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離乳食の早期導入でアレルギーリスクが67%減!?英国の大規模臨床試験の結果を皮膚科医が徹底分析

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【生後早期の離乳食導入がアレルギーリスクを大幅に減らす可能性】

英国で行われた大規模な臨床試験「EAT study」の結果、生後3~6ヶ月の間に卵やピーナッツなどのアレルゲン食品を与えると、標準的なタイミングで与えるよりも食物アレルギーのリスクが67%低くなることが報告されています。

特に注目すべきは、ピーナッツと卵の摂取量が多いほど、それぞれのアレルギー発症率が下がったことです。週に2gのピーナッツタンパクと4gの卵タンパク(卵白2g相当)を4週間以上食べていた赤ちゃんでは、ピーナッツアレルギーと卵アレルギーがほぼ完全に予防されていました。

これは、イスラエルの幼児の研究で、生後早期からピーナッツを多く食べている子供はピーナッツアレルギーが10分の1だったという過去の知見とも一致します。日本でも離乳食の開始時期は生後5~6ヶ月とされていますが、もう少し早めることでアレルギー予防効果が期待できるかもしれません。

【早期離乳食導入の安全性は?皮膚疾患への影響は?】

この研究では、生後3ヶ月からのアレルゲン食品の摂取は安全で、母乳育児や赤ちゃんの成長にも悪影響はありませんでした。ただし、卵は加熱したものを与えるのがよさそうです。

また、試験開始時に湿疹のあった赤ちゃんでは、プロトコル通りの摂取率が低かったそうです。私見ですが、アトピー性皮膚炎などのお子さんは食物アレルギーを合併しやすいため、早期の離乳食導入に抵抗感を持つご家庭もあるのかもしれません。皮膚疾患のあるなしに関わらず、離乳食の開始時期については小児科医にご相談いただくのがよいでしょう。

【今後はさらなる検証と個別化したアプローチが求められる】

EAT studyは興味深い研究ですが、プロトコル通りに進められたのは参加者の32%にとどまりました。人種差や両親の教育歴、喫煙習慣なども、アレルゲン食品の摂取継続率に影響していたようです。

今後は、赤ちゃんの体質に合わせて、より個別化した離乳食のアドバイスができればと思います。アレルギーハイリスク児に対する積極的介入の是非など、まだ検討の余地は多そうです。

参考文献:

Perkin MR et al., Randomized Trial of Introduction of Allergenic Foods in Breast-Fed Infants. N Engl J Med. 2016 May 5;374(18):1733-43.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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