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東日本大震災から農地の復興はどこまで進んだのか

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

農林水産省は10月22日、最新の「耕地面積」を発表した。2013年7月15日時点の全国の耕地面積(田畑合計)は453万7,000ha(ヘクタール)となっており、前年比では1万2,000ha(0.3%)の減少となった。

都道府県別では、震災からの復興が続く宮城県が1,800haの増加となるも、これと横ばいだった福島県を除く全都道府県で耕地面積の減少が報告されている。

日本の耕地面積は1961年の608万6,000haをピークに52年連続で前年比マイナス状態が続いており、概ね半世紀で25%もの面積が喪失され、4分の3まで規模を縮小させている。

日本の総面積は3,779万haであり、現状では概ね国土の12%が耕作地として使用されている計算になる。1961年時点では16%であり、国土全体でみるとピーク時から4%程度が住宅地や荒廃地などに転換した状況にある。

現在の耕地面積の内訳をみると、「田」が246万5,000ha(54.3%)と耕作地全体の半分以上を占めており、いわゆる「普通畑」が116万1,000ha(25.6%)、牧草地が61万1,100ha(13.5%)、「樹園地」が29万9,500ha(6.6%)とそれに次ぐことになる。

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■東日本大震災からの復旧率、田は47%、畑は28%

農水省は耕地面積の増加・減少要因についても報告を行っているが、13年は「田」の増加が4,290haに対して、減少が8,140haとなっている。また、「畑」は3,880haが増加したのに対して、1万2,700haが減少している。

「田」に関しては、東日本大震災の発生した11年に自然災害要因で1万4,500ha、翌年も1,120haの喪失が報告されており、過去3年で累計1万5,760haが喪失されている。一方、災害からの復旧は11年が106ha、12年が3,670ha、13年が3,670haとなっており、3年累計で7,446haの増加に留まっている。もちろん、この全てが東日本大震災の影響という訳ではないが、概算で震災からの復旧率は未だ47%に留まっているのが現状である。

これは「畑」に関してはより厳しい状況にある。自然災害要因では過去3年に2,454haが喪失されている一方、復旧したのは690haに留まっており、復旧率だと僅か28%に留まっている。

通常の自然災害の場合だと、概ね当該年度、遅くても翌年には耕地面積が復旧するのが過去のパターンである。例えば、04年は台風23号や新潟中越地震等が発生したことで、05年の「田」は自然災害要因で2,560haが喪失されている。しかし、同年に206ha、18年に1,660ha、19年に568haとその後は急ピッチな復旧が進み、比較的短期間で震災の影響は解消されている。

しかし、耕地面積という観点では東日本大震災からの復旧はまだ半分にも至っていないことが、今回の統計から確認できる。まだ高いレベルの耕地復旧は続いており、その成果は間違いなく実っている。ただ、東日本大震災のダメージは余りに大きく、現在の復旧ペースだと「田」で更に2~3年、「畑」だと4~5年という長い時間が、完全復旧に必要とされる計算になる。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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