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秘境の温泉というロマンを求めて、ケーブルカーで行く露天風呂の温泉に泊まってみた

泉よしか女子目線温泉ライター

日本全国、温泉の湧いていない都道府県はありませんが、四国は全体的に温泉が少ないエリアでもあります。特に温度の高い温泉が少ない傾向に。

そんな四国の徳島県にも、実は奇跡のような秘境の温泉があります。それが「祖谷(いや)温泉」

祖谷温泉には一軒宿の「和の宿 ホテル祖谷温泉」が建ち、専用のケーブルカーで渓谷の谷間に下りれば、そこには湧いたまま手を加えない本物の源泉掛け流しの温泉と仙境のような風情が待っています。

祖谷温泉とは、どんな温泉?

祖谷渓の小便小僧
祖谷渓の小便小僧

祖谷渓の観光名所の一つに切り立つ崖の上に立つ「小便小僧」の銅像があります。北側からアクセスすると、その手前あたりからちらりと見える、まるで崖に張り付くように建つ一軒の旅館、それが今回の目的地「和の宿 ホテル祖谷温泉」でした。

ここに至るまでの道もなかなかの難所で、まさに秘境にやってきた感があります。
祖谷温泉がある辺りは、風呂の谷といった地名が使われていたことからも、自然のお湯が湧いていたことを伺わせます。
正確な記録が残るのは、大正14年の四国水力電気株式会社によるトンネル工事に際に硫化水素臭のする温水が出たというもの。そして昭和47年に待望の「ホテル祖谷温泉」がオープンします。この時から私たち一般の旅行客も気軽にこの温泉に入れるようになりました。

ケーブルカーで谷底の露天風呂へ

早速、専用のケーブルカーに乗って、露天風呂まで下りてみましょう。「ホテル祖谷温泉」は日帰り入浴も可能ですが、私は宿泊したのでチェックインを済ませてからケーブルカー乗り場にやってきました。

このケーブルカーはなんと四代目。印象的な外観は谷を穿つ祖谷川の明るいエメラルドグリーンにイワツツジの花が、内装は徳島県の名産 ジャパンブルーと呼ばれる藍の色にヤブツバキの花が描かれています。いずれもロックな壁画絵師 木村英輝氏のデザインです。

出発進行は先頭に乗った乗客の役目。子連れで来たら絶対に喜ぶシチュエーションですね。
およそ5分の乗車時間を経て露天風呂に到着。ちなみに外の景色が良く見えるようにと、ケーブルカーの照明は少し暗く設定されています。

これぞ秘境の湯!「渓谷の湯」と「せせらぎの湯」

長方形をした「渓谷の湯」
長方形をした「渓谷の湯」

ケーブルカーで降りた谷底には、「渓谷の湯」「せせらぎの湯」、そして貸切露天風呂である「やまぎりの湯」の3つのお風呂があります。

以前は「渓谷の湯」が男湯、「せせらぎの湯」が女湯固定でしたが、現在は一日ごとに男女を交代しています。ですから泊まって朝夕に入浴すれば両方に入れるわけ。日帰りの場合はどちらか片方だけしか入れませんが。

川に向かって張り出すように作られた「せせらぎの湯」
川に向かって張り出すように作られた「せせらぎの湯」

筆者が泊まった日の女湯は、到着日が「渓谷の湯」、翌日が「せせらぎの湯」でした。浴槽の形や雰囲気は異なりますが、源泉は共通、そして渓流や対岸がよく見えるという点も同じです。

営業時間外の早朝に取材で特別に撮影させてもらったため、周辺はまだ暗い
営業時間外の早朝に取材で特別に撮影させてもらったため、周辺はまだ暗い

この時の湯舟の温度は37度弱。一般的な温泉よりはぬるめですが、ほぼ体温と同じぐらいの温度のため、のぼせにくい不感温浴が楽しめます。そもそも加熱も加水もせず、そのまま気持ちよく入浴できる温度で湧いていることが特別なのです。
四国の温泉の多くが、沸かさないと冷たくて入れないことを考えると、祖谷温泉の温かさは本当に貴重です。

祖谷温泉はほんのりとゆで卵のにおいのするお湯で、入浴して感じる一番の特徴はアワを多く含むこと。アワは温泉の鮮度のバロメーターの一つでもありますが、こちらのアワはとても繊細でシルキー。まさに極上の肌触りが楽しめます。

祖谷温泉は肌にびっしりと細かいアワが付く
祖谷温泉は肌にびっしりと細かいアワが付く

このお湯にのんびりと浸かりながら、渓谷を流れる川を眺める…まさに至福のひと時としかいえません。
実は訪問時のお天気には恵まれなかったのですが、雲が流れ、霧がかかる様子も、人里離れた仙境を思わせる幻想的な美しさでした。

