NPB初タイムリーを打った日本ハム加藤豪将と、ブルージェイズ初の女性コーチはいかに支え合ったか。
昨年のドラフト会議で日本ハムから3位指名を受けて入団した加藤豪将が、5月25日にNPB初安打を放ち、26日には初打点を記録した。
私は2022年、加藤がブルージェイズからメジャー昇格を果たしたときに、彼を取材する機会を得た。
22年は、メジャーリーグと選手会の労使交渉が決裂し、「ロックアウト」に突入して、スプリングトレーニング開始が大幅に遅れた。しかし、マイナー契約だった加藤は、ロックアウト期間にブルージェイズのキャンプ地施設でトレーニングすることができたのだ。
悲願のメジャー昇格を果たしたときに、早い時期からキャンプ地で練習できたこともよかったかと聞くと、彼はこう答えた。
「メジャーのキャンプが始まる3週間ぐらい前から、新しい環境でコーチと練習できた。それがあったのがすごく大きかったと思います。野手は自分とあと2人くらいしかいなかったので、(本来のスプリングトレーニングならば)ゲレーロ、スプリンガーみたいな選手といっしょにやっているところを、自分が独り占めできた。内野コーチ、打撃コーチ、みんないた。新しい球団と環境なので、自分はこういう選手でこういうことをしないといい結果にならないというのを伝えて、それでプランを作った。それを2月14日からちょっとずつやってきたのが大きかったと思います」。
このときの加藤を支えたコーチの一人がブルージェイズ初の女性コーチ、ジェイミー・リーバーさんである。リーバーさんは、現在はブルージェイズ傘下マイナーのルーキー級で打撃コーチをしている。
今年4月にリーバーさんに会ったので、私は「あのとき、加藤をコーチしたのはあなただったのですね」と確認してみた。
リーバーさんは「私が、というわけではないけれど、私もそのときのコーチのひとりです。マイナーリーグのコーチはみんないたし、彼ともいっしょにたくさんの仕事をし、今でも連絡を取り合う関係を築くことができた」と教えてくれた。
リーバーさんはバイオメカニクスの知識を活かしたコーチングをしている。バッターの目的はヒットやホームランを打つことで同じだが、ひとりひとりの身体は違う。同じ目的を目指しているけれど、それぞれの身体をうまく使って、ちがった方法で達成していくということに魅力を感じているのだという。
「すべての人をクッキーの型にあてはめるようなアプローチは好きではありません。スイングのメカニクスでも、その人の体格、性格にあうものは何か。まず、そこからなのです。それに、理由よりもまず、練習をしたい選手、やる前に理由を聞きたい選手と人それぞれなので、できるだけ個別的にと思っています」と言う。
リーバーさんは加藤のメジャー昇格を支えたひとりだが、リーバーさんは加藤に助けられたと話してくれた。2022年は、ブルージェイズのユニホームを着てプロ選手をコーチするはじめてのシーズンだったからだ。
「彼は本当にすばらしい人で、最初からとても歓迎してくれ、とても協力的でした。私にとっては初めてのスプリングトレーニングでいろいろなことが起こったのですが、彼はスプリングトレーニングを何年も経験しているベテラン選手でしたから、サポートしてくれました。また、親切な言葉をかけてくれました。ブルージェイズで働く女性が何人いるのかということに気づいてくれ、このこと(女性が働くこと)は重要であると考えてくれた」
リーバーさんは、次世代の女性のために悪い評価を残したくないとプレッシャーを感じていた。それだけに、マイナーでさまざまな苦労を重ねても、いつも前向きでフレンドリーな加藤からの言葉は大きな力になったようだった。
加藤は、ちょうどリーバーさんから指導を受けていた時期の2022年3月8日の国際女性デーにThe Players' Tribune Japanのウェブサイトで、ブルージェイズでは性別を問わず、スタッフが雇用されることや、女性であることを理由に軽視されないことについて書いている。ご興味ある方は目を通していただきたい。