いま注目の事実婚!そのメリット・デメリットを弁護士が解説
最近、事実婚をするカップルが増えていると言われています。
神奈川県綾瀬市では、事実婚のカップルがパートナーになったことを証明する「パートナーシップ宣誓制度」を2月1日から導入すると発表しました。この制度が始まるのは県内33市町村のうち綾瀬市が16番目で、今年は寒川町や平塚市でも導入されることが決定しているそうです。パートナーシップを宣誓すると、市営住宅の申し込みや不妊治療の助成制度が利用できるようになるということです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/22f48ef21988d009cbfb964a2ec97d20d640d3bf
また、2016年の大ヒットドラマである「逃げ恥」も事実婚を扱っており、当時は「逃げ恥婚」という言葉も大流行しました。
私は離婚相談を多く扱っている事務所の弁護士ですが、最近では事実婚カップルの法律相談が増えてきました。
「事実婚をしていたパートナーから一方的に別れを告げられた。慰謝料は取れるのか?」といったご相談や「事実婚をした相手が浮気をした場合に慰謝料を請求できるのか?」といったご相談です。
また、辛い離婚を経験した方の中には、「もう結婚はこりごり」と言う方も多く、事実婚を選択する人もいます。
今回は事実婚のメリットやデメリットを解説したいと思います。
1 事実婚とは?
通常の法律婚とは、婚姻届を市区町村役場に提出して、法律上の夫婦となった状態を言いますが、事実婚とは婚姻届を提出していない状態を言います。
法律婚との一番の違いは、婚姻届の提出の有無です。
婚姻届を提出せずに、一緒に生活をしている男女のことを「内縁」と呼ぶことがありますが、事実婚と基本的には同じ意味だと思ってください。
2 事実婚のメリットとは?
事実婚には以下のようなメリットがあると言われています。
①姓が変わらない
現在の法律では、結婚に際し、夫婦どちらか一方が必ず姓を変更しなければなりませんが、事実婚であれば姓を変更する必要はありません。
女性の社会進出に伴い、姓を変更することによる社会的な不利益や不便さが指摘され、夫婦別姓制度を導入すべきとの機運も高まってきていますが、未だ実現の目途は立っていません。
しかし、事実婚を選択すれば夫婦別姓を実践することができます。
②対等な関係を維持しやすい
法律婚では、95%以上の女性が男性側の姓を選んでいると言われています。
事実婚の場合は、戸籍は別々のままですので、姓を変えないことで結婚前と同じように対等な関係を維持しやすいと言えます。
③相手方の親族との付き合いが薄くてすむ
法律婚をすると配偶者の両親や親族とも姻族関係になるため、付き合いが必要になることもありますが、事実婚の場合はそれほど強く意識する必要はありません。
なお、「婚姻届は提出しないが、自治体からは家族として扱ってほしい」という場合には、2人の住民票を同じにするという方法をお勧めします。
一方を住民票の「世帯主」として、もう一方の続柄を「妻(未届)」や「夫(未届)」と記載するのです。このような事実婚カップルは実際のところ多くいます。
また、事実婚が認められれば、片方が社会保険制度上の扶養に入ることも可能となります。
社会保険上は厚生年金保険法第3条の2で「この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする」と定められているからです。
3 事実婚のデメリットとは?
では、事実婚のデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
①配偶者控除・配偶者特別控除などが受けられない
税法上は、所得税基本通達2-46において「法に規定する配偶者とは、民法の規定による配偶者をいうのであるから、いわゆる内縁関係にある者は、たとえその者について家族手当等が支給されている場合であっても、これに該当しない。」と定められています。つまり事実婚では、所得税や贈与税の配偶者控除や相続税の配偶者の税額軽減などの制度が使えませんので、税制上不利となります。
②相続権がない
事実婚の場合は、配偶者が亡くなったとしても相続できません。これは大きなデメリットです。
事実婚の夫婦が相手に財産を残したい場合は、相手に財産を遺贈する遺言書を作成するか、死因贈与契約を締結するなどの対策をとっておく必要があります。一度、専門家に相談することをお勧めします。
③子供が生まれたときの手続きが複雑
事実婚の夫婦の間に子供が生まれた場合、子供とその父親には法律上の親子関係が当然には生じないため、「認知」という手続きをとる必要があります。
④夫婦関係を証明しにくい
法律婚の夫婦の場合は、戸籍謄本を提出することで夫婦関係を証明できますが、事実婚の場合は2人の戸籍は別々ですので、夫婦関係を証明しにくいというデメリットがあります。
⑤手術などで同意の代理ができない場合がある
本人が意識不明などの場合で、手術等医療行為を行う際、本人に代わって親族や配偶者が「同意書」にサインを求められることがありますが、事実婚の場合、法律上は他人とみなされるため、同意書へのサインができないケースが考えられます。
4 まとめ
かつては、法律婚が何らかの理由でできない場合(古い家制度において家主が結婚に反対した場合など)に選択されていたケースが多かった事実婚ですが、現代においては、あえて法律婚ではなく事実婚を選ぶカップルも増えているようです。
いわば「事実婚」は新しい夫婦のカタチとして注目されていると言えるでしょう。自治体の対応も、今後さらに充実してくると思われます。
しかしながら、事実婚にはご説明したようにメリット、デメリットが存在します。
場合によっては、せっかく夫婦という形をとっても、それに伴う十分なメリットを享受できない場合もあるのです。
事実婚と法律婚に関しては、内容を十分理解した上で、どちらを選択するかを慎重に判断していただきたいと思います。
また、事実婚にするかどうかは自分だけで一方的に決められるものではありません。当然のことながら、パートナーの意見を聴く必要があります。
どのようなカタチが自分たちに一番ふさわしいかをパートナーと十分に話し合い、しっかりと見極めてください。