観る人は減っているがその人の視聴時間は増えている…職種別・20年前と今のテレビ視聴の違い
人の心をつかんで離さない、はずのテレビ(放送、番組)も、技術進歩とメディアの多様化でその立ち位置は変化しつつある。20年前と現在におけるテレビ視聴の実情を、NHK放送文化研究所が2016年2月に発表した2015年国民生活時間調査の報告書をもとに、生活リズムの違いが生じる職種別に見ていく。
今件ではテレビを観ている人を「テレビ行為者」と表現しているが、これは1日15分以上テレビ(据え置き型テレビの他にワンセグによる視聴も含む。録画視聴や購入・レンタルソフトの視聴は除く)を観ている人を意味する。要は実質的に回答者が「テレビを観ている」と自認できるほどの視聴をしている人のことを指す。
職種の「勤め人」とは「有職者」(職を有している人)のうち「雇用される側」(販売職・サービス職、技能職・作業職、事務職・技術職、経営者・管理職)を意味する。有職者のすべてが勤め人では無い。
人々の生活におけるポジションが著しく変化をとげているテレビだが、その利用のされ方はひとりひとりの職種によっても大きく異なる。無職(多分に高齢年金生活者)は余暇時間を多く有しているのでテレビにも長時間を割けるが、学生や勤め人は難しい。
結果として無職や主婦はテレビの行為者率が高いが、勤め人は低めとなる。これは今調査に関して取得可能なもっとも古い調査結果値の20年前・1995年でも、直近となる2015年でも変わりはない。なお農林漁業者の2015年・日曜分が空白だが、これは該当回答者が少数で統計値が算出できなかったことによるもの。
平日では主婦や無職、農林漁業者のような、時間の柔軟性が高い職種は高め、勤め人や学生は低めの値が出ている。そして経年では元々低い値だった職種が大きく下げ、時間に余裕がある職種はあまり下げていない。テレビの優先順位が下がる、選択肢が多様になった結果、多忙な人が別のメディアを選び、テレビを選択から除外した・順位が下がったため手をつける機会が減ったことがうかがえる。特に学生や勤め人の下げ具合が著しい。
休日も平日と状況はあまり変わりない。しかし平日と比べて休日は時間に多少の余裕があるはずで、それでもなお平日に多忙な勤め人や学生が相変わらず20年の間に大きな減少を示している。単に「時間が足りなくて優先順位の低いテレビを観る人が減った」だけでなく、「趣向上の選択の結果、テレビ視聴を除外した」人が多数に及んでいることが分かる。とりわけ若年層がほとんどを占める学生の下げ幅が注目に値する。
一方、テレビを視聴している人に限定した視聴時間は20年で増加の動きにある。
学生≒若年層のテレビ離れは本格的で、視聴者ですら視聴時間を減らしているが、それ以外は大よそ20年間で同時間、むしろ無職や主婦に限れば大きな増加の流れにある。とりわけ無職の時間の増加ぶりが著しいが、これは中堅層までの無職よりも、高齢者≒テレビ愛好家の無職が増えたことも一因ではある。もっとも20年前も今も、学生はテレビを観ている人でもさほど長くない、無職や主婦はテレビ視聴時間が長い状態に変わりはない。
これから20年後、同じようにテレビは視聴され続けているだろうか。あるいはテレビの姿形そのものが大きく変わっているかもしれないが。
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