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台風5号で東北は未曾有の大雨も、ノロノロ進行に加え、暖湿流と東風のダブルパンチ

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
雲の様子(ウェザーマップ)

東北太平洋側を直撃へ

台風5号予報円(ウェザーマップ)
台風5号予報円(ウェザーマップ)

最新の台風予報円(気象庁発表)

台風5号は、きょう10日(日)午前9時現在、日本の東海上を時速15キロで北に進んでいます。今後は台風の東側で強まる太平洋高気圧に押されるように西寄りに曲がり、あさって12日(月)午前9時には、宮城県から岩手県にかけての沿岸にかなり近づき、上陸するおそれが高くなっています。その後は、東北を横切り、日本海へ抜けた後、14日(水)にかけて、熱帯低気圧に変わる見込みです。

この台風の特徴は、スケールは比較的小さいものの、中心付近には活発な雨雲があり、しかも自転車並みのノロノロ速度で進むため、中心付近が通過する地域では、際立った大雨になるおそれがあることです。

ノロノロ進行に加え、暖湿流と東風のダブルパンチも

暖湿流と風の予想(ウェザーマップ)
暖湿流と風の予想(ウェザーマップ)

上図はあす11日(日)午後11時の台風5号に伴う暖湿流と風の予想です。台風5号は355K以上の暖湿流で形成されていて、しかも中心付近には360K以上の暖湿流もみられます。この暖湿流の数値は、気温の高さと水蒸気の量を合わせたような指標で、特に360K以上の暖湿流は熱帯地方にあるような暖湿流といえ、本州付近では、台風に伴って出現する以外はほとんど見られないような際立った暖湿流といえます。

この暖湿流だけでも、かなりの大雨をもたらしますが、上図にあるとおり、台風5号に伴う反時計回りの東風がぶつかる岩手県では、一段と雨雲が発達し、これまでに経験したことがないような大雨となるおそれがあります。

最大400ミリから600ミリ以上の計算も

48時間の予想雨量(ウェザーマップ)
48時間の予想雨量(ウェザーマップ)

あす11日(日)からあさって12日(月)にかけての48時間の予想雨量は上図の通りで、際立った暖湿流と東風のダブルパンチを受ける岩手県の太平洋側で、400ミリ以上の紫色が出現しています。また局地的には600ミリ以上の計算ともなっていて、このあたりの8月の平年の雨量が150ミリから200ミリ位ですから、実に48時間で、8月1か月分の2倍から3倍もの雨が降る計算となっています。

気象庁発表の大雨情報でも、岩手県や宮城県の48時間雨量は、多い所で400ミリから500ミリ程度と予想されていて、上図と同じような記録的な予想雨量が発表されています。

経験したことがないような大雨のおそれ

大雨の再現期間(ウェザーマップ)
大雨の再現期間(ウェザーマップ)

参考までに、上図は予想されている48時間の雨が何年に一度程度の大雨に相当するのかをみたもので、再現期間の計算値となります。これによると、岩手県の東側は紫色に覆われていて、計算上は50年に一度程度、あるいはそれ以上に頻度の少ない大雨と計算されています。これはまさに経験したことがないような大雨ということにもなり、特別警報が出てもおかしくないような大雨となるおそれがあります。

雨は台風5号が近づいてくるあす11日(日)朝以降強まり、台風5号の直撃が予想される12日(月)にかけてピークとなるでしょう。予想通りの雨が降れば、土砂災害や低い土地の浸水、河川の氾濫など、大雨災害の危険度が急激に高まり、甚大な災害にむすびついてもおかしくありません。

荒天になる前から避難経路や避難場所の確認を行うとともに、早めの台風対策を行ってください。また大雨災害に加え、暴風や高波、高潮による災害にも備えなければなりません。今後、台風5号の進路が北や南へずれてくれば、大雨の降りやすいエリアも変わってくる可能性がありますので、常に最新の台風情報を確認するようにしてください。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

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