ユニセフの携帯電話調査「U-Report」:アフリカの若者7割「紛争解決への努力足りない」
ユニセフ(国際連合児童基金)は「U-Report」という携帯電話のテキストメッセージ(SMS)を基盤としたシステムを2010年に開発した。これはアフリカや中南米、アジアなど若者がそれぞれの地域でどのような問題に直面し、あるいは様々な課題についてどのように考えているか発言する機会を与えるために開発された。
携帯電話で世界に声を発信「U-Report」
現在、アフリカの15カ国を含む世界23カ国で利用されており、全世界で210万人以上の若者が登録されており、ユーザーは調査への回答や、問題の報告、そして自国の人々を代表して、よき変化の担い手になることもできる。「U-Report」に参加する若者は携帯電話に送付されてくるダイレクト・メッセージを通じて回答や報告を行い、リアルタイムで集められたそれらのデータは、ウェブサイト上でマッピングされて、世界中からアクセスしてみることができる。また調査結果や意見は、若者たちのコミュニティにも共有されている。
アフリカでも中古のフィーチャーフォンから最新のスマホまで携帯電話は普及しており、多くの若者が所有している。テキストメッセージ(SMS)はどのようなスマホでなくとも、どのような携帯電話でも利用できるので、誰もが簡単にユニセフの質問に回答して、世界中に自らの考えを発信することができる。またSMSだけでなくTwitterからの参加も可能。Twitterは全世界で約3億人が利用しており、新興国の多くでも利用されている。
アフリカの若者の7割「紛争解決への努力足りない」
「U-Report」を利用してユニセフでは2016年6月1日から18日の間、ナイジェリア、ブルキナファソ、マリ、中央アフリカ共和国、セネガル、リベリア、ジンバブエ、カメルーン、ギニアの9か国140万人を対象に携帯電話を通じて行った調査によると、調査に回答した若者約86,000人のうち70%が「アフリカのリーダーたちは、 アフリカで起きている紛争を止めるのに十分な取り組みをしていない」と答えたことが明らかになった。
15歳から30歳までの若者は携帯電話を通じてアフリカにおける紛争や危機に関する質問に対し、自らの意見に近いものを複数の選択肢から選び回答した。
アフリカで起きている人道危機は、近年、国境を越えて広がっており、安全を求めて移動する子どもたちや家族は増加している。中央アフリカ共和国では、周辺国にも広がっている複雑な人道危機により、120万人が安全面の問題に直面している。カメルーン、チャド、ニジェール、ナイジェリアでは130万人近い子どもたちが、ボコ・ハラムに関連する暴力によって避難を余儀なくされている。2年以上紛争状態にある南スーダンでは240万人近くが自宅を離れて避難し、そのうち72万1,000人が難民として暮らしている。危機下にあるブルンジでは、およそ26万5,000人が国境を越えて避難している。
ユニセフ中部・西部アフリカ地域事務所代表のマニュエル・フォンテーン氏は以下のように述べている 「毎年、アフリカの数百万人もの子どもたちとその家族の生活は、紛争により混乱し、破壊されています。この調査は子どもが自らの意見を表明する権利に応えるとともに、アフリカの若者たちが自分たちの大陸の未来への希望を表明する機会を提供します」
下記を含む調査結果は、6月16日の「アフリカ子どもの日」に、アフリカのリーダーたちに報告される。このようにアフリカの若者の声はユニセフが開発した「U-Report」を活用し、リーダーらに届けることができる。リーダーらも若者の声を無視することはできない。新興国の多くの若者が携帯電話を通じて意見を発信することによって社会変革に参加することができる。
■「アフリカのリーダーたちは、アフリカで起きている紛争や危機を止めるのに十分な取り組みをしているか」に対し、70%が「していない」と回答。
■「アフリカは他の地域に比べ、より紛争が起こりやすいのはなぜか」という問いに対し、主な理由として、56%が「権力争いをする政治家たち」、19%が「不平等(格差)」、17%が「貧困」、4%が「食糧と水へのアクセス」と回答。
■「紛争を止めるために、リーダーたちは何ができるか」の問いに対し、24%が「強い経済」、20%が「より自立した外交政策」、19%が「質の高い教育」、14%が「互いの対話」、10%が「他国との対話」、9%が「安全保障」と回答。
ベッカムも「U-Report」での意見の発信を呼びかけている。