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スズキ「GSX-R1000」がマン島TTレースで優勝!最高峰クラスでポテンシャルの高さを見せつけた

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
マン島TTレースを疾走する「SUZUKI GSX-R1000」

イギリスのマン島で開催される世界的な公道レース、「マン島TTレース」(The Isle of Man Tourist Trophy Race)で、スズキの新型「GSX-R1000」が優勝の栄誉を勝ち取った。

トップカテゴリークラスで成し遂げた栄冠

新型GSX-R1000を駆り最高峰クラスで勝利したマイケル・ダンロップ選手
新型GSX-R1000を駆り最高峰クラスで勝利したマイケル・ダンロップ選手

イギリス王室属国のマン島で開催される「マン島TTレース」は、1907年から行われている歴史ある二輪車の公道レースである。

今年は5月27日から6月9日にかけて開催され、排気量や車両タイプ別に9つのレースが展開された。

今回スズキが挑戦したのは、シニアTTクラス。シニアTTは1911年より開催されている最も名誉あるクラスで、ほぼ改造無制限の「スーパーバイククラス」の中でも、さらに予選通過者のみに参加が許されている。

つまり、最高峰のマシンとライダーがしのぎを削るマン島TTのトップカテゴリークラスである。

スズキの英国における子会社、スズキGB社が支援する、レーシングチーム「ベネッツ・スズキ」が、マン島TTで数々の優勝を誇るマイケル・ダンロップ選手を起用して成し遂げた栄冠である。

「マン島TTレース」における数々の勝利

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最終日の6月9日に開催されたレースにおいて、今年より全面改良した新型「GSX-R1000」で参戦したダンロップ選手は、スタート後1周目からトップに立ち、2位以降を徐々に引き離して独走状態に入り、2位に13秒以上の差をつけてチェッカーフラッグを受けた。

スズキは「マン島TTレース」において1962年に50ccTTレースクラスで初優勝して以来、数々の勝利を獲得してきた。

「GSX-R1000」での優勝は2008年に2つのレースクラスで優勝(「スーパーバイク、「スーパーストックの両クラスでキャメロン・ドナルド(豪)による)して以来9年ぶり。

また、シニアTTレースクラスでは2004年のエイドリアン・アーチボルト(英)以来13年ぶりの優勝となる。ちなみにこの年はGSX-R1000が1位から3位まで表彰台を独占している。

過酷な環境でパフォーマンスの高さを証明

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マン島TTレースは普段は日常生活や観光のために使われている一般道を封鎖して行われるのが特徴だ。

1周約60kmの中に200以上のカーブや、396mを超える高低差がある周回コースを、平均速度200km/hを超えるスピードで走り抜ける、世界にも他に類を見ない過酷かつ危険なロードレースとして知られる。

公道がゆえに路面状況は刻々と変化し、大きなうねりや凹凸のある路面では激しく車体が振られ、ジャンピングスポットまで点在するなど、超高速レンジでの究極のマシン性能が試される。

そのマン島TTのトップカテゴリーにおけるデビューイヤーでの勝利は、新型「GSX-R1000」のポテンシャルの高さを証明する結果となった。

新型GSX-R1000とは

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GSX-R1000は2001年に初期型が登場して以来、スズキを代表するスーパースポーツモデルとして世界中のレースシーンで活躍してきた。

今回で6代目となる新型では8年ぶりのフルモデルチェンジを敢行し大幅にパフォーマンスを向上。MotoGPで培われた技術を惜しげもなく投入しつつ、GSX-Rシリーズの伝統である「走る・曲がる・止まる」の基本設計が徹底的に見直されているのが特徴だ。

新型新開発の直列4気筒999.8ccエンジンは、ショートストローク化と高圧縮化により、さらなる高回転・高出力化を実現。スペック的には最高出力はGSX-Rシリーズ史上最強の148.6kW(202ps)/13,200rpm、最大トルク117.6N・m(12.0kgf・m)/10,800rpmを発揮。徹底的な軽量化により車両重量は200kgを実現し、パフォーマンスのひとつの目安となるパワーウエイトレシオはついに1.0を切った。

また、MotoGPマシンの技術を取り入れた新機構「ブロードパワーシステム」が採用されているのが特徴だ。これは「吸気VVT」、「電子スロットル」、「バルブ動弁装置」、「排気圧調整バルブ」の4つの機構の総称で、高回転域での出力向上と低中速域での出力を両立する技術としている。もちろん、新排ガス規制「ユーロ4」にも対応する。

そして注目すべきは、新型GSX-R1000には「慣性計測装置」が搭載されていることだろう。IMU(Inertial Measurement Unit)とも呼ばれは、ジャイロセンサーや加速度計によって3次元での車体の動きを検知するシステムのこと。元々は4輪の技術だが、2輪でもMotoGPをはじめとする最高峰レース、そしてここ数年で2輪の最新鋭スーパースポーツモデルにも導入され始めている。

IMUはトラクションコントロールやコーナリングABS、スタビリティコントロールなどの電子制御の要となる装置で、限界域での高度な姿勢制御には欠かせないものだ。新型GSX-R1000ではフルブレーキ時に後輪が浮くのを抑制する「モーショントラック・ブレーキシステム」に応用され、ライダーの好みやライディングスキル、路面状況に応じてエンジン出力をより効率よく路面に伝達することを可能としている。

デビューイヤーを勝利で飾り、レースの世界でも幸先の良いスタートを切ったGSX-R1000。発売も近いとされる上級バージョンの「GSX-R1000R」も含め、今後の動向に注目したいところだ。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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