狙いは金持ち女性…北朝鮮で「豪華百貨店」相次ぎ開店
北朝鮮が、1988年のソウル五輪に対抗するため、翌年に開催した世界青年学生祝典。それを記念して作られたのが、首都平壌の南の郊外にある統一通りだ。5キロに渡り、数万世帯のマンションが立ち並ぶこの通りに、新たに豪華百貨店が建設されていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
RFAの取材に協力した平壌の幹部によると、この百貨店は、朝鮮労働党が音頭を取って、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の7総局が建設を請け負っている。建設費を投資したのは、柳京経済交流社だ。
ブランド物が大好き
柳京経済交流社は、党の資金確保に重要な役割を果たしてきた力のある企業だ。平壌市内には女性の生理用品から海軍の高速艇まで作っていると言われている12月7日工場を所有、海外では複数のホテル、レストランを経営している。
とりわけ有名なのは、中国の瀋陽にあった七宝山ホテルだ。北朝鮮ビジネスに関わっていた遼寧鴻祥グループとの合弁企業が経営し、ハッカー組織の本部など、北朝鮮の非公然活動の拠点だとの指摘を受けていた。
ところが、中国政府は2016年9月、北朝鮮の核開発に関わったとして丹東に拠点を置いていた遼寧鴻祥グループの馬暁紅総経理に対する調査を行い、グループを事実上の解体に追い込んだ。
それに加え、中国商務省は2017年9月、北朝鮮に対する国連安全保障理事会が採決した制裁決議2375号を受け、北朝鮮の個人や団体によって中国国内に設立された合弁企業などに対し、2018年1月までの閉鎖を命じた。七宝山ホテルも閉業を余儀なくされた。
それでも、柳京経済交流社の威光には陰りがないようで、同社が経営する光復地区商業中心や最近になって新装開店した大聖(テソン)百貨店など、平壌市内の有名豪華百貨店を凌ぐ規模の百貨店を新たに建設しているのだ。新たな店舗を加えることで、外貨稼ぎ業界において独占的地位をさ築こうとしていると、この幹部は述べた。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、新たにオープンする百貨店の名前は統一百貨店だという。柳京経済交流社が巨額の資金を投入して新たな百貨店を建てていることについて、市民の間では「統一通りの象徴にし、さらには南北朝鮮の経済交流拠点にしようとしている」との見方がある一方で、体制の維持に必要な資金を、輸入ブランド品などに目がない富裕層の女性などから吸い上げるのが主な目的との見方もある。
(参考記事:北朝鮮「金持ち女性」たちの密かな楽しみ…お国の指示もそっちのけ)
北朝鮮は、国際社会による経済制裁のおかげで青息吐息だ。特にそのしわ寄せは庶民層が受けている。その一方で、贅沢品を扱う百貨店が次々にできている。国民にの「外貨タンス預金」を吐き出させ、国庫に収めようというのがその目的と言われているが、庶民からは怨嗟の声が上がっている。
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、「丸一日商売したところでいくらも稼げない商人も多いというのに、一方ではコメ100キロ以上買えるほどの値段のバッグをあれこれ選ぶ人もいて閉口する。野菜や雑貨を売っている人たちは、そんな金持ちを睨みつける」と語っている。