ホンダ「CB1100EX」 香り立つ伝統のCBらしさ より味わい深く、新鮮さも感じるモデル
新型CB1100シリーズは、歴史ある伝統のブランドを継承
ホンダにおける「CB」の名は、約60年の歴史に裏打ちされた永遠の定番ブランドである。CB72に始まり、初代CB750FOURからCB1300SFに至るまで、その時代を象徴する名車を生み出してきた。
その中でCB1100は伝統を継承するモデルとして2010年に登場。2014年にはスポークホイールを装備した、よりトラディショナルなCB1100EXが追加されて現在に至っている。
そして今回のモデルチェンジでは、従来からのベーシックモデルである「CB1100」と「CB1100EX」の熟成・深化に加え、新たにより軽快でスポーティな走りを実現した「CB1100RS」を追加している点に注目が集まる。
CB1100シリーズは軽量マフラーとアシストスリッパ―クラッチを装備
まずシリーズ全体に共通する変更点としては、マフラーが新設計の軽量コンパクトな左右2本出しタイプとなったこと。クラッチ操作やシフトダウンを楽にするアシストスリッパ―クラッチやABSが標準装備され、サイドスタンドの傾斜角も見直された。
EXとRSはハイグレードな装備をまとった上級バージョン
EXとRSについては、溶接跡のないフランジレスフューエルタンクやアルミプレス製サイドカバー、アルミ鍛造ペダル、LEDヘッドランプ&テールランプなどの高品質なパーツを採用。
上質な乗り心地に寄与するショーワ製SDBVフロントフォークを採用し、ETC車載器やグリップヒーターが標準装備となっている。
ネオクラシカルなCB1100EXは18インチスポークホイールを改良
EXだけの装備としては、一番の特徴である新設計の前後18インチのスポークホイールが挙げられる。従来はメッキタイプの48本スポークだったが、今回新たにアルミ製リムとステンレス製40本タイプとなり、車重もトータルで5kgの軽量化が進められた。
また、アップハンドルを採用したType1と、ローハンドルを採用したType2が設定されている。
【CB1100EX 試乗レポート】スタイリッシュな新しさを感じるデザイン
スポークホイールを採用した、CB1100EXのインプレッションをお伝えしたい。
試乗したのはハンドルが高いType1。上体が起きた楽なポジションで目線が高いため見晴らしが良い。ディメンション的にもフロントがやや高い感じでリラックスして乗れる。
それにしても、燃料タンクの造形で大きく印象は変わるものだ。従来の角張ったタンクからやや扁平で丸みを帯びた形状となり、透明感のあるクリア塗装がとても新鮮に映る。スタイリッシュな新しさを感じるデザインだ。
また、開発者が特にこだわったというスポークホイールの並びの美しさは特筆すべきである。
力強さを増した加速感とサウンド
乗り味はというと、エンジン・車体とも従来モデルをほぼ踏襲していることから、正直なところ新旧で大きな乗り味の差は見られないと言っていい。
ただ、エアクリーナーや吸気ダクト形状、マフラー構造を含めた吸排気系の見直しにより、たしかに極低速での粘りや中速域でのトルクに厚みが増し、加速により力強さが出てきた感がある。
また、排気音のチューニング効果もあると思うが、ピーク回転に向けての高揚感もよりドラマチックに演出されている。足回りもショーワのSDBVフォークが採用されたことで、ストローク感が増して乗り心地にもしっとり感が出てきた。
18インチならではのまったり感がいい
ベーシックモデルと比べても良い意味でまったり感のあるバンドリングと思う。大きなホイールが回っている感じが明確で、18インチであることをより意識しやすい。
開発者の話では、スポーク本数と配列の工夫によって説妙な“たわみ感”を出しているという。そこが柔らかな乗り味にもひと役買っているようだ。一方でタイヤが細いこともあって、倒し込みの軽快感は意外にもCB1100RSより上だ。
コーナーでは特に意識せずともさっと倒し込めて、やや遅れてフロントが切れ込んでくる昔懐かしいハンドリングだ。あとはバイクに身を任せておけば素直に曲がっていってくれる。当日は路面温度も相当低かったが、タイヤが細い分、接地面圧は高くなるためか接地感は分かりやすかった。
ブレーキは効きが穏やかで最初はやや物足りない感じもあったが、慣れてくるとその鷹揚さが扱いやすいと思えてくる。コーナーに無理して突っ込むタイプではないのだ。それでもいざとなればABSがきっちり作動してくれるので、特に冬場は安心感が高い。
伝統の空冷直4エンジンのサウンドに癒されつつ、バイクとの対話をじっくりと味わいたい。そんな人におすすめしたい「CB1100EX」である。