけ」とヒーローを褒めた(筆者撮影)
15回2死満塁から彦根総合の田代が逆転サヨナラ打を放つ。宮崎監督は「チームで一番、スイングする選手。手もマメだらけ」とヒーローを褒めた(筆者撮影)

 彦根東は15回から堀井柊真(2年)をマウンドへ送り、2死満塁までこぎつけたが、1番・秋山昌広(1年)にフルカウントから痛恨の押し出し四球で1点差。続く2番・田代奏仁(2年)が左越えに逆転サヨナラ打を放って、4時間を超える死闘にピリオドを打った(タイトル写真)。センバツにつながる試合だけに明暗が分かれるのは仕方ないが、死力を尽くした両校選手に拍手を送りたい。

あとストライク一つで勝利も…

 両校とも、あと1死、あとストライク一つで勝利という場面が何度かあり、秋の新チームスタート時にしてはまれに見るスリリングな大熱戦だった。彦根東は12回の2死満塁を切り抜けたのを皮切りに、追いつかれたあと毎回、一打サヨナラの場面を気力で振り切るなど、文武両道の名門らしさが随所に出て、感動すら覚えた。タイブレークに入ってからは彦根総合がかなり押されていたが、北大津を春夏計6回、甲子園に導いた宮崎裕也監督(61)が、「この代で甲子園へという思いは強い」と話すだけあって選手の試合経験は豊富で、追い詰められても慌てず、最後までしぶとかった。

近江の甲子園を断ったのは5年ぶり

 敗れた彦根東の松林基之監督(50)は、「今日、勝ったら近江を倒した値打ちがあったのに」と残念がったが、その価値はまったく損なわれるものではない。

14回まで力投した彦根東のエース・山田。相手の野下は同じ彦根東中出身で最後はお互い気力だけで投げていた。打たれた堀井も2三振を奪っていて、松林監督は「試合経験が少なかっただけ」とかばった(筆者撮影)
14回まで力投した彦根東のエース・山田。相手の野下は同じ彦根東中出身で最後はお互い気力だけで投げていた。打たれた堀井も2三振を奪っていて、松林監督は「試合経験が少なかっただけ」とかばった(筆者撮影)

 近年の滋賀は近江1強となっているが、5年前の夏に近江を破って甲子園に出たのが彦根東。現在、慶大を牽引するエース・増居翔太と正遊撃手の朝日晴人(ともに4年)がいて、二人の春夏甲子園での活躍は記憶に新しい。その後、近江は県内公式戦で何試合か負けているが、甲子園への道を断たれる県内での敗戦はその時以来、5年ぶりである。近江とは、夏の大会に出られない3年生の引退記念試合を行うなど、良きライバル関係にある。

「近江の敗戦はショック」と宮崎監督

 一方、彦根総合の宮崎監督も北大津時代、近江、彦根東とは激闘を繰り広げてきた。9回に追いつかれた場面も、「そこがほかの公立とは違うところ。トリッキーな走塁も警戒していたがやられた」と脱帽の様子。それでも激闘を制して「チーム力が上がる試合だった」と収穫も多かったようだ。次戦の近江兄弟社に勝てば、初の近畿大会出場が決まる。ただ、近江を直接対決で倒したかった思いは強かったようで、「昨日、目の前で負けてショックだった」と話した。同じ彦根市内にある両校だけでなく、「打倒!近江」を目標に滋賀のチームが力をつけている。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

森本栄浩の最近の記事