VRの未来は誰のものか? 新「監視資本主義」便利は新たな不便を生む
施設の集客減はすべて新型コロナウィルスのせい?!
世界の名だたる大型テーマパーク、日本国内もそれらを筆頭に、大手ゲームパブリッシャーが運営するアミューズメント(ゲームセンターを含む)施設までもが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響をモロに受け、海外からのインバウンド需要の激減の憂き目にあうとともに、国内の顧客離れが急速に進んでいる。
東京でのGo To トラベルとGo To イートキャンペーンもそれぞれ始まったが、消費者が望んでいたのは観光旅行や、押さえていた食欲を満たすための消費に過ぎず、テーマパークやアミューズメント施設のような、多人数接触の可能性を想起させるものへの需要促進には至っていない状況だ。
閉場相次ぐ国内のアミューズメント施設
2019年7月12日、バンダイナムコアミューズメントが、日本のバーチャルリアリティ(以下VRと略す)シーンをけん引すべく、池袋サンシャインシティ・ワールドインポートマート3階に開業した「アニメとゲームに入る場所 MAZARIA(マザリア)」は惜しまれながら8月31日に閉場した。
(写真 池袋マザリア正面エントランス 筆者撮影)
そして大阪で孤軍奮闘していたVR ZONE OSAKA(大阪)も、10月25日での閉場が決定した。インバウンド需要の激減のなか、多人数が接触する可能性を回避するという営業努力の甲斐もなく閉場となってしまったことは非常に残念である。
また、VR関係施設ではないが、株式会社セガの秋葉原におけるフラッグシップ店舗だった「セガ秋葉原2号館」も8月30日で閉館した。
この店舗は2003年に倒産した「第一家庭電器」の店舗の跡にできて以来、万世橋のたもと、秋葉原のシンボリックな存在だったこともあり、閉館を惜しむ声も多い。そのほかにもタイトーステーション系、イオンファンタジー系などの店舗閉店の情報もある。おそらく、中小規模のアミューズメント施設の閉店や倒産は把握しきれないほど多いのではないだろうか。
そしてそれらは新型コロナウィルス感染症が沈静しない限り復活の見込みはないと思っていいだろう。
CAセガジョイポリスのXRアトラクション「トーキョー・ゴジラ・ミュージアム」
CAセガジョイポリスという名称を読んで、読者のかたは何だか違和感がある……と感じたかたも多いと思うが、CAセガジョイポリス株式会社は、株式会社セガやセガサミーグループの関連会社ではなく、2017年1月1日に香港上場企業であるChina Animation Groupからの出資を受け別会社になっている。
かねてからあったセガという名称や、ジョイポリスという名称を変更しない背景は、その歴史やブランド、コンテンツへの信頼があり、そこに潤沢なチャイナマネーが投入され、日本ローカルの運営力をそのまま活かすという、よい意味で、君臨すれども統治せずという采配を感じる。
さて、CAセガジョイポリスが、10月1日から、港区台場の東京ジョイポリスにおいて、NTTドコモと東宝が共同製作したオリジナルXRコンテンツ「トーキョー・ゴジラ・ミュージアム」を期間限定(2021年5月まで)で開催している。
(写真 「トーキョー・ゴジラ・ミュージアム」東京中心地を再現したジオラマ 筆者撮影)
先行して筆者も体験をしたが、まず「XR」とは、VR、AR(オーグメンテッド・リアリティ)、MR(ミックスド・リアリティ)などの多様な仮想を加えた新しい現実世界を演出する体験のことを総称している。
そして、「トーキョー・ゴジラ・ミュージアム」は、映画「シン・ゴジラ」の制作スタッフが製作した150分の1のサイズの東京都心のジオラマのなかでゴジラを迎え撃つ自衛隊の攻防を映像体験するもの。体験者はMagic Leap 1を装着し、XRグラスを装着した状態で、実際の映画のシーンとクロスしたXR演出を楽しむことで、ゴジラの戦闘シーン、破壊シーンをリアルに体験することができる。
VRやアミューズメント系施設が厳しい環境下にあるなかで、このような新しい体験創造というチャレンジは大いに評価したい。
しかし、XRを広義のVR体験として世の中に多く広めるには入場料以外に体験料金を徴収するのではなく、入館者全員が無料で「トーキョー・ゴジラ・ミュージアム」を体験してもらうほうが将来にとってはプラスなのではないかと感じた。
(写真 「トーキョー・ゴジラ・ミュージアム」Magic Leap 1装着中の筆者)
VRの未来はさらに広がるのか…?
前述したように日本の大手ゲームパブリッシャーがVRから軒並み撤退しているなか、個人的にVRの近未来はどうか?という点を最後に記しておきたい。
(写真 オキュラスクエスト2公式サイトより引用)
よい要素としては、マーク・ザッカーバーグ氏率いるフェイスブック社の「Oculus Quest 2(オキュラスクエスト2)」が10月13日に発売予定だ。値段も64GB版が37100円、256GB版が49200円となっており、コストパフォーマンスも素晴らしい。予約も順調に推移している様子で、おそらく、ザッカーバーグ氏はオキュラスクエスト2でVR市場を拡大し、顧客とそのビッグデータを手中に収めたいはずだ。
さらに、11月12日、プレイステーション5の発売とともにソニー・インタラクティブエンタテインメントもPSVRをさらに活性化すべくコンテンツを導入してくるに違いない。
このように、オキュラスクエスト2やPSVRを用いて、VRやAR、MR向けの未来のクリエイティブに挑む開発者にとっては願ってもない環境が年末近くにプレゼントされるわけだ。
しかし、個人的に懸念しているのはフェイスブック社がVR市場を寡占化することだ。
すでにフェイスブックは、GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)の一員としてSNSからの個人データの商用利用を促進している企業で、オキュラスクエスト2の導入に成功すれば、5感を伴う情報を手にすることになる。
日本ではあまり報道されていないが、欧米ではGAFAにおけるユーザー囲い込み、データの商用活用と世論操縦に活用しているという批判が相次ぐ。それらをもとに本家アメリカでもGAFA解体論と監視資本主義への抵抗が大きな社会問題になっている。
VR、AR、MRの危険視すべき点は、今まで以上に人々は考えなくなり、動かなくなるという点だ。
便利で自由な世の中は、最終的には生きていくにとても不便であり不自由であることを改めて認識する必要があるのではないだろうか。
便利は新たな不便を生むことを意識したほうがいい。
※「トーキョー・ゴジラ・ミュージアム」記
体験料金は、入場券で入場している方は1回1000円、パスポートチケットで入場している方は1回500円。体験料金とは別に、東京ジョイポリスの入場チケットが必要。年齢制限14歳未満は利用不可、14~17歳は保護者の同意が必要。開催期間は2021年5月31日までを予定。
YouTube 黒川塾 96チャンネル も参照ください。
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