利用者そして事業者からも怒り噴出!実は予約サイトの方が安かった!?【どうみん割】で割食う道民
どうみん割とは
どうみん割とは、北海道に在住の人を対象に北海道内での旅行代金を補助するというもの。コロナ禍で落ち込んだ景気を鑑みた地域の需要喚起活動の一環で、道内旅行がひとりあたり1泊最大1万円を上限に最大半額を補助する等を内容とする。道は1230に及ぶ一次申し込み対象施設・事業者を公表、当初6月25日開始という予定が、事業者からの申請書類の不備が多数あったことなどから28日正午に延期されたものの、同日予約受付をスタートした。同日のどうみん割の対象は、ホテルが831、ゲストハウス176、旅行会社164、ネット予約サイト10、観光協会49となった。
各施設へは正午の開始と共に予約が殺到、早々に支援枠に達した施設が続出した。ホームページが繋がらないという声とともに、電話対応という施設では電話が鳴り止まないという悲鳴もSNS上で拡散した。すぐに売り切れるような割り当ての少ない枠とはいかがなものかという意見も目立ったが、施設側からも割り当ての予算が想定よりもかなり少なかったという声も上がり、特に小規模の施設へは割り当ても少ないことから人手がないのに手間が増えるという二重苦という訴えも散見された。さらに、どうみん割の補助対象施設は1泊6千円以上の施設とされるが、基準に満たない安価な宿の経営者からは基準を満たしたホテルへ客が奪われてしまうという怨嗟の声もあった。
どうみん割よりも予約サイトの方が安かった!?
様々な批判の声が聞こえたどうみん割であるが、最も目立ったのがどうみん割はお得だったのか?という素朴な疑問だ。一般的に(ネット予約サイト等の実勢料金などに比べると)高いとされる正規料金からの割引というケースでそうした疑問の声が上がった。北海道に在住する筆者の友人も「やっと電話が繋がり予約できてホッとしたのも束の間、念のためネットの予約サイトで同じ内容のプランを調べてみたらそっちの方が安かった。でもキャンセルも不可だし・・・」と悔しがっていた。
実際に、どうみん割の対象施設であるセンチュリーマリーナ函館(函館市)に聞いてみた。「どうみん割のルールにラックレートから割引などの縛りはないので、販売方法や価格はそれぞれの事業者(ホテル)に任されている状況」という。同グループは、センチュリーロイヤルホテル(札幌市)なども運営しているが、グループホテルでは実際には通常販売している実勢価格からどうみん割分を割り引いたということで、グループホテル全体としても特段のクレーム等はなく好意的に受け入れられたという。
また、スタート当日だと予約が殺到するという予測から「1日ずらしてゆっくり販売した」というが、人気を誇るホテルだけに、例えばセンチュリーマリーナ函館でいえば数時間で完売したという。とはいえ1日ずらして発売したことで、施設側のオペレーションや人員配置についても事前に準備することができたといい、価格設定についてもSNS等で事前に情報収集したことで、正規料金から割引を行なうことに対する辛辣なクチコミなども参考にできたことから大きな混乱はなかったという。
前出の友人の場合は、それでもネットで調べたことによりわかった事実であるが、ネット予約などの習慣がない人、そもそもパソコンが苦手な方などは知らぬまま、税金を使ったどうみん割の大々的な宣伝がきっかけで実勢料金よりも高いどうみん割を利用することになる。道内のメディアではどうみん割について好意的に大きく報じられたというが、たとえば“宿によっては予約が殺到する(予約アクセスができない)可能性”“正規料金からの割引というケースもあること(予約サイトの方が安くなる可能性)”など、注意喚起が同時になされる必要はあったのかもしれない。いずれにせよ折角の施策にもかかわらず、市民の間にある種の便乗値上げ的なイメージが付いてしまったとすれば残念だ。
以上、6月28日に予約開始となった“第1次どうみん割”にまつわる問題などについて述べてきたが、どうみん割は第2次(7/10予約開始)、特別追加分(7/10予約開始)、第3次(7/24予約開始)とまだまだ続く。7月6日の発表で、第4次の予算の大半を特別追加分に充てるとし第4次は中止となった(残った4次枠を第3次に当てるとのこと)。次々と方針転換される内容に混乱する施策の現場がうかがえるが、まずは次の予約開始となる7月10日がどのような動きなるのかにも注目だ。
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インバウンドに傾向していた宿泊業界がここにきて国内へシフトする動きがみられる。ほぼインバウンド需要がなくなっただけに当然といえば当然だ。確かにインバウンドありきで運営してきた施設がいまだ苦戦する中で、従前から日本人旅行者にフィーチャーしてきた施設の中には、ピンポイントで善戦するホテルも出てきている。
一方、そうした動きに市民の中には戸惑いも。「自分は旅行など縁が無いが、インバウンドだとさんざん煽って地元に迷惑をかけた挙げ句今度はご当地とは笑わせる」と京都在住の知人は話す。事業者の中には、営業自粛ということを鑑み我慢して(スタッフの安全安心も鑑み)休業を続けてきたのに、平然と不要不急の営業を続けていたとする全国ブランドへの批判の声が未だ渦巻いている。
コロナ禍は多くの溝を作った。事業者間の溝、事業者と旅行者の溝、事業者と市民の溝・・・そして市民の理解が前提となる多額の税金が投入される需要喚起施策との溝。GOTOキャンペーンをはじめとして、各自治体も今後観光業を対象とした多くの施策を実行していく。おいしい話には裏があるとは昔から言われるが、まずは疑ってかからなくてはならないキャンペーンだとしたら何とも悲しい。