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アーロン・ジャッジの大型契約で大谷翔平の来オフ契約交渉に最低基準が設定された?!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
野手として史上初の平均年俸額4000万ドルの大台に乗せたアーロン・ジャッジ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ジャッジ選手のヤンキース残留がほぼ確定的に】

 日本時間の12月7日夜に、MLBネットワーク等で活躍するジョン・モローシ記者が第一報として、アーロン・ジャッジ選手のヤンキースとの再契約合意の速報ツイートをしてからというもの、SNS上でMLB関連の話題はジャッジ選手一色になったかのような騒ぎになった。

 今オフFA市場最高の選手としてその去就が注目を集めていたが、最終的にジャッジ選手との再契約を最重要事項に掲げていたヤンキースが、ジャッジ選手の説得に成功したようだ。

 米メディアの報道を総合すると、ジャッジ選手の生まれ故郷であり、彼を獲得するために大規模な予算を投じることを公言していたジャイアンツと、ヤンキースの一騎打ちの様相を呈していたが、終盤になってパドレスがそこに参戦し、ジャイアンツとヤンキースを上回るオファー(一部報道によると10年総額4億ドル)を提示したようだが、ジャッジ選手はヤンキースを選んだようだ。

 報道によれば、合意内容は総額3億6000万ドル(9年契約)で、FA選手としてはブライス・ハーパー選手が2019年にフィリーズと結んだ3億3000万ドル(13年契約)を上回り史上最高となった。

 また契約延長を含めた契約総額でも、マイク・トラウト選手の4億2650万ドル(12年契約)、ムーキー・ベッツ選手の3億6500万ドル(12年契約)に次いで史上3番目の大型契約になる見込みだ。

【ジャッジ選手の契約が意味するものとは】

 だが今回ジャッジ選手が合意した契約で注目すべきなのは、契約総額ではなく平均年俸額だ。これまで野手のトップだったトラウト選手の約3554万ドルを上回り、史上初めて4000万ドルの大台に乗せたことだろう。

 投手に関しては、昨オフにマックス・シャーザー投手がメッツと2年契約を結び、MLB史上初めて年俸4000万ドル(正確には約4333万ドル3333ドル)に到達。さらに今オフにジャスティン・バーランダー投手が同じくメッツと2年契約(シャーザー投手とまったく同じ内容)に合意し、年俸4000万ドルの仲間入りを果たしている。

 また今オフから今年3月にMLBと選手会が合意した新統一労働協約(いわゆるCBA)の下で契約交渉が行われるようになり、明らかにFA市場はかつての賑わいを取り戻し、次々に大物FA選手の契約が決まり、大型契約が続いている状況だ(吉田正尚選手が合意したレッドソックスとの契約もその1つだ)。

 つまり今オフのFA市場動向を考えると、現行CBA下での今後5年間は、売手市場になっていく可能性が高く、今後も平均年俸額4000万ドルを超える大型契約が出やすい環境になったと考えられる。

【来オフFAの大谷選手はバーランダー&シャーザー超え?】

 そうなってくると日本人としてどうしても気になるのが、来オフFAになる大谷翔平選手の契約内容だろう。すでに野手、投手ともに平均年俸4000万ドルを超える選手が登場したことを考えれば、二刀流である大谷選手が4000万ドルを下回ることは絶対にあり得ない。

 むしろ選手としての価値を考えれば、バーランダー投手やシャーザー投手を上回る史上最高額の平均年俸額になってもおかしくないところだ。

 ちなみに大物FA選手を獲得するには、契約内容だけでなく選手のプライドを尊重する必要もあるように思う。

 例えば、もしメッツがバーランダー投手に対しタイガース時代の後輩であるシャーザー投手を下回るような契約内容だったら、果たしてメッツと合意していただろうか。

 またヤンキースがジャッジ選手に対し、平均年俸額でトラウト選手を下回るような契約内容を提示していたらヤンキースに残っただろうか(ちなみにジャイアンツも総額3億6000万ドルを提示していたと報じられている)。

 来オフの大谷選手の場合も、二刀流としてのプライドを尊重するような契約内容でなければ、大谷選手本人と言うよりも代理人が許さないだろう。

【すべては来シーズンの活躍次第にかかっている】

 ただ夢のような大型契約を獲得するには、やはり来シーズンの活躍が必要になってくる。

 今回ジャッジ選手が野手として史上初の平均年俸4000万ドルに到達できたのも、昨シーズンの活躍があったからだ。昨シーズン開幕前にヤンキースが提示した契約延長オファーが7年総額2億2350万ドル(ジャッジ選手のプライドを尊重していなかったら拒否された)だったのだから、昨シーズンの歴史的な活躍で契約内容が大幅に変更になったのは一目瞭然だろう。

 裏を返せば、2年連続で二刀流として歴史的な活躍をした大谷選手といえども、来シーズンの活躍次第では市場価値が落ちてしまいかねないわけだ。それがMLBのFA市場というものだ。

 エンジェルスは来シーズンの大谷選手について、昨シーズン終盤のように6人ローテーションにとらわれず中5日登板で起用していくことを明言している。大谷選手にとっては、まさに新たなチャレンジとなる。

 そして来シーズンもケガなくシーズンを乗り切るようなら、球界を揺るがすような大型契約が待ち受けているはずだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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