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ゴルフ界を揺らすリブゴルフの新シーズン目前、PGAツアー選手が次々心変わりは「お金以上」の何のため?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今週、2月24日からリブゴルフの2年目のシーズンが始まろうとしている。

 2023年の初戦はメキシコのマヤコバで開催されるのだが、その開幕を控え、新たにリブゴルフへ移る選手が1人、また1人と増え始めている。

 今年1月から2月にかけ、チリ出身のミト・ペレイラとコロンビア出身のセバスチャン・ムニョスのリブゴルフ移籍が報じられたばかりだが、2月半ばにはベルギー出身のトーマス・ピーターズもリブゴルフへ移ることが電撃的に伝えられ、ゴルフ界を驚かせた。

 31歳のピーターズは米国のイリノイ大学にゴルフ留学していた時代に米国のカレッジゴルフを席捲し、NCAA個人優勝を飾ったこともある有能選手だ。

 すでに欧州のDPワールドツアーでは通算6勝を挙げており、米欧対抗戦のライダーカップでも2016年大会で大活躍。今後のライダーカップでも欧州出身選手の中心的存在となっていくことが期待されていた。

 ピーターズ自身、PGAツアーやDPワールドツアーへの忠誠を誓うコメントを何度も出していたが、2月16日から米ロサンゼルス郊外のリビエラでPGAツアーのジェネシス招待が開催される際、ピーターズは世界ランキング34位の好位置にいるにも関わらず、同大会の出場者リストに載らず、彼は強い不満をツイッターで発信していた。

 同大会の出場者を決めるプライオリティ(優先順位)リストには、世界ランキングに基づく規定が見当たらず、主催者推薦の枠が通常大会より多いこともあり、ピーターズは出場枠には入らなかったのだが、ピーターズにとっては、そのことへの不満が引き金となり、リブゴルフへの移籍を決意したのだと米欧メディアは報じている。

 そして、さらにもう1人、PGAツアーで3勝の実績を持つ39歳の米国人選手、ブレンダン・スチールのリブゴルフへの移籍も「ほぼ間違いない」と、複数の米メディアが見ている。

 スチールは2023年の年明けごろまでは「どこのツアーでプレーするかは選手それぞれの自由な判断であるべき」としながらも、「リブゴルフへ移った選手は決してPGAツアーには戻ってくるべきではない」と不快感も示していた。

 そして「PGAツアーで今年も頑張り、シーズン最終戦のツアー選手権に出て、その資格で来年のメジャー大会にも出たい。もっと勝ちたい」と語り、今後もPGAツアーを主戦場としていく意思表示をしていた。

 そんなスチールが突然、手のひらを返したようにリブゴルフへの移籍を決めたのだとすれば、高額な契約料はもちろん提示されたにせよ、もはや「お金以外」、いや「お金以上」の「何か」がリブゴルフにはあると感じたからこその「心変わり」なのではないかと見るべきだろう。

 スチールはカリフォルニアの山の中で生まれ育ち、ゴルフ場はおろか、ゴルフ練習場もない環境でゴルフを覚えた。裏庭に穴を掘り、その中に砂を入れた父親の手作りバンカーが、スチールのゴルフの原点だった。

 本物のゴルフクラブでゴルフボールを思い切り打ったのは、自宅から車で片道1時間以上も離れた隣り町のハイスクールに入学し、ゴルフ部に入ったときからだった。

 想像を絶する苦労をスチールが乗り越えられたのは「PGAツアーの選手になりたい」「PGAツアーで戦いたい」という一心からだった。

 その夢を見事に自力で叶えたスチールだが、米ゴルフウィーク誌によると、昨今の彼は「PGAツアー選手の生活は、あまりにも不安定だ」と語り、ケガや病気で戦線離脱したとき、「メジャーリーグの選手なら、試合に出られないときでも球団から手当てが支払われるが、PGAツアーの選手の稼ぎはまったく保証されない」と不満を訴えていたという。

 リブゴルフへの移籍理由は、これまでは「お金のため」だと言われてきた。だが、シーズン2年目の開幕を目前にしたこの時期の相次ぐ移籍は、PGAツアーに対する不満が爆発し、彼らをリブゴルフへ走らせているようにも受け取れる。

 しかし、そうした現象を逆方向から眺めれば、昨今の選手たちの「求めすぎ」や「わがまま」がPGAツアーとリブゴルフの対立や確執を一層激化させているという見方もできる。

 昨年、早々にリブゴルフへ移籍したブルックス・ケプカは、PGAツアーに戻りたがっているという噂も聞こえてきており、米メディアは「世界で最もセルフィッシュ(自分勝手)なケプカ」と表している。

 リブゴルフに関わる問題は、いまなお混沌としているが、とにもかくにも、今週24日からメキシコ・マヤコバのエル・カマレオンで、セカンド・シーズンが幕を開けようとしている。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人のテーマ支援記事です。オーサーが発案した記事テーマについて、一部執筆費用を負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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