ほぼ不可能だと思われた通算700本塁打を史上最年長で達成したアルバート・プホルスの劇的過ぎる復活劇
【史上最年長で通算700本塁打を達成したプホルス選手】
今シーズン限りでの現役引退を表明しているアルバート・プホルス選手が現地時間の9月23日のドジャース戦に出場し、第2打席から2打席連続で本塁打を放ち、ベーブ・ルース選手、ヘンリー(通称ハンク)・アーロン選手、バリー・ボンズ選手に次ぎ、史上4人目の通算700本塁打に到達した。
1980年1月16日生まれのプホルス選手はこの日42歳251日を迎え、史上最年長での金字塔到達となった。
ちなみに過去の3人は、ルース選手が39歳157日、アーロン選手が39歳166日、ボンズ選手が40歳55日で通算700本塁打を達成している。
またプホルス選手は2018年に通算3000安打も達成しており、通算3000安打と通算700本塁打をダブルで達成したのは、アーロン選手に次いで2人目の快挙となった。
【通算22シーズンで年間50本塁打は一度もなし】
2001年4月2日のロッキーズとのシーズン開幕戦に先発出場したプホルス選手は、21歳76日でMLBデビューを飾っている。
そして開幕4試合目となる同6日のダイヤモンドバックス戦で記念すべき第1号本塁打を放ったのを皮切りに、シーズン22年目、通算3072試合目で通算700本塁打に辿り着いた。
シーズン22年目での大台到達というのも、ルース選手(21年目)、アーロン選手(20年目)、ボンズ選手(19年目)と比較して、最も時間がかかっている。
今シーズンはアーロン・ジャッジ選手がア・リーグの年間本塁打記録の更新を間近に控え、改めて年間60本塁打が注目を集めているが、ルース選手とボンズ選手が年間60本塁打以上を記録している一方で、プホルス選手はアーロン選手同様に一度も年間50本塁打に到達したことがない。
さらにアーロン選手は本塁打王タイトルを4回獲得している一方で、プホルル選手は2度しかない。それだけ時間をかけ、地道に本塁打を積み重ねていったというわけだ。
【7月にバットを構えた手の位置と角度を変更し打撃開眼】
ただ今シーズン前半戦のプホルス選手は、明らかに打撃不振に陥っていた。前半戦の成績は打率.215、6本塁打、20打点、OPS.676に止まり、42歳という年齢も加味して、まさか彼が今シーズン中に通算700本塁打に到達するなんて誰1人として想像できなかったはずだ。
だがMLB史上屈指のスラッガーが、そのまま終わることはなかった。MLBネットワークのインタビューに応じたプホルス選手によれば、昔のビデオをチェックしながら日々打撃フォームの調整を続けていたという。
その結果バットを構えた手の位置と角度に注目し、バットを立てて構えるように変更していった。
そして7月7日のブレーブス戦に代打で登場し、内角低めの速球をライナーで左翼に運ぶ犠打を放ってことで、何か手応えを掴むことができた。そこからその打撃フォームを維持し続けた結果、打撃が徐々に上向き後半戦の快進撃へと繋がっていったようだ。
今振り返ってみれば、プホルス選手がオールスター戦でホームランダービーに出場し、1回戦でシード1位のカイル・シュワバー選手を破り2回戦に進出できたのも、すでに打撃開眼の徴候が出ていたからなのではないだろうか。
【今でもMLBトップクラスの長打力を見せつける】
すでにプホルス選手は通算700本塁打に到達しなかったとしても今シーズン限りで現役引退する考えに変わりがないと明らかにしていただけに、見事なフィナーレを用意してくれたプホルス選手に感謝しかないし、ファンも心置きなく彼を見送れることになったのではないか。
ただ米メディアが指摘しているように、もし2020年が新型コロナウイルスの影響を受けず通常シーズンを消化できていたとしたなら、プホルス選手は確実に通算3位のルース選手(714本)を上回る可能性があったという寂しさは拭い去ることはできないだろう。
実際MLB公式サイトで記録関連を専門に扱っているサラ・ラングス記者によれば、8月14日以降の本塁打数を見ると、プホルス選手はジャッジ選手に次いで本塁打を放っており、今でもMLBトップクラスの長距離打者であることを実証してみせている。
ちなみにルース選手は40歳で迎えたシーズンで6本塁打に終わり、シーズン終了後に現役を引退し、アーロン選手も42歳で迎えたシーズンで10本塁打に終わり、そのまま現役を引退している。
一方ボンズ選手は42歳で迎えたシーズンで28本塁打を記録し、そのまま現役続行を希望しながら、薬物問題に揺れる彼と契約するチームが現れず、自然と身と引くしかなかった。
同じく42歳のシーズンを送っているプホルス選手が、すでに21本塁打(シーズン後半戦だけで15本塁打)を放っている姿を見ていると、まだグランドに立ち続けて欲しいと願うファンも少なくないだろう。
とにかく現役最後のシーズンを単純な思い出作りなどにせず、最後まで理想の打撃を追い求め続けたプホルス選手のプロフェッショナリズムに敬意を表するばかりだ。