家族10人がハマスに拉致された女性は訴える「私は今生き地獄にいる。でも壁の向こうはもっと酷い地獄」
イスラム組織ハマスは、ガザ地区で拘束している200名以上の人質を「人間の盾」として停戦に向けた交渉カードとして使っている。英BBCが、20日、ハマスが即時停戦と引き換えに人質の一部解放を申し出ていると報じた。
8bitNewsでは、イスラエルと日本のダブル、ミエル・イチハラさんの協力を得て、現地と繋ぎインタビューを重ねている。
家族や親族、友人の命の安全、一刻も早い解放を願って、当事者たちが懸命な発信を続けている。
前回の記事では、21歳と18歳の娘と息子がハマスに拉致された両親のインタビューを掲載したが、今回は、親族10名が拉致されたと見られる女性の訴えをお伝えする。動画と合わせてぜひ読んでいただきたい。
テルアビブ在住のイスラエル人、シーラ・ハブロンさん、27歳。
彼女がロンドンに旅行中、イスラエル南部のキブツに集まっていた親族10名が拉致され、行方不明になっている。その中には子ども3人が含まれている。
親族たちの多くはEU各国の国籍で、叔母たちはアフリカでの農業支援や飢餓貧困対策のNGOを運営するなど、人道支援活動をしてきた人たち。これまでの戦争でもPTSDに悩む子供のケアや食糧支援など、平和活動を続けてきた。
今回、その人たちが拉致された。
シーラさんは「私の日常は今、生き地獄。でも、壁の向こうはもっと地獄の中を生きている。これは政治的な話ではない。人道の問題なのです」と語り、世界の市民が政治を超えて連帯し、今奪われようとしているすべての人の命を守ってほしいと訴えかけている。
シーラさんのインタビューの全編を公開する。
■10人のうち3人は子供 「戦争犯罪」として裁かれるべき
堀・ミエル)
まずどんな状況で拉致されたのかを教えてください。
シーラ)
まず私の名前はシーラ・ハブロンと申します。27歳でテルアビブ在住です。大学生で、映画や映像について学んでいます。
今、親族のうち10人が拉致されていてその内の6人が確実に拉致されていると、国の方から連絡を受けましたが、その他4人も拉致されていると想定しています。
10月7日、今から10日前に、イスラエルの南部の方がカザからのミサイル攻撃を受け始めたというニュースを見て、すぐに家族と連絡を取りました。
南部がミサイル攻撃されているだけではなく、テロリストの侵入を受けているとすぐ知りました。
南部には家族が住んでいるんですけれども、その時期はちょうどその村のキブツの70周年で、ゲストとして訪れていた親戚もいたので、住んでいた人と、住んでいなかった人どちらも拉致されてしまいました。
私はちょうどロンドンの方にいたんですけど父から連絡が来て、9時から親族とは連絡が取れない状態になってしると知りました。「これからシェルターに避難する」という連絡が最後で、それ以降連絡をとることができていません。
元々は10人が拉致されてるという想定でしたが、最近そのうちの6人の拉致が確定されたという連絡が政府から来たので、残りの4人も拉致されていると信じています。
また、叔父の携帯電話の位置情報がガザを示していると言うのも根拠の一つです。6人だけではなく、残りの4人も拉致されたと考えています。
■平和活動を続けてきた叔母たち その彼女たちが拉致された
堀・ミエル)
ご親族の皆さんはどのような方々なのですか?
