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フジの異色ドラマ「将棋めし」スタート!女性棋士の真剣勝負

松本博文将棋ライター

 将棋界では現在、15歳の天才中学生、藤井聡太四段の大活躍が話題となっています。そしていまや、史上空前とも言われるほどに、将棋ブームが巻き起こっています。そんな中、フジテレビでは、将棋のドラマが始まりました。

「どうせブームに便乗した、適当な設定のドラマなんだろう」

 もし万が一、そういうことを思う方がいるとすれば、それは勝手読みの間違いです。筆者は将棋界のトリヴィアルな情報を追いかけ続けて三十年以上の古参ですが、よくぞここまで、というほどに、丹念な取材に基づいて、ディティールが再現されています。

 主人公の峠なゆたは女性で、将棋の新鋭六段。待ったのできない盤上の一手に人生をかける、プロ棋士の一人です。

 将棋という競技は、真剣勝負ともなれば、過酷で厳しいもの。これまでの将棋ドラマでは、食うか食われるか、詰むや詰まざるや的な、ハードボイルドな設定が多かったものです。

 しかし、今回のドラマは違います。タイトルからして、「将棋めし」です。腹が減っては戦はできぬ。勝負の合間に、棋士は何を考え、そして何を食べているのかにスポットを当てた、本邦初の異色ドラマです。

 峠なゆた(通称なゆたろう)を演じるのは、人気女優の内田理央(うちだ・りお)さん。そのライバルの若手棋士役は、上遠野太洸(かとおの・たいこう)さん、稲葉友(いなば・ゆう)さんと、本格派の俳優陣で固められています。

松本渚さんの原作
松本渚さんの原作

 同名の原作である松本渚さん作の漫画は、現在『コミックフラッパー』(KADOKAWA・メディアファクトリー)で連載中。単行本第1巻が発売されています。

「メシもいいけれど、盤上も興味があるなあ」

 というハードボイルドな将棋ファンの方は、原作やドラマで扱われている棋譜のクォリティの高さにも注目です。棋譜の監修を担当しているのは、かつて「王位」のタイトルを保持し、現在は将棋界トップ10のA級で活躍中の広瀬章人八段です。

 地上波(関東地区)では8月2日の深夜26時40分に、第1回が放映されました。

初回はカレー丼を紹介、実際に食べてみた!

 第1回で取り上げられているのは、蕎麦店「ほそ島(じま)や」の人気メニュー、カレー丼です。お店は東京・千駄ヶ谷、将棋会館の近くにあります。

ほそ島やののれん
ほそ島やののれん

 ほそ島やはカレーライス、カレー丼、カレー南蛮、どれも美味しい。とはいえ、これらのメニューは似ているようで、実は少しずつ違った、独自の工夫が凝らされています。勝負の最中、それに気づいたなゆたが取った作戦とは・・・。

 放映を見られない、あるいは見逃してしまったという方は、FOD(フジテレビオンデマンド)で配信中です。

 筆者は放映を見てすぐ、お昼はカレー丼にしようと決意。すぐに、ほそ島やさんに行ってきました。同じことを考えている人は多く、多くの人が、カレー丼を注文していました。

豚バラ肉のうま味あふれるカレー丼
豚バラ肉のうま味あふれるカレー丼

 ほそ島やでは、過去に藤井聡太四段がチャーシュー麺を注文した際、それが広く報道され、しばらくの間、すぐに売り切れていた、ということがありました。今後も「将棋めし」、すなわち「勝負めし」のブームは、続いていきそうな気配です。

※筆者もcakesにおいて、「棋士とメシ」という連載をしております。将棋めしのディープな世界を探求されたい方は、ぜひお立ち寄りください。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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