アメリカが考える「アジアの重要パートナー国」トップは日本、次いで中国
アメリカにおけるアジアで最重要パートナー国とは
今もなお世界最大と評しても良い影響力を持つアメリカ合衆国。その国においてアジア地域におけるもっとも重要なパートナーであると意識している国は、一体どこの国だろうか。外務省が定点観測的に調査発表している、アメリカ合衆国における対日調査結果から確認していく。
次のグラフは「アジア地域の中でどの国が、アメリカ・地域にとって最も重要なパートナーであるか」との設問に、択一で答えてもらった結果の推移。主要国のみを抽出している。
一般人は2011年になって初めて、有識者では2010年に日中の逆転現象が起きた。これは中国の人口・資源を背景にした経済成長に伴う影響力の強化が原因。ところが2012年になると、一般人では日中の立ち位置が再び逆転し、日本が上位につき、有識者でも順位の変化こそないものの両国の差は急激に縮まった。この変動の理由は、米中関係の変化(悪化)に伴い、相対的に日本への政治的側面での再評価が行われ、さらに2011年3月に発生した東日本大地震・震災に伴う米軍の救援作戦「オペレーション・トモダチ」によるものと考えられる。
その翌年の2013年では、中国の動きは一般では横ばい、有識者では大きな下落を示している。他方日本は一般人では大きく下落し、再びトップの座を中国に明け渡している。有識者ではほぼ横ばいで、中国との差は4%ポイントにまで縮小した。この2013年の動きは大きく報じられたので、記憶に新しい人も多いはず。
直近2014年になると一般人・有識者共に中国が大きく後退し、日本が競り上がり、順位は再び日本がトップにつく。特に有識者における変化は著しく、日本がプラス19%ポイント、中国はマイナス19%ポイントとなり、ほぼ中国の回答率の1/3が日本に移行した形となっている。
日中に対するアメリカのパートナー認識の理由を探る
今世紀に入り中国の値が大きく上昇した原因は「経済成長に伴う影響力の強化」。その裏付けをしていく。まずは一般人において、「日本」「中国」それぞれをベストパートナーとして選んだ回答者に、その理由を自由回答で答えてもらい、上位5位の推移を見たものが次のグラフ。日本は「政治的結びつき」「貿易・経済関係」が上位にあるのに対し、中国では以前は「国の特質(人口等)」が上位にあり、2005年前後以降は「貿易・経済関係」が大きく伸びている。特に2013年では異様なまでの上昇ぶりを示す形となった。
日本では「政治的結びつき」が2012年以降上昇を続け、2014年ではついに7割に届く直前までとなった。2013年以降回答手法が変わったのも一因だが、中国との関係の微妙な変化を受け、相対的に重要な位置づけを示す形となっている。一方「技術力」が2006年をピークに漸減し続けているのが気になる。
他方中国では各項目が横ばい、減少にあるのに対し、唯一「貿易・経済関係」が跳ね上がっている。要は多くの一般人に取り、中国がアジアでの最重要パートナーである理由は、経済関係に寄るところが大きい。もっとも2014年では「政治的結びつき」「国の特質(人口など)」も上昇している。その分、「技術力」は2013年以降は複数回答形式にも関わらず、大きく値を下げてしまっている。
有識者においても直近2014年分では一般人と大きな認識の違いは無い。
特に有識者の認識では、中国は2013年に「貿易・経済関係」の値が2倍以上に増加しており、同国の「経済成長に伴う影響力の強化」がアメリカにおける立ち位置の強化の裏付けであることが、改めて認識できる(回答形式の変更も多分な要因)。同時に「政治的結びつき」も上昇しており、対北朝鮮関連における連携で、中国は欠かせない存在であるとの認識が、少なくとも2012年よりは増加したようだ。他方、2012年に大きく上昇した「技術力」の値は大きく下落しているのも目に留まる。
2014年に入ってもその動きはさほど変わらない。「貿易・経済関係」はいくぶん減ったが「政治的結びつき」「国の特質(人口等)」は増加を継続している。広大な人口を背景にした高い経済的な結びつきを認識し、政治的な影響力の強化も認めつつある。
日本においては一般人同様、「技術力」の中期的な低下が気になる。他方、「政治的結びつき」「貿易・経済関係」、さらには「国民性・文化」の値が2013年以降大きく跳ねている。「貿易・経済関係」は2013年の大幅な伸びから直近2014年では再び下落したが、それでも震災前と比べれば高い水準にある。
ざっとまとめるとアジアにおける最重要パートナーとしての認識で、一般人は「日本…政治や経済」「中国…経済や政治」、有識者は「日本…政治や経済」「中国…経済や人口の多さ」を特に重要視して選択している、というところだろう。
2016年にはアメリカで大統領選挙が行われる。現状では現在政権を担っている民主党では無く、共和党候補者による大統領が誕生する可能性が高い。そのような環境の中で、同国における対日本をはじめとしたアジアへの視線はどのような変化をとげていくのか。来年以降の調査結果の動向に注目したいところだ。
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