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トランプ氏がFRBの利下げに反対する理由

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 11月の米大統領選でホワイトハウス返り咲きを狙うトランプ前大統領は、ブルームバーグ・ビジネスウィークとの単独インタビューで、パウエルFRB議長の任期満了前に解任を目指さない考えを示した(17日付ブルームバーグ)。

 パウエル氏の任期は2026年5月までとなる。パウエル議長は15日、ワシントンのエコノミック・クラブで開かれたイベントで、任期を全うするかとの質問に対し、「全うする」と答えた(16日付ロイター)。

 トランプ氏が大統領に返り咲くとなれば、中央銀行の政策に口を出しかねず、それが意識されていたことで、こういった質問が出ていたとみられる。

 実際にトランプ氏は早速、FRBに対して口出しをしていた。

 トランプ氏は、米金融当局が11月の大統領選前に利下げして、それが経済およびバイデン大統領への追い風となることを控えるべきだと警告してきた。

 11月の米大統領選挙でトランプ氏は物価高による国民への影響を争点のひとつとしている。FRBが利下げをするとなれば、物価上昇を招きかねず、さらにドル安となることで、輸入物価への影響も加味して、利下げに反対してきた。

 通常、国民受けとして選挙などでは減税や金融緩和を掲げることが多くなる。しかし、いまは状況が異なるとの見立てか。

 これには異なる見方もある。

 トランプ氏は16日公開の米ブルームバーグとのインタビューで「我々は大きな通貨問題を抱えている」として為替政策について踏み込んだ。強いドルが問題だと指摘し、人民元と円の弱さを名指しで批判した。米国内の製造業復活を目指し、ドル高是正や関税引き上げを進める姿勢を鮮明にしたのである。

 そうであればどうしてFRBに大統領選までは利下げをするなと言ったのか。これについて18日の日本経済新聞は「バイデン氏を利するような利下げはできるだけ、おさえ込み、自分が大統領になってから利下げを進めてほしいという考えがにじむ」とコメントしていた。

 政治的な圧力などは意識せず、中央銀行は独立性を意識して金融政策を行うべきだが、政治に雁字搦めにされてしまうケースも見受けられるのもたしかである。

 トランプ氏は台湾を中国の脅威から防衛することなど、長期にわたる米外交政策方針にも疑問を呈する姿勢も表明した。ウクライナ侵攻を巡ってロシアのプーチン大統領を罰する米国の取り組みにもクールな姿勢となっている。

 金融政策への影響よりも、むしろこちらの外交姿勢が大きく変化する可能性のほうが、よりリスクとなりかねないし、これは日本にも大きな影響を与える懸念もある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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