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大谷翔平の登場で明らかになったベーブ・ルース以外に存在した2人の二刀流選手

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
いよいよMLBの舞台で本格的な二刀流挑戦が始まった大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 まさに鮮烈デビューと呼ぶに相応しいだろう。現地1日のアスレチックス戦でMLB初登板を飾った大谷翔平選手は6回3安打3失点6奪三振の内容で、勝利投手になった。

 先発投手として評価されるクォリティ・スタートのノルマを果たし、失点された2回以外はほぼ完璧な内容だった。スプリングトレーニング中の投球成績のため米メディアからは開幕メジャー入りに懐疑的な見方も出てきていたが、この日の投球でそれらの意見を完全に沈黙させてしまうことになるだろう。この日の投球だけで大谷選手の二刀流挑戦が全面的に受け入れられたとは思わないが、これ以上の理想的な船出はないだろう。

 MLB公式サイトではこの日の登板を受け、「開幕戦に投手以外で先発出場し、さらに開幕10試合以内で投手として先発したのは1919年のベーブ・ルース以来」として賞賛している。確かに日米で大谷選手の二刀流挑戦をベーブ・ルース選手と比較しがちだが、どうやら二刀流挑戦は彼だけではなかったようだ。

 エンゼルス広報が発表したところでは、開幕戦出場に拘らずに「開幕10試合以内に野手、投手として先発」という条件になると、実は1920年に2人の選手が存在しているのだ。しかも両選手の略歴を調べてみると、ベーブ・ルース選手以上に本格的に二刀流に挑戦していたことが判明した。

 まず1人がジョー・ブッシュ選手だ。1912年にフィラデルフィア・アスレチックスでMLBデビューを飾ると、翌年から本格的な二刀流を始める。結局1928年にMLB最後のシーズンを過ごすまでの間、1919年と1927年を除くすべてのシーズンで投手と野手でそれぞれ10試合以上の出場を果たし、投手として通算196勝、打者として313安打を記録している。

 しかも1918~21年はレッドソックスに在籍しており、18、19年はベーブ・ルース選手とチームメイトだったのだ。つまり当時のレッドソックスには二刀流選手が2人存在していたということなのだ。ちなみにベーブ・ルース選手が本格的に二刀流に挑戦したのは1914~19年のレッドソックス時代なので、もしかして彼のモデルはブッシュ選手だったのかもしれない。

 もう1人がクラレンス・ミッチェル選手だ。1911年にデトロイト・タイガースで二刀流としてMLBデビューを飾ると、4年間のブランクを経てレッズに入団した1916年から本格的に二刀流を開始する。そしてMLB最後のシーズンとなった1932年まで二刀流を続け、投手として通算125勝、打者として324安打を残している。

 ミッチェル選手のもう一つ特筆すべきところはMLBから離れてもマイナーリーグで現役を続け、結局51歳となる1942年まで二刀流として公式戦出場経験を有しているのだ。その鉄人ぶりも驚異というしかない(ちなみにブッシュ選手も38歳の1931年までマイナーで現役を続けている)。

 2人の選手に共通しているのは、現役最後まで二刀流を貫き通したこと、そして投手としてはまずまずの成績を残しているが打者としては決して十分な実績を残せなかったことだ。現在の大谷選手は1918年のベーブ・ルース選手以来の「10勝&10本塁打」達成を期待される立場であり、これら2選手から比較すれば“規格外”の二刀流選手といえるだろう。

 だがベーブ・ルース選手以外にも二刀流選手が存在し、しかも2選手ともに現役中は二刀流を貫き通したという事実は大きい(今更説明する必要はないが、ベーブ・ルース選手はヤンキース移籍後は二刀流をほとんど止めてしまっている)。大谷選手が今後二刀流を続けていく上でも、大きな刺激になることだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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