「日本は安保理の常任理事国入りをすべき」米有識者の77%が賛成(2019年5月発表版)
「日本の常任理事国入り」に賛成するアメリカ合衆国有識者は77%
日本が安全保障理事会における常任理事国入りするのを望む声は、アメリカ合衆国ではどれほどの大きさなのだろうか。その実情を外務省が2019年5月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。
国際連合の主要機関の一つ、安全保障理事会(安保理)は、第二次世界大戦における戦勝大国のアメリカ合衆国・ロシア(かつてはソ連邦)・イギリス・フランス・中国で構成される常任理事国と、非常任の理事国10か国(2年毎に改選)で構成されている。今世紀に入ってから世界情勢の変化に伴い、前者の常任理事国について、数か国を追加すべきではとの議論が持ち上がっている。
これに関して、日本が新たに国連安保理の常任理事国となるべきだと思うか否かについて、今調査対象母集団の有識者に聞いた結果が次のグラフ。2007年度から問い合わせの対象としているので、グラフも2007年度以降のみとなっている。
直近2018年度においては77%が同意を示し、反対意見は16%に留まっている。2013年度以降は調査機関の変更とともに内部的な調査仕様の変更が考えられるため、一概に連続した結果として比較するのはいくぶんリスクが高くなるが、2013年度以降は反対意見が減少し、その分賛成意見と回答留保派が増える傾向にある。
直近の2018年度では賛成派が前年度比で増える一方で反対派も3%ポイント増加。回答留保派が賛成派と反対派に回ったと解釈できる動きをしている。現状では賛否を決めかねるとの思惑を持つ有識者が減ったのだろう。いずれにせよ、賛成派が7割台後半で反対派の5倍近い値を占めていることに違いは無い。
反対する人、賛成する人、それぞれの理由
日本の常任理事国入りに賛成する人、反対する人たちは、どのような理由でそのジャッジを示したのか。それぞれの派の人限定で、選択肢の中から当てはまる理由を複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。
第一印象としては、肯定派の方が理由が多数に及ぶこと。回答率がいずれも高い結果となっている。また、肯定派では明確な「日本だからこそ」との理由が上位を占めているものの、否定派では「日本にOKを出すと、同時に(具体的国名は掲げられていないが)『この国はマズイだろ』的な国も安保理入りを求めてくる、せざるを得なくなる可能性が生じてしまう」「そもそも増やすべきでは無いから」といった、日本とは関係の無いレベルでの話が上位についている(「日本はPKOや多国籍軍などへの人的貢献が足りないから」との意見もあるが)。日本の資質そのものに問題があるのでは無く、環境上から否定している場合が多い。今件調査に限れば、そのような解釈をして問題は無いだろう。
もっとも今件はアメリカ合衆国の有識者に限った意見の集約によるもの。アメリカ合衆国全体としてはどのような意見となるのかまでは分からず、さらに当然、他国の動向も大きく影響する。その上、安保理、さらには国連そのものの存在意義が大義名分以上のものでは無くなっているとの指摘も見受けられる。
各国のパワーバランスをはじめとした国際情勢の大きな変容が無い限り、今後も日本をはじめとした複数国が国連安保理の常任理事国入りを求め、それに関する論議が繰り広げられるといった状況が継続するのみで、情勢そのものは大きな前進も後退も無さそうだ。
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※米国における対日世論調査
直近分は外務省がニールセン社に委託し、アメリカ合衆国内において2019年1月に実施されたもので、有効回答数は一般人1036人(インターネット経由。18歳以上)・有識者200人(電話によるインタビュー形式。政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。
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