シーラ)
親族たちは、EUの国籍を何人か持っていて例えば叔母はドイツ国籍を所有しています。叔母以外にも、ドイツ、オーストリア、イタリア国籍を持っています。叔母はドイツで「フェアプラネット」というNGOを運営しています。
世界の食料問題、貧困問題を解決するためにアフリカの農家さんたちとしっかりと自分の力で農作物を育てるようになるため、現地の人たちが自分たちで食料問題を解決できるためのプロジェクトを運営している本当に素晴らしい女性です。
もう1人の叔母はソーシャルワーカーです。
ガザ地区の周りのイスラエル側の集落だったりキブツに関しては昔から技からの攻撃が多いので、子供も大人もPTSDを患っている方が多くいらっしゃいます。その方たちの治療に人生を捧げてきた叔母でした。
子供に向けたPTSDや、恐怖との向き合い方についての本も書いていて、トラウマ治療というジャンルが専門です。ガザ地区近辺の人たちがもっと恐怖心のない生活を送れることができるよう人生を捧げてきた人です。
とてもシンプルで、純粋な人たちで、もちろん無罪の、ただの一般市民です。
でも、1人1人がとても特別な存在です。私達の一族は人道、平和、和解、思いやりこれを一番のテーマとしてずっと生きてきました。
これは性格だったり、人間性という意味だけではなく、私達のキャリアも一族として「人道」と「平和」に溢れている人生です。
知り合いにも、本当に近い友達にもパレスチナ人がたくさんいましたし、今でもいます。ずっと「和解と平和」を信じて生きてきました。
■人道で連帯すべきで、これは「非政治的」な問題
堀・ミエル)
一刻も早い人質の解放に向けて、今一番、何を思い、何を求めていますか?
シーラ)
私はあくまでも政治家ではなく、家族を返してほしい一般人です。状況はとても複雑で、難しい状況にあるかと思います。イスラエルは様々な方法でガザへの攻撃を進めています。
この戦争は、やはり戦争なので、とても暴力的です。ハマスのイスラエル市民への攻撃はとても暴力的でしたし、イスラエル軍も暴力的にハマスを攻撃しています。
今、求めていることは何か、答えを二つに分けると、まず一つ目は、生きているという確認がしたいです。
少なくとも、赤十字との面談。本当に小さい子供たちから老人、病気を患っている人まで、一刻も早い手当が必要な人たちがたくさんいらっしゃるので、せめて赤十字による生存確認を求めています。
イスラエルは世界の一部ですので、世界各国も同じ組織、仕組みに属している国々として責任を持ってほしいです。
堀・ミエル)
地上戦に向けた準備が進んでいると見られますが、心配です。
シーラ)
ガザへの地上戦に関しては、家族としてそれを見るのがとても苦しいです。もちろん自分たちの家族もそうなんですけれども、壁の向こう側のパレスチナ人も「私達」という同じカテゴリーに入ると私は考えています。
私達家族は、ずっと一族として人道と人権を常に訴えてきました。あちら側も、パレスチナ側も、とても苦しんでいます。どちらも苦しんでいます。なのでこれは本当に私達一般市民にとってより大きな問題です。
今は、とにかくただただ生きてる顔を見たいと思ってます。
民間人の拉致は「非政治的」な世界的事件なので、全世界で責任を持って解決していただきたいと思ってます。
これは完全に戦争犯罪であり、国際的な犯罪です。なので、これはもう、全世界が一つとなって、解決しないといけない問題だと強く訴えています。
■私も生き地獄、でも壁の向こうはもっと地獄
堀・ミエル)
日本人や日本政府には何を伝えたいですか?
シーラ)
日本人の方々に何を伝えたいかと言いますと、自分の家族を想像してみてください。姪っ子、叔父、叔母など自分の親族が誘拐されたら、どのような気持ちになるか想像もできないかと思います。
私は今、日々生き地獄を生きています。ただ、あちら側にいる人は、私の今の生き地獄を超える地獄を日々を送っています。
今私が話したこの話を覚えて、私の顔を覚えて、この話をシェアし続けてください。時間が過ぎてるんです。
もう今10日以上が過ぎてしまいました。日が経つにつれやはり、可能性というのが死んでしまう可能性がやっぱり危機感が迫っているので、時間との戦いです。
私は、生き地獄、精神的な生き地獄を生きてたとしてもやはりちゃんとしたベッドで寝ていてちゃんとした生活ができています。
でも、彼らは本当にどのような状況にいるのかもわからないですし、本当に私が想像できる以上の地獄に今いるかと思います。
本当にこれは世界として、もう非人道的な出来事として広めないといけないと強く思っています。
これは本当に政治的じゃない悲劇です。
政治を混ぜては絶対にいけない出来事だと思います。非人道的な、悪魔的なこのような事件は世界的に取り上げて世界が責任を持って戦わないといけない問題だと思ってます。