メガバンク&ネット証券、呉越同舟時代へ みずほ証券、PayPay証券に続き楽天証券にも出資
KNNポール神田です。
日本経済新聞によると、『みずほ証券が、楽天証券株の2割、800億円分を買い取る出資計画』があるようだ。みずほ証券はすでにPayPay証券に49%の出資している。
EC、ポイント、証券、銀行、とそれぞれのグループ、系列間で、いろんな『呉越同舟』の提携が進化しはじめた。
『右手で握手しながら、左手では殴り合う』という関係性でもある。
■銀行グループ&ネットグループの金融ビジネスでの統合が進む
なんといっても、世代間での顧客数争いが激化することだろう。
それぞれの事業者の立場に立って眺めていると景色に違いが現れる。
今回のスクープを事実として考えるならば…
楽天HDは、持ち株の楽天証券の2割をみずほ証券に持ってもらいながら、800億円規模の資金調達ができる。さらに、みずほ銀行との連携がはかれる体制が構築できる。楽天証券、みずほ証券の合計の口座数では、1,000万口座と国内最大規模の野村証券を追い抜き、預かり資産も野村証券120兆円の半分の60兆円となる。
一方、PayPay証券(ソフトバンクKK61%)側からみると、みずほ証券からすでに49%の出資を受けており、株式による関係性は楽天証券よりも大きい。PayPayなどの決済アプリからも上場投資信託(ETF)が100円から購入できたりする。『PayPay』決済アプリとのポイント経由での親和性が非常に高い。
しかし、『PayPay証券』と『PayPay』は別会社であり、PayPayは現在、実質的にはソフトバンクグループの関連子会社孫会社100%の子会社であり、通信のソフトバンクKK(親会社はソフトバンクグループ)50%とZホールディングス(親会社はソフトバンクグループ)の新会社の『Bホールディングス』が58%を持ち、SVF2(ソフトバンクブループのファンド)が30%残りを『ソフトバンク』『Zホールディングス』が個々に6%づつ保有している(議決権ベース)。
こうやって、眺めてみると、『みずほ証券』を介在して、『楽天証券(みずほ2割)』と『PayPay証券(みずほ49%)』はかなり近くなるが、『楽天』と『PayPay』との資本関係の距離は遠く離れたままである。さらに『PayPay銀行』には三井住友銀行が出資しているので話ががぜんややこしくなる。
ただ、居並ぶライバル関係との間では、サービス化の協力は作りやすい関係性にあるだろう。
また、Zホールディングス傘下の『LINE(Zホールディングス100%)』側から見ると、最大手の野村HDと『LINE証券(LINEフィナンシャル51%野村HD49%)』を運用中であり、みずほ銀行とは『LINE銀行』との開業が控えている。
ソフトバンクグループ傘下のZホールディングスとの『LINE』と『LINEフィナンシャル(LINE100%)』系の『LINE証券(LINEフィナンシャル51%野村ホールディングス49%)』『LINE銀行(LINEフィナンシャル50%みずほ銀行50%)』とサービスレイヤーごとに資本も分離されている。
つまり、サービスレイヤーではいろいろと『戦術的』なサービスを展開しながら、資本関係は、明確に切り口によって使い分けていることがわかる。
そこには、膨大な資産価値を持つ、金融メガバンク系列とネットにおけるスピードとDXに富むネット金融の呉越同舟の構図がありありと見え隠れする。
『右手で握手しながら、左手では殴り合う』という関係性でもあるのだ。
海外のGAFAMにおいても、同様で、ある場面では敵対しながらも、別の曲面では提携するというのはよくある話だ。当初はAmazonTVではGoogleのYouTubeが視聴できないとかがあったが、あくまでも、ユーザー視点で見た場合、それは最終的に双方にとってデメリットであることが多いからだ。
損して得を取るアクションに、日本の重厚長大なメガバンクがどこまで臨機応変に対応できるのかも気になるところだ。
■三井住友FGとSBIHDとの関係性も接近
三井住友FGの3,000万弱の預金口座という顧客基盤
総資産は257兆円 2022年3月期の純利益は7,066億円。時価総額は5兆円超。
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SBIHDは傘下にネット証券最大手『SBI証券』
