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イチロー、 真剣勝負の公式戦登録枠を営業優先で「お取り置き」されながら絶不調の無念

豊浦彰太郎Baseball Writer
実力より興行面での効果を評価されて登録されるのは、彼としても無念だろう。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

イチローが大不振のまま米でのオープン戦を閉じようとしている。本来戦って勝ち取るべき開幕登録枠を興行上の理由で「お取り置き」されていることに、結果で応えたいところだっただけに無念だ。

アリゾナでイチローのプレーを見届けられず

イチローを追いかけアリゾナまでやって来た。現地滞在1日半の弾丸スケジュールだ。初日は飛行機の若干の遅れもあり、霧雨が降り続くピオリア・スポーツ・コンプレックスに到着するとすでに4回裏が終了しており、ちょうどイチローが退場するところだったことはすでに述べた。

そして、2日目も試練だった。午後1時5分から、ホワイトソックスの本拠地グランデールでのゲームが予定されていた。スプリングトレーニングの場合は、ベテランは遠征には帯同しないことも多いのだけれど、イチローの場合は出場するだろうと踏んでいた。マリナーズがキャンプを張るピオリアとグランデールは距離的にも近く、現在のイチローは昨年5月以降の実戦のブランクを取り返す必要があり、かつ東京への出発(現地14日)を前に1打席でも多くこなしておく必要があると思われたからだ。

しかし、試合が行われる予定だったグランデールのキャメルバック・ランチにぼくが到着する頃には、懸念されていた雨はかなり強くなっていた。そして、ウェブニュースはイチローのその日の遠征帯同見合わせを報じていた。悪コンディションでの出場による故障の懸念と、あまりにも成績が上がってこない(その時点で打率.087)ため一息つかせることが必要とマリナーズ幹部が考えたことが理由だろうか。

「イチロー出場せず」だけでも相当失望ものだが、次はゲームの雨天中止の報が届いて来た。泣きっ面に蜂だ。

試合が行われる予定だったグランデールの球場に到着する頃には土砂降りになった
試合が行われる予定だったグランデールの球場に到着する頃には土砂降りになった

この日はナイトゲームでソルトリバーフィールズでのダイヤモンドバックス対レンジャーズ戦の観戦も予定していたので、気を取り直しそれだけでも見届けて帰ろうと自分に言い聞かせた。そころがそのナイトゲームも降雨が激しくなり、5回表途中で雨天中止となった。アリゾナでのスプリングトレーニング観戦もかなり回数を重ねてきたが、これだけ雨に祟られたのは初めてだ。

ダイヤモンドバックス対レンジャーズ戦の前には美しい虹が現れたが、この試合も結局5回途中で中止に
ダイヤモンドバックス対レンジャーズ戦の前には美しい虹が現れたが、この試合も結局5回途中で中止に

故障者続出でもイチローの登録継続は?

こっちの不運はともかく、イチローの状態は深刻だ。23打数で打率.087、出塁率.192、OPS.279は、本来ならリリースされてしかるべき状態だ。日本メディアの報道には、マリナーズに故障者が続けて発生していることから、登録枠が日本での開幕戦シリーズでの28から通常の25に減る米本土での開幕後もイチローの登録継続の可能性があると報じるものもある。

しかし、これはあまりにも楽観的すぎる。故障者による枠の発生云々以前に、イチロー本人がまず最低限の戦力でなければ話にならない。東京での開幕戦シリーズでの選手登録にしても、イチローのチーム内での戦力的位置付けがたまたま26〜28番目であるということではない。東京開幕戦シリーズでの興行面での目玉がどうしても欲しい主催者側の意向が大きく働いた結果の特別待遇であることは間違いないのだ。どのメディアもあからさまには報道しないが、これは「不都合な真実」だろう。

特別待遇に応えられぬジレンマ

45歳になってもまだ現役続行への強い意欲を見せるイチローが、マイナー契約からふた回り以上も若い選手たちとガチで争って東京開幕戦特別枠を勝ち取ったなら、ただただ敬意を表するしかない。

しかし、現実には、実力が全てのこの世界で興行上の理由から最初から枠を「お取り置き」するという本来公式戦ではあってはならないことが行われているのだ。イチロー本人もその異常さが分からぬはずはない。彼は、実力よりも集客力を買われ特別待遇されることはそのプライドが許さないはずで、それをオープン戦での結果で打ち消そうとしていたのだろう。だとすると、現在の不成績は内心忸怩たる思いでは済まないほどのものであるはずだ。イチローはそのストイックなダンディズムの点でも追い込まれてしまった。

本文中の写真は豊浦彰太郎撮影

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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