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炎症性皮膚疾患とメンタルヘルスの意外な関係 - 脳と腸内細菌の重要性

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【脳と皮膚の複雑なつながり - 皮膚疾患とメンタルヘルスの関係】

皮膚疾患と精神疾患の間には、深い関連性があることが分かってきました。例えば、乾癬などの慢性炎症性皮膚疾患を持つ患者さんは、うつ病などの精神疾患を合併するリスクが高いことが知られています。これまでは、目に見える皮膚の症状によるストレスが原因だと考えられてきましたが、最近の研究では、神経炎症という脳の炎症が独立した原因である可能性が指摘されています。つまり、皮膚疾患患者さんの精神的な苦痛は、見た目へのストレスだけでなく、神経炎症によって直接引き起こされている可能性があるのです。

【腸内細菌が脳と皮膚をつなぐ重要な役割】

最近注目を集めているのが、炎症性皮膚疾患と脳-腸相関の関係です。脳と腸は密接に関わっており、腸内細菌叢(腸内フローラ)の変化が、脳の機能や精神状態に影響を与えることが明らかになってきました。腸の上皮細胞の接合部が損傷を受けると、免疫シグナル伝達経路に影響を与え、血液脳関門の機能や神経炎症を引き起こす可能性があります。つまり、腸内環境の乱れが、皮膚の炎症だけでなく、脳の炎症を介して精神疾患の発症や悪化にも関与している可能性が考えられるのです。

【ストレス、うつ病、炎症性皮膚疾患の共通メカニズム】

ストレス、うつ病、炎症性皮膚疾患の間には、神経免疫経路や脳-腸相関を介した共通のメカニズムがあることを示唆する研究結果が蓄積されつつあります。これまで確立されていたホルモンや神経を介した脳-皮膚経路に加え、最近認識されるようになった神経炎症を介した脳-皮膚経路、そして腸-脳相関が重要な役割を果たしている可能性があります。皮膚疾患患者さんの心理社会的な問題を理解し、適切なケアを提供するためには、これらの関連性をさらに探求し、多角的なアプローチを取ることが重要だと言えるでしょう。

以上、皮膚疾患と精神疾患の意外な関係について解説しました。脳と腸内細菌が皮膚の健康に大きな影響を与えていることが分かってきた今、皮膚疾患の治療においても、腸内環境の改善や精神面のケアが重要になってくるでしょう。自分の皮膚だけでなく、腸内フローラやメンタルヘルスにも目を向けることで、より健やかな肌を手に入れることができるかもしれません。

参考文献:

Dalgard F, Bewley A. New insights to the mind–body connection: The importance of the brain–gut microbiome for inflammatory skin diseases. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2024;38:784–785. https://doi.org/10.1111/jdv.19946

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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