二・二六事件の史跡側に佇むピースフルなカフェ。【東京都渋谷区】
1936年(昭和11年)2月26日未明に勃発した二・二六事件。戦前の日本を揺るがす一大クーデター事件にかかわる史跡が渋谷の一角にあります。
史跡があるのは、今の渋谷合同庁舎のある辺り。この地にはかつて旧東京陸軍刑務所があり、二・二六事件の首謀者の青年将校らがここで処刑されたそう。彼らと被害者を慰霊する観音像が NHKを挟んで井の頭通から公園通りに向かう坂の右手にひっそり佇んでいます。慰霊碑を設計した川元良一氏は銀座屈指のレトロな「奥野ビル」(1932年竣工)や「九段会館」(1934年竣工)を手がけた建築家。観音像を作ったのは青森県弘前出身の彫刻家の三國慶一氏のよう。
慰霊碑の右手にあるヴィンテージマンションは、昔からお世話になっているデザイン会社が以前事務所を構えていたこともあり、個人的に懐かしい場所です。このマンションの中には、知らないとなかなか気付きにくい小さなカフェがあります。目印は通りに控え目に出ている小さな看板のみ。
カフェの名は「HOTORI」。近くに目立った水辺はないけれど、HPに「あなたの心の底のみずうみが潤いますように」という素敵な一文が。きっと、訪れる人の心の底にある湖のほとり…なのですね。
お店はふたり掛けのテーブル席が数席とカウンター席だけのこじんまりとアノニマスな空間。なのに なぜか不思議なほど心やすらぐ気配が漂っています。
プリンや月2回のあんこの日が人気のようですが、サンドイッチや日替わりランチも家庭的で美味しそう。
井の頭通り方面に開いた窓から沁み込んでくる光も心地よく、ふ~っとひとり静かな時間を満喫できます。わさわさした仕事の合間に一寸立ち寄っただけでも、気持ちがスッと整うピースフルなカフェです。
冬晴れのうららかな午後の窓辺を眺めながら、かつてこの界隈に恐ろしい銃声が響きわたっていたとはどうしても信じられず。ちなみに、青年将校らの刑の執行当日、今の代々木公園にあった代々木練兵場では、銃声をかき消さんと小部隊の演習がザッザと行われていたのだとか。その後、昭和の日本は激動の戦争モードに突入していくわけですが…。
奇しくもロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まった2022年2月。2月26日には渋谷ハチ公前に、ロシア軍への抗議を訴える人々が押し寄せました。平和なひとときを一瞬で奪う戦争に深い深い溜息が出ます。世界中の人の心の奥底に潜む湖が、ほっとやさしく潤って、1日も早く平和が戻ってきますように。
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HOTORI
東京都渋谷区宇田川町6-11
原宿パークマンション109号室
TEL 03-6416-4904
営業時間:12:00~18:30(LO18:00)
定休日:第一・第三月曜日、土曜日
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