インフィニティな展望風呂「雲遊天空の湯―そらのゆ―」

「和の宿 ホテル祖谷温泉」にはもう一ヶ所お風呂があります。それは本館2階にある展望風呂「雲遊天空の湯―そらのゆ―」
使っている源泉は「渓谷の湯」「せせらぎの湯」と同じですが、ケーブルカーで降りなくても楽々アクセスできる館内にあり、洗い場やシャンプーなどのアメニティもそろっているのがこちら。
お湯は加温及び温度調節のための循環を行っていますが、その分、より入浴に適した温度になっています。

画像提供:和の宿 ホテル祖谷温泉
画像提供:和の宿 ホテル祖谷温泉

何より窓の外の眺めが素晴らしい。新緑、紅葉、雪景色と、季節ごとに絵のような絶景が湯船につかりながら存分に鑑賞できます。お風呂の作りも景色がインフィニティに見えるように工夫されています。

お部屋や食事も魅力の「ホテル祖谷温泉」

お風呂以外についても紹介しましょう。客室は全部で20室(2023年12月時点)。一般客室のほかに露天風呂や展望風呂付きのお部屋もあります。
個人的には全てのお部屋にマッサージチェアがあることが嬉しかったです。

食事はできる限り地元の食材を使っているというお話で、山の中の秘湯とは思えない洗練された内容でした。

4種の地酒の飲み比べ
4種の地酒の飲み比べ

地酒の飲み比べや、徳島の幻の果実「ゆこう」を使ったゆこう・ソーダなども楽しめます。

つなぎを使わないことを特徴とする祖谷の郷土料理「祖谷そば」も供されます。

朝食一例、手前が和食で奥が洋食
朝食一例、手前が和食で奥が洋食

朝食は和食と洋食が選べます。またサラダや飲み物はビュッフェ式で、お好みでセレクトできるようになっています。

雲の上テラス
雲の上テラス

もう一ヶ所紹介したいのは、本館のケーブルカー乗り場横にある展望テラスの「雲の上テラス」。天気が良い日の写真でなくて申し訳ないのですが、深く切り込むV字の渓谷に目を奪われます。
祖谷渓の絶景を背景に写真を撮ろうと思っても、多くのスポットでは人物の背景が山側になってしまいがち。しかしここならV字渓谷と一緒に撮影できます

テラスの横から撮影することもできるのでチャレンジしてみて下さい。

貸切露天風呂は源泉が違う!? 独占する贅沢も

貸切露天風呂「やまぎりの湯」の入口
貸切露天風呂「やまぎりの湯」の入口

最後に貸切露天風呂「やまぎりの湯」を紹介します。追加料金は掛かりますが、こちらのお風呂は宿泊でも日帰りでも利用可です。
フロントで予約して鍵を借りてからケーブルカーで降りてください。

貸切露天風呂「やまぎりの湯」
貸切露天風呂「やまぎりの湯」

実はここだけ、他のお風呂と源泉が違います。とはいえ泉質まで違うわけではなく、ほんの少し源泉温度が高いといった程度なのですが、それ以上に大きな違いがあるとすれば、やはり小さなお風呂に大量の源泉が注がれていることでしょう!

「渓谷の湯」「せせらぎの湯」ですら極上の温泉であるというのに、「やまぎりの湯」はさらにお湯遣いが贅沢で、鮮度感が抜群に高い。加えて、この素晴らしいお湯を貸切で使っているという満足感も味わえます。
「ホテル祖谷温泉」を訪ねたら、ぜひこちらの貸切露天風呂も利用してみて下さい。

和の宿 ホテル祖谷温泉
住所:徳島県三好市池田町松尾松本367-28
電話:0883-75-2311
公式サイト:和の宿 ホテル祖谷温泉(外部リンク)

※2024年1月8日から館内改修工事のため一部の日程がしばらく休館になります(期間中でもオープンしている日もあります)。詳細は公式サイトをご確認ください。

女子目線温泉ライター

有名温泉から穴場の温泉まで、秘湯、旅館、ホテル、共同浴場、スーパー銭湯や絶景温泉など日本全国、思わず行ってみたくなる温泉やオトクな旅行情報を発信します。取材・執筆のご依頼は、公式サイト「子連れ温泉ガイド」メールフォームかSNSのメッセンジャーからご連絡ください。 温泉ソムリエマスター/温泉観光実践士/サウナ スパ健康アドバイザー/温泉ビューティー&ダイエットソムリエ

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