「本当に住みやすい街大賞」、前回2位の赤羽はなぜランキング圏外になったのか
12月9日、住宅ローン専門金融機関「ARUHI」が主催する「本当に住みやすい街大賞 2021」が発表された。
「本当に住みやすい街大賞2021」
1位:川口(JR京浜東北線)
2位:大泉学園(西武池袋線)
3位:辻堂(JR東海道本線)
4位:有明テニスの森(東京臨海新交通臨海線・ゆりかもめ)
5位:大井町(JR京浜東北線)
6位:たまプラーザ(東急田園都市線)
7位:小岩(JR総武本線)
8位:花小金井(西武新宿線)
9位:千葉ニュータウン中央(北総鉄道北総線)
10位:浦和美園(埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線)
第1位になったのは、埼玉県の川口。2020年に続き、2年連続の大賞獲得だ。
では、その前の大賞はどこだったかというと、2019年の「赤羽」だった。その赤羽は、前回2位だったが、今回は10位以内に入っていない。
なぜ、そのようなことが起きるのか。じつは、それこそが「本当に住みやすい街大賞」の特徴でもある。同賞の特徴を、審査委員長を務めさせていただいている私から説明したい。
実際に住みはじめた人が多い場所が候補
「本当に住みやすい街大賞 」は、今回が第4回。その特徴は、「住みたいけれど、現実的に住めない街」ではなく、実際に家を新築したり、マイホームを購入した人が多い場所で、長く住み続けたい要素を備える街を選ぶこと。憧れの住宅地を選ぶ人気投票ではないわけだ。
「家を新築したり、マイホームを購入した人が多い場所」を探すため、「ARUHI」の住宅ローン利用者データを利用。直近1年間で、フラット35の利用者が多い街を選ぶことから街のノミネートが始まる。マイホームを新築した人、購入した人が多い街を、まず候補地とするわけだ。
住宅ローン利用者の多い街が候補となるため、新築住宅の分譲が減った場所は、ランク上位からいきなり消えてしまうことがある。一方で、マンションや建売住宅が増えている場所は、一気にトップに躍り出ることもあり得る。
もちろん、住宅ローンの新規利用者数だけで順位を決めているわけではなく、現実的に手が届く価格帯の新築物件が多いことや、住環境、交通利便性、発展性などを審査して数値付けを行って、上位10の街が決定される。
なぜ、赤羽は圏外になってしまったのか
赤羽は近年、23区内の穴場として人気を高めた。その一方で、新築分譲住宅の価格が上がり、新築分譲住宅の数も減少。その結果、赤羽駅近くでマイホームを購入する人が少なくなり、住宅ローンの新規利用者数も減った。
それが、今回、赤羽が圏外になった理由である。決して、街の魅力が低下したわけではない。
赤羽は、第1回「本当に住みやすい街大賞」でも3位に入っており、その際、私は赤羽に「NEXT吉祥寺」のキャッチフレーズを付けた。その「NEXT吉祥寺」は、今、吉祥寺並みに憧れの住宅地になったのかもしれない。
これに対し、JR京浜東北線で赤羽駅から一駅先の川口駅周辺は住宅価格が抑えられ、マンションや一戸建て住宅を購入しやすい。23区内である北区から荒川を越えただけなのに、川口市内の新築マンション価格は1000万円以上安くなる。
その結果、新規分譲戸数も多く、2年連続の大賞となった。
トロフィー授与がお祭り騒ぎ?
もうひとつ、「本当に住みやすい街大賞」には、大きな特徴がある。
それは、上位3位の街にトロフィーを授与していること。そのトロフィーは、市や区の代表者を招待して渡される。
大賞の川口市からは奥ノ木信夫市長が出席してトロフィーを受け取った。3位の辻堂に関しては、藤沢市の鈴木恒夫市長のビデオメッセージが流された。
そして、2位大泉学園の練馬区からは、同区広報課の岡野勇太氏が、練馬区の特産品である大根とキャベツを掲げて登場。受賞を喜ぶ雄叫びを上げた。
じつは、過去3位までに入った街の多くは受賞を喜び、街に横断幕を掲げたり、商店街の各店舗にシールを貼ったりしている。
それも、「本当に住みやすい街大賞」ならではの現象と考えられるのである。