写真加工アプリの裏には”羞恥心”。【犬耳流行のナゾ】
最近、大学生や10代女性タレントのTwitterやInstagramを見ていると、犬の耳や鼻が生えた写真がよく投稿されています。自分が口を開けるとそれに反応して舌がでる、といった動画なども頻繁に見かけるようになりました。
6月22日放送の「ナカイの窓」でも、菊地亜美が「お酒飲んでなくてもそのアプリを使うと一生笑っちゃう!」と紹介し、話題に。初めて見るとつい「なにこれ?」とギョッとしてしまいますが、いま若者のあいだではこうした「仮装カメラアプリ」が大流行しています。
注目は「スナップチャット」と「スノー」
「スナップチャットって、写真をやりとりするSNSアプリだよね?」と思う方もいるかもしれません。確かにスナップチャットは開くと10秒で消えてしまう写真をやり取りするSNSアプリ。
ですが、実は顔を認証して自分の顔に犬の耳や鼻を合成したり、歌舞伎役者のようなマスクをつけたりして写真や動画を撮れる「レンズ」という機能が特に人気を呼んでいます。このレンズを使って撮った面白い写真を、若者たちは「あとに残らないから」と気軽にやり取りしているわけです。
番組では、ほかにも口を開けると虹が出るといったレンズを中居正広が試し、スタジオの笑いを誘っていました。
また、スノーは写真加工に特化したアプリで、スナップチャットと同じように犬耳加工をしたり、有名人の顔と自分の顔を入れ替えたりといった遊び方ができます。
「詐欺」呼ばわりはされたくない
さて、こうしたアプリが流行っているのはなぜなのでしょう。実際にスナップチャットやスノーを使っている女子大生に聞いたところ、「暇つぶしになるから」「SNSでいいねがもらえるから」といった理由のほかに、「素で自撮りするは恥ずかしいけれど派手な加工ならできる」と答える人が多かったのが印象的でした。
少し前だと、「写真加工アプリ」というと、肌をぼかしたり小顔にしたり目を大きくしたりといった、「美を装う」「自分のかわいさを“盛る”」ことに特化したものを指していました。
しかしそうした「詐欺写真」がSNSに溢れるにつれ、受け手も敏感に。「この写真は詐欺」と揶揄されるようにもなってしまったのです。これはイメージが大事なSNSにおいては、一大事です。
また、自撮り写真に憧れつつも自分の顔を堂々と撮ってSNSにあげるほど自信がない、恥ずかしいという女性もいます。
「自撮りは恥ずかしい」派からも支持
明らかに加工しているとはバレたくない。でもかわいく見せたい。
素顔を思いきり出すのは勇気がいる。でも写真をアップしたい。
そうした女性のニーズを満たしたのが、今回の「仮装カメラアプリ」と言えるでしょう。
というのも、実は「スノー」では犬耳を加工すると同時に目を少し大きくする加工もかかります。「木を隠すなら森の中」ならぬ「盛りを隠すなら加工の中」。多少普段の自分よりかわいく見えても、犬耳をつけているんだから、いつもの自分と違って見えるのは当たり前と開き直れるわけです。
さらには、素顔を見せることなく「こんな面白い写真撮れたよ!」とアピールできることは、「自撮りしたいけど恥ずかしい」派の心もキャッチ。
複雑なコミュニケーション心理
自意識、評判、アピール、盛り……。SNS時代の写真・動画は、ことほどさように複雑なコミュニケーション心理を担っているのです。
さて、今は大流行している仮装カメラアプリですが、早くも、定番の犬耳や猫耳には飽きてきつつあるのも事実。一時の流行で終わるのか、「羞恥心解消」というジャンルを確立するのか。今後の注目が集まります。
(「察しない男 説明しない女」著者 作家・心理カウンセラー)