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「最後の相撲は6歳の息子と取りたい」元横綱・鶴竜親方が6月3日、ついに大銀杏に別れを告げる

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
6月3日の断髪式について鶴竜親方に語っていただいた(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

6月3日(土)に断髪式を控える、大相撲の元横綱・鶴竜親方のインタビュー。現役時代の思い出を振り返っていただくとともに、あらためて断髪式の内容などについて伺った。

相撲を見ることも勉強だった

――現役時代を振り返って、若い衆の頃はどんな毎日でしたか。

「当時、場所中はとにかく相撲を見ろと言われていましたから、掃除や洗濯が終わって自分の仕事がないときには、ご飯ができるまでずっと相撲を見ていました。兄弟子の相撲はビデオを撮らなきゃいけないんですが、いまみたいにスマホでパッと見られたり簡単に巻き戻せたりするわけじゃないから、BSで11時から相撲を見ていました。大変なときもありましたけど、人の相撲を見て覚えることは大事だったと思います。いまの子はあんまり見ないんだけどね」

――毎日大変でも、実りが多かったわけですね。

「そういう意味で、自分が上位に上がっていって、若いときにテレビで見ていた人と対戦すると、自分もついにここまで来たかとうれしい気持ちがありましたね。ただ、そういう気持ちでいるってことは、相撲に集中できていないってことなんだけどね(苦笑)」

――なるほど。感慨深い気持ちになってしまうのはわかる気がしますけれど…。

「そう。でも相手はもう絶対負けられないって感じでくるんだからさ。そりゃぁ感慨深いなんて思っていたら勝てないです。ただ、自分も力士になってここまで来たのかって思ってしまうところは、みんなあるんじゃないかと」

相撲を取るのも見るのも稽古だったという(写真:日刊スポーツ/アフロ)
相撲を取るのも見るのも稽古だったという(写真:日刊スポーツ/アフロ)

ゲームにボウリング 楽しかった土俵外の思い出

――相撲のこと以外で、例えばほかの力士の皆さんとの思い出などはいかがですか。

「たくさんありますよ。みんなでご飯を食べに行ったり、巡業中にホテルで集まって楽しく話したり」

――親方はゲームがお上手といろんな力士から伺うんですが。

「若い頃は特に、先代からほかの部屋の力士と遊ぶなと言われていましたので、じゃあどうやって息抜きするか考えたときに、自然とゲームのような部屋の中でできるものをやるようになりました」

――先代からは同じ国の人と遊ぶなとも言われ、それを守ったおかげで日本語を早く覚えて強くなったとおっしゃっていましたよね。ずっと部屋の皆さんと一緒に過ごしていたんですか。

「そうです。関取に上がるまでは部屋の子たちとしか遊べなかったけど、みんなでカラオケやビリヤード、ボウリングにも行って楽しかったです。カラオケで日本語を覚えたし、ボウリングは当時1時間1,000円で投げ放題だったので、兄弟子と2人で行って20ゲームくらいやっていました(笑)。次の日、指いてぇーとか言いながらね」

――いいですね。親方は器用なのでボウリングもお上手そうです。

「兄弟子たちも床山さんもマイボールを持っていて、みんなめちゃくちゃ上手だったんです。みんなで集まってどこかの大会に出たら優勝しちゃったりとか。懐かしいね。思い出はたくさんあります」

断髪式は「皆さんのおかげで成り立つありがたいもの」

――いよいよ6月3日(土)に断髪式が開催されます。準備も大変だと思いますが順調ですか。

「そうですね。断髪式の後にはパーティーもありますから、1日に2回イベントをやるような感覚で大変です。いままでは本当に相撲だけやっていたので、引退したら急に営業マンになったりクリエイターになったり、いろんな役割に挑戦しているなあと思います。これからはそういうこともしていかなきゃいけないので、すごくいい勉強になっています。人に一つお願いするというだけでも、こんなにも大変なことなのかというのもあらためて感じましたしね。楽しさがありつつ、難しさや厳しさもあって、いろんな感情があります」

――断髪式はどんな内容になりそうですか。

「内容自体はそんなに変わったものではなく、通常の花相撲のように相撲甚句や(相撲の禁じ手を面白おかしく実演する)初っ切り(しょっきり)、十両・幕内の取組などを予定しています。あとは、最後の相撲を息子と取ろうかなと思っています。今年で6歳なので、そろそろまわしを買ってあげて練習させておかないといけないですね」

――1月末には白鵬関(宮城野親方)の引退相撲もありました。ほかの親方衆の断髪式を見て参考にされた部分はありますか。

「はい、やっぱり自分のときにはどうしようかと思いながら見てきましたので、勉強になりました。ただ、いろんなことを決めるのは自分なんだけど、人に任せられる部分はお任せしていかないと、体がいくつあっても足りません(笑)。断髪式は、本当に皆さんのおかげで成り立つものであって、ありがたいですよね」

――最後にベタな質問ですが、大銀杏に別れを告げた後の髪型はもう決めていますか。

「最近よく聞かれるんですよ。でもわかんない。どんな髪型がいいか、着せ替えみたいなアプリで試してみているんですけど、全然イメージが湧かないんです。でも、みんなとそんなに変わらないんじゃないかなと思うけどね。スポーツ刈りっていうか、まずは短めにしてもらって、その後からちょっと伸ばす感じですかね」

【鶴竜親方断髪式の詳細はこちら

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、編集部が一定の基準に基づく審査の上、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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