22年3月期の純利益は3,668億円 時価総額はおよそ6000億円
『新生銀行(2023年にSBI新生銀行に社名変更予定)』
『大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)』
(SBIHD70% 三井住友FG20% 野村HD5% 大和証券G5% 出資)
ブロックチェーンを活用した国内初のデジタル証券を売買する私設取引システムの運営
私設取引システム(PTS)運営会社 2022年6月27日営業開始
2023年 デジタル証券取扱開始。
『PTS』は現在、SBI系の『ジャパンネクスト証券』と、米Cboeグローバル・マーケッツ傘下の『Cboeジャパン(旧チャイエックス・ジャパン)』の2社がある。
SBI証券845万口座(SBIネオモバイル含む:2022年3月末)
楽天証券 800万口座(2022年6月)
野村證券 535万口座(2022年5月末)
SMBC日興証券 376万口座(2022年3月末)
大和証券 350万口座(2021年末)
マネックス証券 219万口座(2022年5月末)
『BOOSTRYブーストリー』デジタル証券発行システム
ブロックチェーン技術を用いた有価証券等の権利を交換する基盤の開発、および提供事業(コンサルティング、ITサービス提供等)
野村HD 56% 野村総研34% SBIHD10% + みずほ証券
■三菱UFJフィナンシャルグループの『Progmat(プログマ)』
三菱UFJフィナンシャルグループでは、このほど、ブロックチェーン(分散型台帳技術)を活用した独自のデジタル証券発行・管理プラットフォーム「Progmat(プログマ)」の運用をスタートしている。
新たなブロックチェーン運用が展開中だ。
2021年7月、Progmatの運用が始まった。
三菱UFJ信託
三井住友
2019年に設立した「SRC(セキュリティトークン研究コンソーシアム)」での業界を横断したナレッジ共有・情報交換などを通じて、セキュリティトークンの普及・活用促進
SBI証券など4社がSTOで協業、三菱UFJ信託銀行のブロックチェーン基盤「Progmat」活用
『受益証券発行信託スキームを用いた資産裏付型セキュリティトークン(以下、ST)の公募(STO)』
三菱UFJ信託銀行株式会社、ケネディクス株式会社、株式会社SBI証券、および野村證券株式会社
2021年7月9日、三菱UFJ信託銀行が提供するブロックチェーン基盤「Progmat(プログマ)」を活用し、受益証券発行信託スキームを用いた資産裏付型セキュリティトークン(以下、ST)の公募(STO)について協業することを発表した。
三菱UFJ信託銀行──「Progmat」のシステム提供、保守・受益証券発行信託の受託業務・資産裏付型STのカストディ業務
ケネディクス──原資産となる不動産の拠出・対象資産のアセットマネジメント、投資家向け情報開示業務
SBI証券──資産裏付型STの取扱い、保護預り業務
野村証券──資産裏付型STの取扱い、保護預り業務
■岡三デジタル証券 設立
あおぞら銀行が15%、不動産販売のADワークスグループとフィンテックグローバルが10%
■デジタル証券は2020年施行の改正金融商品取引法で解禁
日本でも2020年5月に施行された改正金融商品取引法でセキュリティトークンが「電子記録移転有価証券表示権利等」として同法の対象であることが明確化にされた。
株式などを裏付けにする「電子記録移転有価証券表示権利等」と、匿名組合出資持ち分や不動産信託受益権を裏付けにする「電子記録移転権利」の2つの分類が可能となる。
不動産に小口投資できる上場不動産投資信託(REIT)との違いは特定の決まった物件を購入して保有し続ける点である。
REITは複数の物件が組み入れられ、プロが物件を新たに購入したり、売却したりして資産価値を高める。分散投資効果は出るが、個人投資家自身が物件を選ぶことはできなかった。
■デジタル証券の裏付け資産が不動産から
金融当局が審査に慎重であることが大きな理由だが、ワインやウイスキーなどの実物資産や映画やアニメなどの無形資産を対象にしたデジタル証券の発行も制度上は可能。実現すれば投資家層が広がり、市場拡大に弾みがつく可能性も高まる。