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「和牛解散」はなぜ衝撃的だったのか、「実績」「原因」「発表の時間帯」の3つのポイントから考える

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:イメージマート)

12月12日に発表された人気お笑いコンビ、和牛の解散が大きな衝撃を集めている。

同コンビは、2024年3月末をもって解散することを所属する吉本興業の公式サイトを通じて報告。2006年12月の結成から17年3か月で活動に終止符を打つことになる。

SNSでも「和牛解散」ほか、メンバーの川西賢志郎、水田信二の名前がトレンド入りするなどし、NON STYLEの井上裕介はX(旧Twitter)で「和牛解散!? マジか?? 全ての漫才師の憧れだったのに。。。」、スーパーマラドーナの武智も「あまりにも、とてつもなくあまりにも勿体無い。。言葉で表現出来ない位に、、和牛お疲れ様でした。。としか言えない」と投稿するなど、お笑いファン、芸人仲間からも惜しむ声が相次いだ。

それにしても和牛の解散はなぜここまで衝撃を与えたのか。その理由を3つのポイントから考えたい。

『M-1』3年連続準優勝、「現役感」「無冠の帝王」の雰囲気を残して身を引いた

理由の一つは、数多いるお笑い芸人のなかでも屈指の「実績」を誇っている点。

『M-1グランプリ』では、2016年から3年連続準優勝。しかも2015年に『M-1』が再開(2011年から2014年は大会休止)してから、5年連続で決勝へ進出。新生『M-1』の顔ともいえる存在だった。2019年大会では準決勝で敗退したものの、敗者復活戦を突破して決勝の舞台に立ち、4位にランクインした。ラストイヤーまでまだ2年あったが、同年で『M-1』から身を引いた。それもあって、同大会における「現役感」「無冠の帝王」のイメージを残すことになった。

2023年からは芸歴16年目以上の漫才師が対象となる大会『THE SECOND』も始まった。ただ第1回大会は未エントリーだった。和牛が出場すれば間違いなく大本命となったはず。

「『M-1』でもまだまだやれた」という印象や、『THE SECOND』への出場を待望されていた期待度、そしてなにより飛び抜けた実力が今回の解散のショック度を高めている。

素行問題と感情面、濁すことなく突きつけられた解散の「現実」

次に「原因」。方向性の違いはコンビの解散でもよく伝えられる理由だが、詳しい内情をファンらに知らされることはあまりなかった。

ただ和牛の解散理由について、水田信二が「きっかけは、3年程前に気の緩みから複数回の遅刻が重なったことでした。加えて漫才のパフォーマンスにおいて川西の要求に応えられないことがあり、漫才への取り組み方について川西との差を感じるようになりました」「相方に対して意見することができなくなり、楽しかった漫才が苦しいだけの毎日になっていました」と説明。川西賢志郎も「(水田の)遅刻が続いたことがきっかけ」とし、「徐々に彼を信頼できなくなり、節度を保てず厳しく言葉をかけることもありました。それが彼を苦しめることに繋がり、求めるような漫才もできなくなってしまいました」と記述。

「遅刻」という素行問題、漫才に向き合う温度差、コンビとしての感情などについて言及するなど、濁すことなくはっきり「現実」を突きつけたことがより衝撃を強めたと考えられる。

深夜に近い時間帯、報道機関も寝耳に水の発表

最後に「解散発表をした時間帯」を衝撃の要因にあげたい。各ニュースサイトなどで解散が報道された時間は12月12日22時半前後。まもなく深夜に差し掛かろうかという時間帯である。

通常、こういったビッグネームのお笑いコンビの解散発表であれば日中におこなわれるもの。少なくとも「深夜帯」はもっとも避けられる。ただ一部メディアが和牛解散について触れる記事を出したことで、早急な対応が迫られたと考えられる。段取りを整えて発表する間もない、慌ただしさのある発表も衝撃に拍車をかけた。

また、コンビ解散の知らせについては吉本興業からマスコミ宛に事前案内がくることはあまりないが、それでも和牛ほどのコンビであれば、正式発表直前であってもメディア向けに一足先に報告される可能性はゼロではない。

しかし今回は筆者だけではなく、いつもお笑い関連の情報を取り扱うメディアや関係者に取材をおこなっても「和牛解散の連絡はなかった」という。おそらくごく一部のメディアだけ、もしくはどこにも一切情報を出さずに解散が発表されたのではないだろうか。そういう意味ではまさに「電撃」という言葉が当てはまる。各メディアも寝耳に水だったため、その驚きや衝撃が無意識に報道内容にもあらわれていたように読み取れた。

さまざまな事情があったにせよ、このショッキングな出来事を『M-1』(12月24日開催)ウィークの前に発表した点は、和牛の二人、そして吉本関係者の配慮が感じられる。1年で最大のお笑いイベントである『M-1』に水をささないよう、このタイミングでの「電撃発表」だったのかもしれない。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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