原油先物価格が乱高下、何が起きているのか
バイデン米大統領は8日、ホワイトハウスで記者会見し、ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止すると発表した。同日に大統領令に署名し、即日発効した。まず米国単独で禁輸に踏み切り、英国も年末までにロシアからの原油輸入を停止する(9日付日本経済新聞)。
英国はロシア産原油の輸入を数か月かけて段階的に禁止する計画を発表した。ただし、天然ガスと石炭の輸入は継続するとした。
バイデン大統領は「世界中の同盟国、特に欧州と緊密に協議して決めた。欧州の同盟国・有志国の多くが参加しないと理解したうえで禁輸する」と強調した。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、ロシア産原油輸出全体に占める米国向け比率は2020年時点で2.3%にとどまる。日本は2.8%。しかし、欧州は53.5%もの大きさとなっている。
ドイツのショルツ首相は7日、ロシアからのエネルギー輸入が当面必要だとする声明を公表した。
欧州連合(EU)はロシア産天然ガスの使用量を3分の2減らすが、エネルギーのロシア依存からの脱却は2030年までに達成する方針を表明した。
いまのところ日本政府からは特に表明はない。日本企業への影響等も意識して対応策を検討しているとみられる。ロシアとのエネルギー関連では、三井物産と三菱商事が「サハリン2」に、伊藤忠商事グループと丸紅は「サハリン1」に出資している。
今回の米国によるロシア産原油禁輸は、数量からすればそれほど大きくはないが、8日の原油先物市場では、これを受けて大きく買われ、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は一時129.44ドルを付けた。
原油先物市場はここにきて値動きが荒くなっており、大きく上昇した格好となった。しかし、米国はアナウンスメント効果を意識したものとみられ、原油の需給バランスについては、いまのところ、それほど大きく崩れるものではない。ただし、これについてはロシアや欧州諸国の出方次第の面もあり、不透明感は強いこともたしかである。
9日にアラブ首長国連邦(UAE)のアルオタイバ駐米大使が、UAEは原油増産を支持しているとし、石油輸出国機構(OPEC)に検討するよう働き掛けると述べた。これが報じられるとOPEC加盟国の増産の思惑が浮上し、供給不安が和らいだことで原油先物は急反落となり、WTI先物は一時、1バレル103ドル台まで急落した。
ただし原油先物価格はロシアによるウクライナ侵攻という事態を受けて、今後も荒れた展開となるなか、高値を維持することが予想される。OPECの増産についてもそれほど大きな規模の増産は難しいとされているが、こちらの動向にも注意が必要となろう。2008年7月11日につけたWTI先物での1バレル147.27ドルをいずれ上回ってくる可能性もないとはいえない。