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思い起こされる1970年代のオイルショック。ウクライナ危機によるリスクと影響、物価急騰への懸念も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 リスクは突然やってくる。2000年代に入ってからも、ITバブルの崩壊、リーマン・ショック、欧州の信用不安、そして新型コロナウイルス。もういいだろうと思っていたところに、今度はロシアによるウクライナ侵攻という金融市場を揺るがす事態が発生した。

 ロシアによるウクライナ侵攻が今後どうなるのか。これは軍事や国際政治学の専門家でも見通しづらいと思われる。今後何が起きるのかを予測することは困難である。

 しかし、今回のロシアとウクライナの対立は簡単には解消できないものでもあり、これはロシアと西側諸国を中心とした対立にもうつる。

 その西側諸国はロシアの金融経済の封じ込めを行っている。ロシアの大手銀行をSWIFTから排除することによって、ロシアへの経済金融制裁を強めたが、これとともにロシアの中央銀行にも制裁を発動して、為替介入をしにくくさせるなどしたことで、ロシアの金融市場に大きな影響を与えることになる。

 ロシアの通貨ルーブルは急落し、ロシアの中央銀行は20%もの利上げを行った。ロシア国内ではさらにインフレ圧力が強まることも予想される。ロシア国債などの金融資産も下落している。

 これはつまりロシアの金融資産を組み入れて運用している西側諸国の金融機関にも打撃を与えうる。影響が出るのは金融機関だけではない。

 大手石油会社シェルがロシア・サハリンの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から撤退すると発表した。サハリン2は、日本の大手商社も出資する大規模プロジェクトで、これによる日本企業への影響も大きい。

 ウクライナ危機による地政学的リスクを受けて石油や天然ガスなどの価格が上昇し、WTI先物価格は再び100ドル台に上昇した。天然ガスや石炭の価格も急上昇している。穀物価格も上昇しており、日本国内でも今後さらに物価上昇が加速する恐れがある。

 消費者物価指数は前年比0.2%だから問題はないなどと暢気なことは言ってはいられなくなる。企業物価指数はすでに前年比8~9%もの上昇となっており、ここからさらに上昇するとなれば、価格転嫁などが一気に進む恐れがある。

 さすがに1970年代のオイルショックのような事態は起こらないだろうと思うものの、不透明要因も大きいだけに思わぬ物価上昇が引き起こされる懸念は残る。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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