米長期金利はチャートからは目先ピークアウト感もあるが
10月4日の米国市場で、米10年債利回りは4.88%と2007年8月以来、約16年ぶりの水準に上昇したが、ここが目先のピークとなった。
米10年債利回りが約16年ぶりの水準に上昇した背景として、FRBの金融引き締めの長期化観測により、政策金利の高止まりが意識されたこと、さらに原油価格が再び上昇してきたことによる物価への影響も意識された。
さらに米下院が3日に、野党・共和党トップのマッカーシー議長の解任動議を可決、米議会・財政運営を取り巻く不透明感なども加わっての米10年債利回りの上昇となった。これはつまり米財政に対しての警戒信号といった役割を米債が果たしていたといえる。
しかし、4日の米国市場で、米10年債利回りは4.88%を付けたあとに急速に利回りが低下し、引けは4.73%となるなど乱高下していた。これはピークアウトする際に起きる現象のようにも見受けられた。
その後、6日の米雇用統計を受け、米10年債利回りは一時は4.88%と4日に付けた水準に並ぶ場面もあった。しかし、7日にパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルへの攻撃を開始、それに対しイスラエルは反撃し、戦闘は激しさを増し、ガザ以外にも飛び火するとの懸念が高まった。
中東地域でのいわゆる地政学的リスクが意識されて、リスク回避による安全資産買いによって米債は買い戻しの動きを強め、11日には米10年債利回りは4.55%に低下した。
目先の米10年債利回りのチャートは、結果としてダブルトップを形成し、ピークアウト感を強めている。
注意すべきは中東の紛争ということで、原油の供給に影響が出るとなれば、原油価格がさらに上昇しかねない点である。特に原油のほとんどを中東に依存する日本への影響は大きくなると予想される。くれぐれも「油断」なき対応が求められよう。